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- 女優・黒木瞳!老化は怖がってもいい…自然体の魅力
女優・黒木瞳さんが監督を務めた最新作『十二単衣を着た悪魔』。女優業と監督業では変わるという私生活のことやポジティブに挑戦し続ける原動力、ストレス解消法などについてお話を伺いました。
監督業は24時間休みなし!ずーっと作品のことばかり考えています
―映画「十二単衣を着た悪魔」では監督として作品に関わっていますが、女優業と監督業では、仕事の内容がまったく違いますよね。プライベートの時間の使い方も変化があると思いますが、どのように変わりましたか?
黒木瞳さん(以下、黒木瞳)
まず女優のお仕事では、撮影現場で私はまったく別な人物になりきりますが、やはり人間の集中力には限界があるので、その日の撮影が終わったら、必ずスイッチを切り替えます。
役を引きずらず、家ではまったく役のことは考えません。撮影現場に向けて、役へのボルテージを最高に引き上げていくという感じです。
でも監督のときは、公私を切り替えず、昼夜問わず、演出のことを考えています。なぜなら、そうしないと間に合わないからです。「このシーンは〇より△の方がいいかな」とか「もっといい方法ないかしら」と、ずーっと四六時中演出のことばかり考えていて、思いついたら忘れないうちに助監督に連絡をしていましたね。
とにかく起きている間は作品のことしか考えられなくなるんです。台本と一緒に寝ているといってもいいくらいかもしれません(笑)。
黒木瞳は実はゲーマー⁉ ゲームでストレス解消
―すごいですね。それほど私生活が変わってしまうと、習慣にしていることができなくなったり、私生活の支障をきたすようなことはありませんか?
黒木瞳
映画監督している期間、私生活での大きな変化は、ゲームができないことですかね(笑)。実は、私はゲーマーなので、仕事で煮詰まるとゲームでリフレッシュしていたのですが、監督のお仕事をしている間はまったくゲームをしていません。
監督業は24時間、考えれば考えるほど、面白いことを思いついたりするので止まらないんです。とてもしんどいし、煮詰まったときにストレス発散することはできないけれど、それが実は嫌いじゃないみたい。監督の仕事が性に合っているようですね。
若作りはしません!だって年齢と向き合うことは素敵なことだから
―監督のお仕事というと、見た目を気にせず、なりふり構わず仕事に没頭というイメージがありますが、黒木監督のそんな姿は想像できません。今もとてもおきれいですが、美容面など、どうされていたのでしょうか?
黒木瞳
実は私は、あまりお肌の手入れなどはしないシンプル主義なんです。先日、約1年ぶりにエステでフェイシャルを受けたくらい(笑)。何もしていないと言うと、みなさんに「女優さんなんだから謙遜でしょう」と言われるのですが……本当なんです。なぜなら、私は若い人に負けないように若さと美を保ちたいと思っていないから。
老いは誰でも必ずやってくるし、同じ場所にずっと留まってはいられません。だって時代は常に動いていますから。
映画「十二単衣を着た悪魔」に登場する弘徽殿女御(こきでんのにょうご)の考えと一緒なのですが、「若い人に負けてもいい」という自然体な気持ちです。
―若い人と競い合っても、年齢は偽れないし、無理している感じがしてしまうこと、ありますよね。
黒木瞳
ある程度の大人の年齢になっているのに、若い人と競い合って、すごく若作りしても、周囲の目はごまかせません。自分の立場を受け入れて、自分の年齢と向き合うことはとても素敵なことだと思います。
「十二単衣を着た悪魔」の原作者・内館牧子さんは弘徽殿女御を通して、そういう気持ちも伝えたかったのかなと思います。
―なるほど。弘徽殿女御は自分に嘘はつきませんし、よく見せようと取り繕うこともしませんよね。でも実際のところ、老化への恐怖はありませんか?
黒木瞳
それは誰でもみんな怖いのではないでしょうか。年を取るのが楽しいばかりと思っている人はいないと思います。私だって怖いですよ。
若い頃の自分が想像できない年齢になっているのですから、「病気になったらどうしよう」とか「年を取るにしたがって体が弱っていくのかな」とか、考えることはあります。みなさんだってあるでしょう?
でも怖がったっていいし、そこで立ち止まってもいいじゃないですか? 老化を怖がることは、決してネガティブなことじゃないし、みんな思っていること。そう思えば、楽になるのではないでしょうか。
お客様に喜んでいただくことこそが、私のパワーの源
―ハルメク読者は50代以上の方が多いのですが、そのくらいの年齢になると、新しいことに挑戦するのが億劫になり、勇気とパワーが必要になります。でも黒木さんはすごく軽やかに挑戦していらっしゃいますよね。そのパワーの源、原動力はどこから来ているのでしょうか?
黒木瞳
私はずっとエンターテインメントの世界でお仕事をしているので、お客様に喜んでいただくことが原動力になっています。それは宝塚歌劇の初舞台のときからずっと揺らぎません。
女優としては、さまざまなタイプの役を演じてきましたが、どんなに風変りな役でも、監督やスタッフがそれを求めるのならば「乗ります!」という気持ちで臨んでいます。
でも監督としては、希望のあるものを作っていきたいですね。お客様が私が監督した作品を見て、笑顔になってくれたり、面白いと思ってくださることが一番うれしいし、それが私のエネルギーの源。お客様が私に力を与えてくれているんだと思います。
■作品情報
「十二単衣を着た悪魔」(2020年11月6日公開)
監督:黒木瞳
出演:伊藤健太郎、三吉彩花、伊藤沙莉、戸田菜穂、ラサール石井、伊勢谷友介、山村紅葉、笹野高史
■黒木瞳プロフィール
くろきひとみ 福岡県出身。1981年宝塚歌劇団入団。入団2年目で月組の娘役のトップ女優に。85年に退団。その後は、多数の映画、ドラマ、舞台に出演している。「化身」(86年)で第10回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。「失楽園」(97年)で第21回日本アカデミー賞最優秀主演女優賞ほか数々の映画賞を受賞した。他ヒット作に多数出演。エッセイや絵本の翻訳も手掛けており、『母の言い訳』は日本文芸大賞エッセイ賞を受賞。2016年「嫌な女」で監督デビュー。「十二単衣を着た悪魔」は、長編監督2作目である。
取材・文=斎藤香 写真=泉三郎 編集=鳥居史(ハルメクWEB)
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