大沢たかおさん

2020年02月03日

演じる心を奮い立たせた主演映画『AI崩壊』

大沢たかお!俳優人生を見直す2年の休業と復帰の裏側

人気俳優として多くの作品で活躍している大沢たかおさん。2016年から2年間、俳優業をお休みしていた大沢さんに最新の主演映画『AI崩壊』のお話とともに、復帰の理由、俳優業への思い、将来について語っていただきました。

2年間の休業中には「俳優をやめてもいい」とさえ思ったことも……

2016年から2年の休業をした、大沢たかおさん
2016年から2年間の休業を経て、本作で主演復帰した大沢たかおさん

大沢たかおさんの映画最新作『AI崩壊』は、2030年の近未来を舞台に、大沢さん演じる天才科学者の桐生が発明したAI(人工知能)が、暴走して生きる価値のない人間を選別して殺戮を開始する様を描いたサスペンス超大作です。

夫婦愛、親子愛をべースにしながらも、追われる身になった桐生のアクションに手に汗握る作品に仕上がっています。

2019年の『キングダム』そして本作『AI崩壊』と、俳優業を休んでいたとは思えないほど、アグレッシブに活躍している大沢さんに、映画のこと、休業のこと、復帰の心境について伺いました。
 

――大沢さんは2016年から2年間、俳優業をお休みされていましたよね。「仕事を依頼されても、いいパフォーマンスができる気がしなかった」とのことですが、そのような気持ちから俳優業に前向きになったのはなぜでしょうか。

大沢たかお
そうですね、休むことを決めたときは、20年間俳優をやってきて、いいパフォーマンスができる気がしないのに、無理に演じるのが嫌だったからです。だから思い切って休むことに決めました。

海外で生活しながら、一時は「このまま俳優をやめてもいいな」と思ったくらいなのですが、ロンドンで舞台の仕事をしたあと、本作『AI崩壊』や『キングダム』のような刺激的な作品への出演依頼をいただいて、それらが僕の気持ちを奮い立たせてくれました。

「日本映画でもここまでやるんだ」とチャレンジする心意気を感じたし、その挑戦に自分も乗ってみようと。

こうなったら「メーターを振り切るまで演じきってやる」と思える作品だけをやって、俳優人生を終わりにしてもいいと思ったのです。

大沢たかおさんは、年齢にしばられる生き方はしないという
年齢にしばられる生き方はしたくないという、大沢たかおさん

――「メーターを振り切った作品をやる」とのことですが、年齢的にベテランと呼ばれるようになり、作品の選び方の変化などありますか?

大沢たかお
年齢を重ねても、出演作を決めるスタンスは変わらないですね。おそらく10年後も僕は変わらないと思う。僕は何年後にはこうあっていたいとか、そういう青写真は描かないタイプなんですよ。

よく日本人は「年相応」とか「大人らしく」と、周囲の目を気にして自分にブレーキをかけがちじゃないですか。でも、僕は何歳になっても、自分らしくいられればいいと思っています。

CGもスタントマンもなしで過激アクションに挑戦!

――なるほど。『キングダム』もすごいアクション大作でしたが『AI崩壊』でも体を張ってアクションに挑戦し、全力投球しているのは、そういった気持ちもあるのですね。

大沢たかお
確かに全力で演じましたが、最初は、SFアクション大作だから、CGを使ってくれるんだろうなと思っていたんですよ。そしたら、アクションはすべて自分でやってくださいと言われました。

撮影期間中、とにかくよく走りましたね。「最後まで体がもつかな」と不安になりながら演じました(笑)。

スタントマンやCGなしで、アクションもこなした
スタントマンやCGなしで、アクションもこなした大沢たかおさん

――追われる身で真相究明に動くという難しい役どころながら、スケールの大きなアクションの連続にハラハラしました。撮影も大がかりでしたね。

大沢たかお
貨物船を撮影のために貸し切ったり、一般道路を封鎖して渋滞を起こしたり、本当にスケールの大きな作品になりました。でも、こういうアクション大作を日本映画でやると、どうしてもハリウッドのまね事みたいに見られるので、そこは気を付けました。

日本の娯楽大作としてアピールできる映画にしようと、オリジナリティを重視して、スタッフ一丸になって取り組みました。

AI崩壊場面写真
迫力あるカーアクションシーンなども見どころのひとつ

撮影シーンやキャラクターにも、大沢たかお流のアイデアが生かされている!

大沢たかおさん

――今回、大沢さんが演じる天才科学者の桐生は、すごく愛情深い人です。理系の男性はもっと合理的に物事を考える印象があったのでキャラクターは意外性がありました。

大沢たかお
最初は理系の男を意識して役作りをしていたのですが、どうしてもしっくりこなかったんです。ステレオタイプのわかりやすい主人公になってしまって。ヒーロー的な主人公は、見ていて安心感はありますが、ありきたりでつまらないでしょう。

まあ、トム・クルーズさんが演じるのならいいけど、僕はトム・クルーズさんではないので(笑)、そんなパーフェクトな不死身の男が主人公の映画は、日本では成立しないのではないかと思いました。
 

――なるほど。それで桐生の性格に変化を加えたんですね。

大沢たかお
そうです。日本映画は人情を描くのはうまいし、キャラクターの繊細な人間性を表現する術に長けています。だから、こういう娯楽大作の中で、愛情深くて、スーパーマンじゃない主人公が、パニックに巻き込まれた方がおもしろい、ワクワクするだろうと考えたのです。それで、天才科学者だけれど、家族思いで理系に見えないキャラクターを桐生で表現していこうと思いました。

幸い、入江悠監督は「アイデアをどんどん出してください」というタイプの監督だったので、クランクイン前に桐生についていろんなアイデアを出し合えたのはよかったです。僕は役について監督と話し合ったりすることをあまりしない方なのですが、今回は珍しく話し合って進めていきました。

妻を演じる松嶋菜々子さんにプレッシャ―をかけ続けた!?

AI崩壊

――妻の望を演じた松嶋菜々子さんとの共演はいかがでしたでしょうか?

大沢たかお
松嶋さんとは、ドラマ「劇的紀行 深夜特急」(1996-98年/テレビ朝日)のシリーズ、映画「藁の楯 わらのたて」(2013)など、何度も共演していて、もう20年来の役者仲間なんですよ。この映画では控室も一緒だったので「二人のシーンは夫婦の関係を表現する、すごく重要なシーンだからね」と、何度も何度も言って、すごくプレッシャーをかけました(笑)。松嶋さんも「わかっています!」と言ってましたね。

夫婦の何十年もの関わりを伝えるわけですから、説得力が重要。だから僕は彼女に「めちゃくちゃ大切なシーンだよ」と言いながら、自分にもプレッシャーをかけていたわけです。そうやって一つ一つのシーンに取り組んでいきました。
 

――病気の妻を助けたい一心で、医療AIを開発したけれど、桐生の願いはかなえられない。そこがすごく切なくて、だからこそ、夫婦のシーンは心にしみました。また桐生の義理の弟を演じる賀来賢人(かくけんと)さんとのバディぶりもよかったです。

大沢たかお
賀来くんとは、撮影合間に「芸能人はどんなマンションに住んでいるのか」という話題で盛り上がったりして、楽しかったです(笑)。

桐生が、唯一信頼できる相手だったので、しっかりコミュニケーションを取っていこうと思って、撮影合間にたくさん雑談しながら、信頼関係へとつなげていけました。賀来くんから学ぶことは多かったですね。

また、娘の心を演じた田牧そらちゃんも、いい女優さんでした。僕がテイクのたびにセリフを変えたりするので、びっくりしていましたが(笑)、ちゃんと演じきってくれましたから。

AI崩壊
義理の弟を演じる賀来賢人さんとのバディぶりも好評

――日本映画の娯楽大作としていい作品にしたいというこだわりがありつつ、現場での役者のみなさんのチームワークのよさも感じます。

大沢たかお
いい意味で試行錯誤を重ねて出来上がった映画です。原作がある作品だと、作家が何年もかけて練り上げているので、完璧で隙がない物語がベースにあります。だから脚色という形で映画化できるのですが、「AI崩壊」はオリジナル作品。

入江監督は演出を考えながら脚本を書くので、何年もかけて練り上げた物語というわけにはいかない。だからこそ、キャストやスタッフ、みんなで一丸になって作り上げていくことが必要だったんです。とてもうまくいきましたし、自信をもってみなさんに観ていただける作品になったと思います。

大沢たかお(おおさわ・たかお)プロフィール

東京都出身。モデル活動を経て1994年から俳優に転向。主な出演作に『花』(03)『解夏』(04)『世界の中心で、愛をさけぶ』(04)『ミッドナイトイーグル』(07)『藁の楯 わらのたて』(13)『風に立つライオン』(15)『キングダム』(19)、ドラマ『JIN -仁-』(09/TBS)など多数。『解夏』で日本アカデミー賞最優秀主演男優賞受賞。
 

『AI崩壊』
2020年1月31日(金)全国公開

AI崩壊ポスター


監督・脚本:入江悠(『22年目の告白―私が殺人犯ですー』)
出演:大沢たかお 賀来賢人 岩田剛典 広瀬アリス 髙嶋政宏 芦名星 玉城ティナ 余 貴美子 松嶋菜々子 三浦友和
(c)2019映画「AI崩壊」製作委員会

取材・文=斎藤香 写真=窪徳健作 編集=鳥居史(ハルメクWEB)


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HALMEK up編集部
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