インタビュー第一人者とも言われるキャリアの原点は?

【下】阿川佐和子!実は主婦希望だった過去と仕事観

公開日:2023.02.11

更新日:2023.02.19

映画「エゴイスト」に主人公の母親役を演じている阿川佐和子さん。俳優だけでなく作家、エッセイストとして活躍するキャリアの原点や、将来展望を伺いました。

実は専業主婦志望!ひょんなことからテレビの世界へ

――阿川さんは作家、キャスター、インタビュアー、そして俳優など、さまざまな分野で活動していますが、キャリアの築き方について教えてください。

阿川佐和子さん(以下、阿川佐和子)
私はもともと専業主婦志望だったんです。私の学生時代は、女性が仕事で活躍するという場が少なく、母も専業主婦だったので、私も早く相手を見つけて結婚して、主婦になるんだと思っていました。

我が家には専制君主のような父(編集部注:作家の阿川弘之氏)がいて、いつもイライラしていたから、早くこの家を出たいと思っていましたね。

優しい旦那さんのもと、家事はすべてやるけど、経済的にはおんぶに抱っこで(笑)。織物を勉強していたので、内職できれば幸せだわ〜と思っていたんです。だから就職試験も受けなかったし、そもそもどんな会社があるかも知らなかったくらいです。

――テレビに出演するようになったのは20代後半からですか?

阿川佐和子
そうですね。お見合いをたくさんしましたが、全然ご縁がなくて。友達はどんどん結婚していくので、私にもそのうち……と思っていたけど、全然ない(笑)。そんな20代後半になった頃、テレビ局から「試しに出てみませんか」と声がかかったんです。

その後「情報デスクToday」(TBS)にレギュラー出演することになり、これが6年続きました。でも何の役にも立っていなくて怒られることも多かったですよ。

実は、その頃もまだ専業主婦の夢は捨てていませんでした。だから怒られると「この仕事は本業じゃないもん、いつかは専業主婦になるんだもん」と思っていました(笑)。

NOと言えない性格が幸いした! 

――専業主婦にこだわりつつ、テレビ出演が続きますが、やり続けたのは好奇心ですか?

阿川佐和子
私、断るのが苦手なタイプで、振り返ってみると、私のキャリアは「〇〇してみませんか?」と誘われることから始まっているんです。

文章を書く仕事も父親が作家だから「あなたも書いてみませんか?」と言われたことがきっかけです。でもテレビに出ることも文章を書く仕事も、どこか好奇心が働いて「ちょっとやってみたい、その世界を覗いてみたい」という気持ちはありました。

週刊文春の「阿川佐和子のこの人に会いたい」の連載も、声をかけられたとき、当時の編集長がカッコ良かったから「NO」とは言えなかったんです(笑)。

でもインタビューは得意ではなかったので、とにかく取材対象について調べて準備万全にして、周囲の人に支えてもらいながらやっています。引き受けた仕事は一生懸命にしっかり取り組む。そういう生真面目さはあるかな。

歌手・布施明さんの言葉で気付いたこと

――そうなのですね。でもテレビの仕事、作家、そして俳優業もちゃんと評価されているのがすごいと思います。今後もこのペースでやっていこうと考えていらっしゃいますか? それとも別なことも?

阿川佐和子
インタビューの仕事で、歌手の布施明さんにお話を伺ったとき、布施さんは若い頃、芸能界は人気商売だから、売れている間はいいけど、いずれ人気は無くなっていく。だからある程度やったら、辞めて別な職に就こうと思っていたそうです。でも仕事がバンバン入ってきて辞められない。どのタイミングだったら事務所は「辞めてもいい」と言ってくれるか考えたそうです。

そしたら新曲が来て、その曲が売れなかったら「売れないから辞めます!」と言えると。実際にその新曲「売れそうにないからチャンスだ!」と布施さんは思ったらしいのですが、実はそれが「シクラメンのかほり」だったそうなんです。

――布施明さんの大ヒット曲じゃないですか!

阿川佐和子
それで布施さんは芸能界を辞められなくなったと言っていました。でもそのとき、布施さんはこうおっしゃったんです。「人はちゃんと見ているんですよ。自分じゃわからないけれど“これをやってみたらどうだ?”と言われるということは、その人に向いていることが、他の人には見えているのではないですか」って。

私もそうだなと思ったんです。自分に能力があると言っているのではないですよ。でも「あなたはこれをやったら、何かできるんじゃない?」という誘いの声に導かれて今に至っているので。

今でもインタビュアーになりたいとか思っていませんが「やってみてください」と言ってくれる人がいるのがうれしくてやっているし、やるからには面白くしないと悔しいなという気持ちもあります。

私のキャリアはそういう感じで続いているので、今後のことは自分でもよくわからないですね(笑)。

  1. 【上】阿川佐和子!男性2人の純愛映画で感じたエゴ
  2. 【中】阿川佐和子!性的マイノリティについて思うこと

阿川佐和子(あがわ・さわこ)

東京都出身。作家・エッセイスト。TBS「情報デスク Today」「筑紫哲也のNEWS3」「報道特集」でキャスターを務める。エッセイ、小説など作家としても人気があり、エッセイ『ああ言えばこう食う』(檀ふみと共著)で第15回講談社エッセイ賞を受賞。他『ウメ子』で第15回坪田譲治文学賞、『婚約のあとで』で第15回島清恋愛文学賞など数々の文学賞を受賞。『聞く力―心をひらく35のヒント』は2012年のベストセラーになった。現在はテレビ朝日「ビートたけしのTVタックル」に出演中。

「エゴイスト」

(2023年2月10日より全国ロードショー)
監督:松永大司
原作:高山真「エゴイスト」(小学館文庫)
出演:鈴木亮平、宮沢氷魚、阿川佐和子、中村優子、和田庵、ドリアン・ロロブリジーダ、柄本明

取材・文=斎藤香 写真=岡田直記 編集=鳥居史(ハルメクWEB)

■もっと知りたい■

  1. YOUに聞く!人生後半を楽しむには?
  2. 黒木瞳!老化は怖がってもいい!
  3. 中山美穂のキレイの秘密は
  4. 松嶋菜々子!女優と母親業を両立する秘訣
  5. 安田成美!外見ではなく内面を育てた
  6. 高畑淳子!大人こそ恋愛や人生を楽しめ
  7. 戸田恵子!アンパンマンから吹替までの誇り
  8. 大沢たかお!俳優人生を見直す2年の休業
  9. 板谷由夏!焦りを経て気づいた自分
  10. 熊谷真実!18歳年下夫との幸せライフ
  11. 元・宝塚トップ真飛聖!遅咲きの女性
  12. 松雪泰子!運動とグルテンフリー
  13. 永作博美!ストレス解消術は〇〇?
  14. 室井滋!大人になって知った故郷愛
  15. 夏木マリの暮らし!格好良いの源
  16. 富司純子!女優業のこだわりと暮らし
  17. 国生さゆり!乃木坂46遠藤さくらの母に
  18. ミニスカ伝説!ツイッギーは今何してる?
  19. 松下由樹!葬儀社の役で気付いた終活
  20. 寺島しのぶ!息子の歌舞伎界デビュー
  21. 風吹ジュン!人生は飽きてもいい
  22. 鈴木保奈美!史上一番のダメ女を演じ
  23. 高岡早紀!魔性の女の素顔は?
  24. 高島礼子!看護師&娼婦を演じ
  25. 沢口靖子!実は体育会系で〇〇
  26. 坂井真紀!50代からポジティブな諦め
  27. 岩田剛典!ソロ活動を望んだ想い
  28. 永瀬正敏!後悔と愛すべき存在
  29. 平野レミ、最愛の夫との死別…
  30. 篠原涼子!年下男性との「禁断愛」
  31. 中井貴一!大人世代が目指すべき生き様
  32. 市原隼人!反発の10代と愛すること
  33. 松山ケンイチ!東京と田舎の二拠点生活
  34. 長谷川博己!人生の終わりを考える
  35. 磯村勇斗・恋愛に年齢は関係ない
  36. 氷川きよし!自分に正直に生きる理由
  37. 阿部寛!美しい皺で年齢を重ねたい
  38. 吉瀬美智子!きれい維持の秘訣は?
  39. 稲垣吾郎!新しい地図で起きた変化
  40. 豊川悦司!やりたい欲求こそがエネルギー
  41. 杉本彩!セクシーであり続けるために
  42. 役所広司!年齢を重ねると原点に戻る

ハルメク365編集部

女性誌No.1「ハルメク」の公式サイト。50代からの女性の毎日を応援する「観る・聴く・学ぶ・つながる」体験型コンテンツをお届けします。
会員登録をすれば、会員限定動画を始めさまざまな特典が楽しめます!

マイページに保存

\ この記事をみんなに伝えよう /

いまあなたにおすすめ

注目の記事 注目の記事