2022年11月06日

主演映画「窓辺にて」で見せたナチュラルな空気感

俳優・稲垣吾郎！映画マニアが作る自然体な恋愛映画

俳優の稲垣吾郎さん主演の映画「窓辺にて」が2022年11月4日(金)より公開されます。監督は、「愛がなんだ」、「あの頃。」などの今泉力哉監督。映画マニアでもある稲垣さんとのタッグで生まれた、上質な恋愛映画は、どのように作られたのでしょうか？

#1 映画はやっぱり、出る方がいい！
#2 夫婦以前に、男と女として演じた
#3 女子高生に翻弄される絶妙なシーンも
#4 「そこに流れる空気」を大切にする監督

映画はやっぱり、出る方がいい！

――映画「窓辺にて」は今泉力哉監督との初顔合わせの作品ですが、出演することになったきっかけを教えてください

稲垣吾郎さん（以下、稲垣吾郎）
僕は映画が好きで、今泉監督の作品もよく見ていました。自分の番組のコーナーで紹介することもあり、いつかご一緒させて頂きたいと思っていました。その思いが通じたんでしょうか？

いい作品を見ると「ああ、自分も出たいなー」と思ってしまう。やっぱり映画というのは見るのも好きですが、出るほうが好きですね！

――フリーライターである主人公の市川茂己は雰囲気も性格も、稲垣吾郎さんそのもののように描かれていると感じました。ご自身は、演じていてどう思われましたか？

稲垣吾郎
僕は撮影に入る少し前に出演のことを聞いたんですが、実は前々から話があって、監督の中では2，3年前から考えてくれていたみたいです。脚本も僕を想定して書かれているので、自然と僕らしさが出ていたのかもしれません。

ただ、オリジナル作品なので、主人公の思いは、実は監督の思いが反映されているはず。監督も、「稲垣さんなら、こういう表現してくれると思って書いた」とおっしゃっていました。僕も演じていて、茂己に共感できますし、不自然さはなかったですね。

夫婦以前に、男と女として演じた

――作品を見ている我々も、主人公のやさしさ、人の良さ、知性、心の葛藤がうまく表現されていて、とても好感がもてました。

稲垣吾郎
不思議ですよね。監督のセリフのマジックなのかな。今泉監督のオリジナル作品は、どれもみな主人公がその人に見えてくる。セリフも大仰ではなく、自然に発する「人の言葉」になっているのが魅力ですね。

――3組のカップルが描く、恋愛、夫婦の愛情などがテーマですが、稲垣さん演じる主人公と、中村ゆりさん演じる夫婦の場面は、どの様に作り上げたのですか？

稲垣吾郎
夫婦以前に、男と女として演じていましたね。主人公の夫婦は、戸籍上は夫婦であっても子どもいないし、夫婦というより男と女なんじゃないかと思いました。

妻役の中村さんと一緒の撮影は、室内のシーンだけで2日か3日間だけでした。でも中村さんもお芝居が上手な俳優さんなので、そこはナチュラルにお互いが夫婦と思えて、その空気感を作ることができたと思います。

演技でも目指すモノが近いとお芝居の相性もよく、ぴたっとハマる。そこは上手く、いい芝居ができたかなと思います。

女子高生に翻弄される絶妙なシーンも

――玉城ティナさん演じる、高校生作家との交流の場面がとくに面白いですが、彼女とのシーンはどんな感想でしょうか。翻弄されている感じがよく描かれていますね。

稲垣吾郎
2人のやりとりは本当に面白かったですね。お互いしゃべっていることが感覚的で、年齢差はあっても分かり合っている、通じ合っているような関係です。脚本のセリフが面白く描かれていたのがよかったんですね。

タイトルにもなっている、喫茶店の窓辺では、とくに長いシーンが多いのですが、何度も撮ったので、お芝居としては毎回同じではなく仕上がり、スリリングでよかったです。

――玉城さんとは、そういった長いシーンについて話しあうこともあったんでしょうか。

稲垣吾郎
いえ、玉城さんもおとなしい感じの方で、現場ではあまり話さなかったですが、自然に空気のようにそこに存在している、不思議な魅力を持った人です。“ちょっとかわいい、おばあちゃん”みたいな雰囲気の人で（笑）。達観していて、どこまでが役でどこまでが本人なのか分からない感じでした。

「そこに流れる空気」を大切にする監督

――今回の作品は、稲垣さん演じる主人公を中心に、高校生カップルや、夫婦、恋人などが登場しますが、どの方も本当にその人らしさを感じさせていますね。

稲垣吾郎
まるでアドリブのようにセリフを言って、演技もこちらに任せられているようなところもありました。今泉監督は、「そこに流れる時間」を大切にしているんですね。共演者の方とも波長があって、キャスティングもピタッとはまった感じです。その空気の作り方が大事なんだと思います。

役者としては自分の爪痕を残そうとか、自分のパフォーマンスをするよりも、全体の空気感を大切にしていました。書かれている台詞も素敵だったので、自然に話せばストーリーが流れましたね。

――「うちの妻が浮気しています」と告白するという難しいシーンでは、怒りの湧かない、もしかしたら感情の起伏の乏しい、という主人公を演ずるのにどのような工夫をされましたか？

稲垣吾郎
飄々とやっていれば、その雰囲気が出るかなと（笑）。僕もそういう雰囲気もありますよね、きっと。ナチュラルにやったらその感じが出るだろうと思って脚本も書かれているので、作り過ぎなかったです。

結局、どんな場面でも自分が共感できることが重要かと思います。この作品では、自然と役に共感していました。

2021年猛暑の中での3週間の撮影は、ふわっとした不思議な時間でしたね。

映画を見るのも大好きだけど、やっぱり出る方が好き、という自身の映画愛や作品への思いを語ってくれた、稲垣さん。後半では、「新しい地図」として独立してからの、稲垣さん自身についても語ってくれました。

【後編】稲垣吾郎！新しい事務所スタートで起きた変化

「窓辺にて」

フリーライター市川茂巳（稲垣吾郎）は、編集者の妻・紗衣（中村ゆり）が、担当している小説家と浮気しているのを知っているが、妻には何も言えずにいた。そんなある日、文学賞の授賞式で出会った高校生作家・久保留亜（玉城ティナ）の受賞作に惹かれて、久保にその小説にはモデルがいるのかと尋ねる。次第に彼女を取り巻く人間関係が気になっていくが……。

2022年11月4日（金）より、全国ロードショー監督・脚本：今泉力哉
出演：稲垣吾郎、中村ゆり、玉城ティナ、若葉竜也、志田未来ほか
配給：東京テアトル
（C）「窓辺にて」製作委員会

稲垣吾郎（いながき・ごろう）

1973年生まれ、東京都出身。91年SMAPのメンバーとしてCDデビュー。2017年より「新しい地図」として活動する。2010年映画「十三人の刺客」で第23回日刊スポーツ映画大賞・助演男優賞などを受賞。19年主演映画「半世界」で、第31回東京国際映画祭で観客賞他を受賞。18年、「クソ野郎と美しき世界」は2週間で28万人を超える動員を記録。他に、「海辺の映画館─キネマの玉手箱」（20）、「ばるぼら」（20）に出演。レギュラー番組では、草彅剛、香取慎吾らと「ワルイコあつまれ」（NHK）に出演中。

文＝金田千里、写真＝小倉啓芳、編集＝鳥居史（ハルメクWEB）

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