8人家族が夫婦二人きりになった後の驚き……

今更なぜ?突然の告白で知った夫の驚愕の過去

公開日:2021.03.09

更新日:2024.02.17

ノリコさん(59歳)の体験談を紹介しよう。両親も他界し、子どもも巣立った後の夫婦二人の生活。夫からされた驚愕の告白内容とは?

昔は育児と家事に追われたのに、今や家庭内で物音さえしない

今更なぜ?突然の告白で知った夫の驚愕の過去2

家族の形態は変わっていくもの。若いころは育児に家事に仕事にとあれほど忙しかったのに、今や家庭内では物音さえしない。だからといって過去ばかり振り返っていてもしかたがない。これからも自分の人生は続く。今日はいつでも人生で一番若い日なのだ。

26歳のときに結婚、4人の子をもうけ、一時期は夫の両親や実母まで同居していたというのは、ノリコさん(59歳)だ。

「うちが6人、夫の両親と合わせて8人で生活していた時期が長かったですね。その後、義母が亡くなり、実母と同居したこともあります。子どもたちがひとり減りふたり減りして、とうとう昨年から夫と二人きりになりました」

4人の子どもたちには、とにかく自分の見つけること、やりたいことは何でもやることを優先して育てたという。

「30代の長男は今、仕事の関係で家族と一緒にアメリカにいます。長女は独身ですが北海道で仕事をしていて。次女は結婚して離婚&再婚してまた離婚して、やはり遠方で暮らしている。次男は九州の大学を出てそのまま大学院に進学しています。昨年、実母が93歳で亡くなり、夫婦だけになりました」

常に家族のためにとがんばってきた。夫は多忙で、家事も育児も義父母の面倒も一人で見てきたという。

「あの頃は大変だったし、私だけが忙しいと思っていましたが、今思えば、忙しいけど楽しい日々だったんですよね。家族がたくさんいて、喜怒哀楽もみんなで分かち合って。いつも仲良しというわけにはいかなかったけど、ケンカしたのもいい思い出です」

夫と二人きりになってからは、時間が淡々と過ぎていくだけ。夫とは安定した関係ではあるが、年齢もあって、今さら一緒にいてウキウキするわけでもない。だがそれが幸せというものだとノリコさんは感じていた。

積年の懺悔のつもり?夫から驚愕の告白

積年の懺悔のつもり?夫から驚愕の告白

1歳年上の夫は昨年、定年を迎えたが、勤めていた会社の関連子会社で今も働いている。コロナ禍においても、夫の仕事は在宅ではできないので毎日、変わらず出社していたという。

「夏に私の誕生日があったんです。二人きりになって初めての誕生日でした。子どもたちから電話が来たりプレゼントが届いたり、うれしかったですね。その晩、夫がケーキを買ってきてくれました。結婚してから初めてだったかもしれない。そして華奢で美しいピアスも。だけどその後、夫から悪魔のような告白があったんです」

久しぶりに甘い気持ちになったノリコさんだが、夫の言葉で地獄に突き落とされた。夫は言ったのだ。

「もう時効だと思うから言うけど……。若いとき君を裏切ったことがある。ごめん」
と。

40代半ばノリコさんが家事に子どもの世話、義父母の面倒に明け暮れていたころ、夫は会社の部下と関係をもっていたというのだ。しかも5年間も。

「どうして今さらそんなことを言うのか、それがいちばん疑問でした。夫は『もうこの年になると、いつ何があっても不思議じゃない。きみに嘘をついたまま死にたくないんだ』って。『墓場にまで持っていくという言葉を知らないの?』と思わず言ってしまいました。どうして今、私はこの人に傷つけられなくてはいけないのか。もう、なんだか訳がわからなくなって家を飛び出しました」

深夜に飛び出したところで行く場所があるわけではない。財布とスマホだけはつかんで出たので、そのまま近くのビジネスホテルに泊まったが当然のことながら寝つけない。夫からは何度も電話がかかってきたが出なかった。

「翌朝、チェックアウトして自宅に戻ると夫はいませんでした。結局、こんなときも仕事に出かけて行く人なんですよね。心配しているから連絡してほしいとメモがありましたが、なかなか連絡する気にもなれませんでした」

真剣に相談できる友人さえ、気付けば疎遠になっていた

積年の懺悔のつもり?夫から驚愕の告白3

子どもたちに話すわけにもいかない。そのとき彼女は、こんなときに気軽に愚痴を言える友人が誰もいないと気づいた。家庭に縛られて自分の人生が二の次になっていたことを思い知らされたのだ。

「あれから3ヶ月ほど経ちますが、結局、夫とはそのことについてきちんと話し合っていないんです。夫は長年の重荷を白状して気持ちがラクになったのか、私が不機嫌だと思い込んでいるのか、最近、妙に家事をやってくれたりおいしいものを買ってきてくれたりするんです。懐柔しようとしているのかと疑ってしまう。離婚という言葉が一瞬、頭の中を駆け巡ったことなどまったく想像もしていないんでしょうね」

とはいえ、ノリコさんも今さら離婚という選択肢をとるつもりはない。どうして話したのよ、どうして自分の胸だけにおさめておけなかったのよ。その思いだけが強くなっていく。

「このままでは安心して老後を送れない。それはわかっているんですが、思いのほか自分が動揺しているんですよね。20年近く前の夫の不倫を聞いたからって、これほど心が乱れるものかと自分でも意外で……」

慣れ親しんだ夫が他人に見える。ノリコさんはそう言った。その「他人」ともう一度、関係を再構築できるのかが、彼女に突きつけられているのかもしれない。
 

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亀山早苗

東京生まれ。明治大学卒業後、フリーランスのライターとして雑誌記事、書籍の執筆を手がける。おもな著書に『不倫の恋で苦しむ男たち』『復活不倫』『人はなぜ不倫をするのか』など。最新刊は小説『人生の秋に恋に落ちたら』。歌舞伎や落語が大好き、くまモンの熱烈ファンでもある。

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