離婚ではなく夫婦の役割から卒業する

卒婚とは?50代で見直した新しい夫婦の形

公開日:2020/06/17

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卒婚とはどのような関係を指すのでしょうか?離婚ではなく卒婚を選んだ50代夫婦の関係性の変化について考えます。

卒婚とは

卒婚とは何か?50代で訪れる夫婦の変化

50代で訪れる夫婦の変化

50代になり、子どもたちも独立していき、そろそろ定年など人生の先が見えてくる頃。「夫婦(パートナー)との関係、形を見直してみたら、新たな方向が見えてきた」……そんなカップルは少なからずいる。

卒婚、家庭内別居、別居、離婚などなど、ベテランカップルだからこその選択肢はいろいろある。今回は「卒婚」を選んだ夫婦の形を見ていこう。

 

卒婚という「役割」に縛られない同居生活へ

「役割」に縛られない同居生活へ

「卒婚」というのは、一般的に「離婚届は出さないけれど、結婚につきものの夫・妻の役割にとらわれることなく生活すること」とでも言えばいいだろうか。同居するにせよ別居するにせよ、お互いに「今後はこうやって生きよう」という共通認識が必要だ。

都内在住のキミコさん(57歳)は、一昨年から4歳年上の夫と二人暮らしとなり、2019年春、夫の定年を機に、「結婚生活を見直したい」と言ってみた。28歳で結婚、30 歳で生まれた長男は就職して一人暮らし、その2年後に生まれた長女も大学を卒業して就職、地方に転勤となっている。

「夫は定年後も嘱託として仕事はしています。でも以前ほどハードではなく、定時で帰れる。私は週4日パートで働いているんですが、子どもたちがいなくなった分、趣味やスポーツジムへ行く機会を増やしていました。それでも家に帰って夫の食事の用意をしなくてはならない、家事は相変わらず私だけが負担する。なんだかそういう生活が不自由だなと思ったんです。もう家庭に縛られたくない、私個人として自由に生活したい。そういう思いがふくらんでしまって、夫に話してみました」

最初は、まったく理解ができないと夫は言った。離婚したいのかと不快そうな顔をすることもあった。それでもキミコさんはめげずに自分の気持ちを訴えた。

「夫がどうこうということではなく、結婚という縛りから解放されたいのだ、と。ただ、それは離婚したいという意味ではない。すると夫は、『オレのご飯はどうなるの?』と言う。ほらね、それがプレッシャーなのよ、そこからもう解放されたいのと言ったら、ふうんと夫は黙り込んでいました」

 

妻は家事代行業者ではない

妻は家事代行業者ではない

次の日は、「オレの洗濯物はどうなるの?」と夫が問う。「ね、あなたは私を家事担当としか思っていない。私の気持ちには無頓着なの、自分の世話を誰がするんだと言いたいだけ。私はあなたの身の回りの世話係なの? だったら家事代行業者に頼めば? そもそも自分の生活を自分で成立させられないのはおかしいと思う」。キミコさんは諄々と夫に言い聞かせた。

「そのあたりを夫は情報としてはわかっているんだと思います。うちの息子も家にいるときは自分で食べるものは自分で作ったりしていましたしね。経済力はあっても生活力がなかったら、人として生きていけないよと、私も息子には言っていました。でも夫は、従来の夫婦役割にとらわれていた。新たに家事能力を身に付けていくのも大変ですからね」

キミコさんは夫に、人間、いつ死ぬかわからない。子どもを育て上げたのだから、これからは自由に生きてもいいのではないかと思っていると告げた。

 

卒婚関係を機に夫との関係が変わった

卒婚関係を機に夫との関係が変わった

キミコさんは、あえて「卒婚」という言葉を使わずに夫と話し合いを続けた。根負けしたのか、夫は「なんとなくわかったような気がする」と言うにとどまった。以来、キミコさんは自分のスケジュールを優先させて過ごすようにした。

「例えば今週の金曜日は友達と夕飯を食べてくるから、あなたは自分でなんとかしてねと伝える。そこから始まったんです。夫は家事がまったくできない人ではないんですよ。やらないだけ」

掃除も洗濯も、以前と変わらずキミコさんがやっていたが、昨年夏、彼女は風邪をこじらせて寝込んだことがある。

「以前だったら何もしなかった夫が夜中に洗濯機を回していました。私におかゆも作ってくれた。私、めったに寝込んだことがないので、それをきっかけに夫も少し意識が変わったみたいですね」

 

もう一度、自分一人の時間も楽しみたい

もう一度、自分一人の時間も楽しみたい

キミコさんが夫と結婚生活の見直しを話しているとき、「お互いに体調不良の場合は、真っ先に看病することは重要」と説いていたのだ。夫はそれを実践してくれたともいえる。

「私が元気になって、またスポーツジムへ行き始めたとき、夫は『オレも何か趣味を持とうかな』と言い出しました。大賛成しましたね。今のうちに好きなことを見つけておいた方がいいですから。夫は高校生時代、バンドを組んでいたことがあるらしいんですよ。音楽が好きなのは知っていたけどバンドを組んでいたなんて初めて聞きました。そんな話をしていたら、ジャズピアノを習いたいって言い出した。週に1度、楽しそうに通っていますよ。帰りに必ず一杯やるような仲間もできたみたい」

家事の完全分担はまだ難しそうだが、キミコさんが出掛けて夜遅くなっても連絡さえしておけば夫は何も言わなくなった。

「私がいないということは夕飯がない、とやっと夫の脳にインプットされたみたい(笑)。それだけでも私の行動半径は広がりました。パートの帰りに一人で映画を見ることも増えました。夫に『映画見て帰るから遅くなる』とメッセージを送っておきます。そうすれば夕食はそれぞれ勝手にするということだから。こうやって少しずつ自由な時間を増やしていければいいなと思っています」

子どもが巣立ったら、もう一度、自分一人の時間を持ちたい、夫に縛られない生活をしたい。そう思っている女性たちが、緩やかな卒婚を選択していくのではないだろうか。
 

取材・文=亀山早苗

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亀山早苗

東京生まれ。明治大学卒業後、フリーランスのライターとして雑誌記事、書籍の執筆を手がける。おもな著書に『不倫の恋で苦しむ男たち』『復活不倫』『人はなぜ不倫をするのか』など。最新刊は小説『人生の秋に恋に落ちたら』。歌舞伎や落語が大好き、くまモンの熱烈ファンでもある。

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