夫とは会話のない関係。20歳年下の男性にドキドキ

50歳を過ぎても…ときめいてしまうのはダメなの?

公開日:2021.01.20

更新日:2023.08.18

56歳のヒナコさんの体験談を紹介します。子どもは大きくなり夫とはマンネリで冷え切った関係。50歳を過ぎて「女性として見られたい」と感じるのはおかしいのでしょうか?20歳年下の男性と出会ったことで気持ちに変化が表れます。

日常生活に追われる中で、知らぬ間に夫との心の距離が開いていった

結婚して長い年月がたち、夫婦関係はマンネリで会話もない。子どもたちはすでに自分の世界を持っている。そんなとき、女性は「何のために今までがんばってきたのだろう?」と虚しい気持ちに陥ってしまう。夫といい関係を作ろうと努力しても、夫は冷たい目を向けるだけ。もう一度、女として生きたい。そう思うのはわがままなのだろうか?

27歳のとき、2年間の社内恋愛を経て結婚したヒナコさん(56歳)。当時、社内結婚の場合は女性が退社するのが暗黙の了解となっていたため、彼女も「寿退社」した。すぐに子どもに恵まれ、28歳で長女、31歳で長男・次男の双子を出産した。


「3人の子育ては本当に大変で、実家の母や義母の助けを借りながらなんとかという感じでした。双子が小学校に上がるまでは、毎日が怒濤のような日々。小学校2年生になったときにやっと近所に1日数時間、パートに出られるようになりました。

それも夫から『家事に支障がないようにしてね』と釘を刺されていました。当時は夫側も妻側もそういう意識が普通だったんですよね」

ただ、景気が悪くなって実質、夫の給料が目減りしていったこと、ヒナコさんも仕事が楽しくなってきたことなどから、少しずつパートの時間は増やしていった。

だが夫は家のことにはほとんどタッチしなかったし、子どもの教育もヒナコさんに託されていた。夫は仕事人間、というより当時多かった“会社人間”だったのだろう。

「接待なども結構ありましたね。平日は家で食事をとることもあまりなかったし、週末は接待ゴルフに出掛けるか、家でゴロゴロしているか。それでも月に1~2回は子どもたちと公園に行ったりしていましたから、本人は父親としてがんばったつもりかもしれません」

夫婦もいつしか二人で語り合うことはなくなっていった。話すとすれば子どものことだけ。それもヒナコさんが夫に報告するような形だ。何を相談しても結局は「お前に任せるよ」で終わってしまうのが常だった。夫の実家や親戚付き合いもヒナコさんが独断でこなしていた。

「それで家庭はうまく回っていたということですよね。夫は外の人、私は内外の雑用もマメにこなす人。そういう役割だったんでしょう。ただ、夫とじっくり話し合ってこなかったのは今になると心残りではあります」
そんな積み重ねが“今”に至っているからだ。

「淡い気持ちを持つだけなら……」と思ったけれど

今、28歳になった長女は一人で暮らしながら仕事をしている。出張なども多いらしく、ときどきお土産を持って実家を訪ねてくるが、またすぐ自宅に戻っていく。結婚するつもりは今のところないらしい。25歳になった双子は、長男が仕事で遠方へ、次男は大学院生で同居はしているが、友人宅に泊まると言って帰ってこないことも多い。みんな大人だから、ヒナコさんは深く干渉するつもりもない。

「夫婦二人きりになって本当に会話がないんですよ。私も今はフルタイムで働いているので、仕事帰りに友人や同僚と食事をすることもあります。平日は夫のためだけに食事を作ることもなくなりました。気は楽だけど、何のためにこの人と一緒にいるのかしらと思うこともあって」

楽しいことがあっても共有できない、話をしても盛り上がらない。淡々と生活が過ぎていくだけだ。すでに寝室も別なのだが、20年近くセックスレスでもある。

「50歳を過ぎた頃から、私はもう誰からも女として見てもらえないんだと思っていました。そうしたら変にラクになって、男友達が増えましたね。一緒に飲んだりカラオケに行ったり、若い男友達もできて楽しくて」

ところがそんな仲間の一人にヒナコさんは恋心を抱いてしまう。今から2年ほど前のことだ。彼は20歳年下の独身で、ヒナコさんを慕ってくれている。仕事の相談から彼女のことまで何でも話してくれるのだ。

「彼は年齢も気にせず、非常にフラットに接してくれるんです。私が新しい服を着ているといち早く『ヒナコさん素敵ですね』と笑顔で言ってくれる。私もまだ女として生きていいんだなと思わせてもらいました」

年下の友達とカテゴライズしていた彼なのに、気付くとヒナコさんの心の中で彼の存在が大きくなっていた。夜中にLINEのメッセージをやりとりしたこともある。

「でも彼に好きだなんて言えないし、私が彼の恋愛対象に入っているわけもない。そう思っていたんです。だけどつい先日、うっかり夫の愚痴をこぼしたら彼がまじめな顔をして、『僕ならヒナコさんに寂しい思いはさせない』って。彼、長く付き合っていた彼女と別れたばかりで、彼自身が寂しかったんだと思います。その日は手をつないで歩き、別れ際にキスしてしまいました」

これ以上のことがあってはならない。ヒナコさんは理性ではそうわかっている。だが心は裏腹で彼への情熱は燃え上がる一方だ。彼も異性と意識したメッセージのような内容を送ってくるようになっている。

「不倫なんてしません。しないつもり……。彼のことは本気で好きですが、浮かれて傷つきたくはない。だから最初から深入りしないのが一番だと、今は自制しています」

ただ、彼からもっと熱いアプローチがあれば自分がどうなるかわからない。彼女は小さな声でそうつぶやいた。女としての迷いと苦悩がその表情からにじみ出ていた。
 

※この記事は2021年1月の記事を再配信したものです

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亀山早苗

東京生まれ。明治大学卒業後、フリーランスのライターとして雑誌記事、書籍の執筆を手がける。おもな著書に『不倫の恋で苦しむ男たち』『復活不倫』『人はなぜ不倫をするのか』など。最新刊は小説『人生の秋に恋に落ちたら』。歌舞伎や落語が大好き、くまモンの熱烈ファンでもある。

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