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- コロナ禍で離婚の意思が高まった50代夫婦の関係性
新型コロナ禍は夫婦関係にどのような影響を及ぼしたのか?外出自粛やリモートワークで夫婦共に過ごす時間が増える中、離婚の意志が高まったという50代主婦の話を紹介しよう。
新型コロナウイルス禍は、50代のベテラン夫婦の関係性にどういう影響を及ぼしているのだろうか?
30歳前後の結婚間もない夫婦にとって、「家にこもる」外出自粛な日々は、二人の関係を強めるきっかけになるのかもしれない。
40代となると子どもが難しい年齢になっていることもあるし、結婚以来初めて長期間、夫と過ごす時間をもったことで逆に冷戦状態になっているカップルも多い。
「うちの母がよく言ってました。『亭主元気で留守がいい』って。私も今、それを痛感しています」そんな声が周りには多かった。
では、さらにベテランである50代夫婦は、この事態をどう捉え、夫婦関係はどう変わりつつあるのだろうか。
夫のモラハラ発言に怒りが収まらない日々
今までもモラハラ発言はよくあった。ただ夫は多忙であまり家にいる時間もなかったから、自分自身でストレス発散することができていたと言うのは、ヨシエさん(52歳)だ。4歳年上の男性と結婚して24年、大学3年生の娘と高校3年生の息子がいる。
「娘は就職活動もままならず、希望の仕事に就けるかどうか、鬱々(うつうつ)としています。息子はオンラインで予備校の講義などを受けていますが、こちらも不安が尽きない様子。二人とも大変だけど、私は子どもたちを励ますことはできています。いちばん厄介なのが夫です」
とある企業の管理職である夫は2020年3月末まで出社していたが、4月以降は週1日の出社となった。家で仕事をする時間が増え、それに伴って家族と過ごす時間も増えた。
「最初は夫も慣れないリモートワークに四苦八苦していたみたいですが、そのあたりは子どもたちの方が強いので、いろいろ教えてもらっていましたね。それで子どもたちには文句を言えなくなり、夫のストレスが一気に私に回ってくるようになったのかもしれません」
夫はまるで『家庭内警察』
専業主婦のヨシエさんは、通っていたスポーツジムや書道教室も閉鎖となり、家事に明け暮れる日々。その家事にいちいち難癖をつけてくるのが夫だ。
「消毒液などを使っていると『臭くてたまらない』と文句を言うし、入ったこともない台所にやってきては『水回りが汚い』と小言を吐く。一日中、家の中をパトロールして歩いてる。『自粛警察』なんていって自粛していない店や個人を非難する人がいますが、夫は『家庭内警察』みたいなものですね」
ひと息ついてお茶を飲んでいると、「いいなぁ~。おまえはずっとそうやってラクして暮らしてきたんだな、今まで」とため息をつく。
彼女が「いつかフランスへ行きたい」とフランス語の勉強をしているのを見ると、「今さら、そんなことして何の役に立つわけ?」とつぶやく。「何でもいいからもっと生産的なことをしたらどうなの?」と言われたこともあるという。
「夫はストレスがたまって何気なく言っているのかもしれないけど、私としては人格を否定されまくっている気分です。そんな嫌味ばかり言わなくてもいいじゃないって言ったら、オレは間違ったことは何も言ってない、と開き直るんです。子どもたちももう大きいので、親が険悪になっていても見て見ぬフリをしていますね。私は孤独感が強まっています」
「離婚」の二文字が頭から離れない
振り返れば30代、子育てで忙しいときに夫は仕事が多忙で家庭を顧みなかった。それだけではない、浮気疑惑が生じたこともある。ヨシエさんは今でも、夫は絶対に浮気をしていたと感じているが、当時はうまくはぐらかされた。経済的に夫と別れられないことがわかっていたし、夫に不機嫌になられるのがイヤで深く追求はしなかった。
「子どもたちが少し大きくなった40代は、何かあると『おまえの育て方が悪い』と言われていました。今なら信じられないような言葉でしょうけど、当時、専業主婦の妻は何も言い返せませんでしたよ。子どもたちが大きくなったら、いつか自由になりたい。そんなことばかり考えていました」
そして思いもかけないこのコロナ禍で、夫は昔から全く変わっていないことを痛感させられている。家で快適に過ごせないのは、すべて妻のせい。自分は「家族を養う」という大事業を一人でやっているのだから、あとの家族はみんなオレに従え。夫はずっとそう思ってきたのだろう。
子どもたちが大きくなった今、彼らは夫の知らないことも知っている。若い能力にはかなわないところもあるから、夫の支配欲のすべては妻に向かう。
定年退職のタイミングで離婚したい
「夫が定年退職したら離婚したい。今ははっきりとそう感じています。でも経済的には難しいでしょうね。今さら仕事も見つからないでしょう。娘にちらっとそんな話をしたら、『やる気さえあれば家事代行業だってできるし、お母さんは料理が上手なんだから人の家に行って料理を作る仕事だったできると思う。一人で生きていく覚悟があるかどうかの問題じゃない?』と言われました。娘はよく見ていますよね」
コロナが終息したら、まずは一歩踏み出してみようか。ヨシエさんはそう思うようになっている。自分にできるのは家事業だけ。それならそれを仕事に生かせばいいのだ。
「まだまだ決意が甘いんですけど、自立する手もあるんだとわかってから夫の文句にいちいち反応しなくてすむようになりました。夫の定年は65歳なので、あと9年。夫は会社でどれだけ活躍できるか必死みたいですけど、私は私で自立の道を進んでいこうと思っています」
老後は決して短くない。第二の人生を夫に支配されながら過ごすのか、生活レベルは落ちても自分の尊厳を取り戻すのか。ヨシエさんは「この自粛生活の間に大事なものが見えてきた」と話してくれた。
取材・文=亀山早苗
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