役所広司!吉沢亮と親子を演じて得た気付き
2023.01.082023年01月14日
やりたいことは人生の楽しみにとっておく
役所広司!年齢を重ねると原点に戻る理由
映画「ファミリア」の主演・役所広司さんに、俳優の仕事について、健康について、年を重ねてからの人生の楽しみ方についてお話を伺いました。
お互いの心の痛みを感じることができる存在とは
――役所さんが映画「ファミリア」で演じている陶芸職人・誠治の親友・駒田隆役で、佐藤浩市さんが出演しています。誠治が唯一本音で話せる相手として、とてもリラックスしたいい雰囲気でしたね。
役所広司さん(以下、役所広司)
そうですね。あの映画では、脚本家の方が登場人物の人生ノートのようなものを作ってくれたんです。誠治と駒田は同じ施設で育って、一緒に施設を脱走したりする悪友だったんですよ。そういう背景が、誠治と駒田の関係性を埋めていたので、浩市さんとは芝居の相談をする必要はありませんでした。撮影合間には「お互い、年をとったなあ」なんて話をして過ごしていましたね(笑)
――この映画は、家族がキーワードになっていて、誠治は息子以外にも、弟子にしてほしいというブラジル人の青年マルコスとの交流もあります。この映画を通じて、役所さんは家族というものをどう考えられましたか?
役所広司
家族と言えば、まずは血縁になるのでしょうが、今は少し違い、お互いの痛みを感じて、共感できる関係ではないかと思っています。他人でもそういう関係を築けるのなら、家族と言えるのかもしれません。
この映画では、誠治と学の親子以外にも、ブラジル人のマルコスとの関係にそれが描かれている。家族は血縁だけではない、そういう関係が築ける相手が、生きて行くにはいちばん大事だと思いますね。
「自然に演じること」は永遠のテーマ
――役所さんのキャリアについてお話を伺いたいです。ずっと第一線で活躍されていますが、年齢を重ねて俳優の仕事との向き合い方に変化はありましたか?
役所広司
そうですね、まあ、これだけ長くやっていると、若い時みたいに視野が狭くなるぐらいの緊張感はなくなりますね、ただ、いろんな現場で教わったこととか、自分で学んできたことを基本に、今まで以上に「自然に演じるというのは、どういうことなのか」と考えるようになりました。
お客さんが、物語の世界をリアルに覗き見している感じになるにはどうしたらいいのだろうというのは、僕の永遠のテーマです。自然に感じられるようになるのが一番なんだろうなと。やはり年齢を重ねると原点に戻って考えます。
――役所さんほどのベテランの俳優さんでも、「自然に見えるのはどうしたらいいのか」と追求されているのですね。
役所広司
自然なお芝居をするためには、リラックスしていないといけないのですが、何しろ何回もスクリーンに出ている顔と体ですからね。新鮮味がないと思うんですよ。
またCMにも出ていますから、映画を見てくださるお客さんにしてみたら、よく見る顔じゃないですか。その認識を、劇場の暗い空間で思い出させないようにするには、どうしたらいいのだろうというのは常に考えていますね。
役によって食生活をコントロール
――俳優の仕事は体調管理も大変だと思うのですが、役所さんは、運動や食生活など気をつけていることはありますか?
役所広司
そうですね、確実に体力が落ちていますから、運動をしないといけないと思うのですが、あまり無理をしてしまうと怪我をしてしまいますから、難しいですね。
できれば演じる年齢よりも10歳くらい若い体力があった方がいいような気がしますね。コロナ禍で、ジムへ行ったりはしていないので、自宅の近所を散歩したりしていますけど、筋力はすぐに衰えてしまうので、気を付けなければと思っています。
食生活については、僕は人生において、食欲が衰えるということはないのですが、(笑)、自分の欲のままに飲んだり食べたりしていると、そのときの役に合わない体型になってしまうかもしれない。だから役によって食生活はコントロールしています。
やりたいことを人生の楽しみにとっておく
――ハルメクの読者の中には、子育ても終えて、自由な時間があるけれど、何をしたらいいのかわからないという方も多いのですが、そういう読者に人生を楽しむコツを教えていただきたいです。
役所広司
それは僕も一緒ですよ。例えやりたいことがあっても、やるタイミングを見つけるのが難しい。僕の場合は、私生活でもやることが仕事寄りになってしまうことに悩んでいます。やりたいことはたくさんあるんですよ。この映画で体験した陶芸も続けたいし、好きな本もゆっくり読みたい。買ったけど読んでない積読本が、部屋の本棚にたくさんあります(笑)。
どうしても出演する作品に関連した本を読んだり、映画を見たりということが増えていって、自分の趣味が置き去りにされています。でも、いつかはゆっくりとやりたいことを自由にやる時間を作ろう!と楽しみにしています。
みなさんも、まずはやりたいことを見つけて楽しみを作ることから始めてみてはいかがですか。家事が終わったら、これをやろう!と決める。先に楽しみがあると、気持ちが明るくなると思います。
――なるほど、小さなことでも楽しみを作ると毎日が生き生きしますよね。
役所広司
そうですね。そのためにも健康にも気を付けないと。アクティブにやりたいと思っても、僕は足腰が弱ってしまって、ああ、失敗したな、もっと早くにやっておけばと思ったりすることありますから(笑)。楽しみを実行できる体力は維持した方がいいですよ。
――最後に、映画「ファミリア」の注目のポイントを教えてください。
役所さん
自分が出ている映画は、何回見ても観客としては見られないですね。それがこの仕事のマイナス点かもしれません。この映画の場合、自分のことより、若い役者たちが素晴らしいので注目していただきたい。息子の学を演じた吉沢亮くんは、若者キャストの中でも安定したお芝居を見せていましたし、オーディションでキャスティングされたブラジル系の若者たちもとてもフレッシュでいいお芝居をしています。成島監督が、手塩にかけて育て上げた若い役者たちのエネルギーがこの映画の力になっているので、ぜひ注目していただきたいですね。
役所広司(やくしょ・こうじ)
1956年、長崎県生まれ。映画出演作に「KAMIKAZE TAXI」(1995年)「Shall we ダンス?」(96年)「ユリイカ」(2001年)「SAYURI」(05年)「BABEL」(06年)など。2009年「ガマの油」で監督デビューをしている。2012年、紫綬褒章を受章。今後は映画「銀河鉄道の父」が23年GW全国公開、Netflixシリーズ「THE DAYS」が23年配信予定。またヴィム・ヴェンダース監督による「THE TOKYO TOILET Art Project」の映画にも出演予定。日本を代表する俳優として活躍している。
「ファミリア」
(2023年1月6日より全国ロードショー)
監督:成島出
出演:役所広司
吉沢亮 /サガエルカス ワケドファジレ 中原丈雄 室井滋 アリまらい果 シマダアラン スミダグスカボ 松重豊 / MIYAVI 佐藤浩市
取材・文=斎藤香 写真=泉三郎 ヘアメイク=勇見勝彦(THYMON Inc.)スタイリスト=安野ともこ 編集=鳥居史(ハルメクWEB)
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