映画「ファミリア」で陶器職人の父を演じ

役所広司!吉沢亮と親子を演じて得た気付き

公開日:2023.01.07

更新日:2023.01.08

役所広司さんが主演する映画「ファミリア」は、陶器職人の主人公と息子(吉沢亮)の関係、そして在日ブラジル人の青年との交流を描き、家族の姿を新たな切り口で描いた作品です。役作り、撮影の裏側、ライフスタイルについて伺いました。

吉沢亮と共演!陶器職人の父を演じて

映画「ファミリア」は、両親を知らず、児童養護施設で育った神谷誠治(役所広司)が主人公。山里で陶器職人をしている誠治は、妻を早くに亡くし、息子の学(吉沢亮)はアルジェリアに赴任中。ある日、誠治は、在日ブラジル人のマルコスを半グレ集団から助けたことをきっかけに、在日ブラジル人の家族たちと交流を持つように……。そんなとき、アルジェリアから婚約者と一時帰国していた学が、最後の仕事をしてくると旅立ったアルジェリアで悲劇に襲われる……という物語。

主演の役所広司さんにまず陶器職人の誠治について、役作りや撮影の裏話を伺いました。

オリジナルストーリーに惹かれて出演を快諾

――まず「ファミリア」の出演依頼があったときのことについて教えてください。

役所広司さん(以下、役所広司)
成島出監督と仕事をするのは久しぶりでしたし、この映画はオリジナルストーリーであることも惹かれました。小説や漫画の映画化などが多い中、この映画は、見てくださるお客さんにとって初めて知る物語です。そんな映画に出演できることに魅力を感じ、ぜひ出演したいと思いました。陶器職人の役なので、陶芸も一生懸命練習しましたね。

――誠治のキャラクターはどのように考えて演じられたんですか? 

役所広司
誠治は児童養護施設育ちで、父も母も知らない環境で大人になった男です。だから、結婚したけれど、妻や息子にどう接したらいいのかわからない。その気持ちは理解できます。これまでの人生でお手本となる人が身近にいなかったわけですから。

――でも学はお父さんをすごく尊敬しているし、父のようになりたいと言っていますよね。

役所広司
それでも誠治は、学に自分のような人生を歩んでほしくないと思っているんです。それは父から息子への愛情で、幸せになってほしいと誰よりも願っているのですよ。

なぜなら、学は実に優秀な息子で、誠治にとっては眩しいくらいの存在。もし学がチンピラみたいな息子だったら、まだ対処のしようもあるんでしょうが、申し分のない青年に成長したので、自分がアドバイスすることは何もないし、自分とは違う道を歩んで、社会で成功してほしいという望みを持っています。一方、学は、貧しいながらも陶芸をがんばっている父の背中を見て、自分もがんばろうと生きてきたんだと思います。

親子って、そういうものではないですか? 子どもに対して「お前のこと大事にしているよ」とか、息子が父に対して「お父さんが大事だ」とは口に出して言わないでしょう。心のどこかでお互いを大事に思っているし、お互いの痛みも感じ取れる関係なのではないかと思います。

役作りで始めた陶芸に夢中になる!

――役作りとして陶芸もかなり学ばれたそうですが、大変でしたか?

役所広司
沖縄の陶芸家の方の指導のもと、土をこねるところから陶芸のやり方を学び、撮影中も指導していただきながら進めていきました。成島監督は細部にもこだわる監督で「吹き替えは使わない」とおしゃっていたので、冒頭の陶芸シーンも僕がやっています。映画の導入部の大切なシーンなので、がんばりました。

あと僕が作った器もセットに並んでいます。指導の先生がうまく形になったものを選んで釜に入れて焼いてくれたんです。撮影後、スタッフに差し上げたりしましたが、まだ家には20個くらい自作の器があります。でも下手だから薄く作ることができなくて、すごく重いんですよ(笑)。

――陶芸は楽しかったですか?

役所広司
好きでしたね。掘ってきた土を洗って、粘土みたいな状態にして、それが器になっていく過程は興味深かったです。撮影のためでしたが、「上手になれるといいな」と思いながらろくろを回していました。スタッフが練習用に電動の陶芸セットを準備してくれたので、自宅の駐車場でも自主練習をしましたね。

主人公にとって陶芸こそ心落ち着く時間

――誠治が陶芸の世界に入っていったのは、彼のキャラクターに深く関わっていると思うのですが、役所さんはどう思われますか?

役所広司
誠治は、人との交流はあまり得意じゃない人だと思います。家族にもどう接していいのかわからない人ですから。陶芸は作業に没頭できるし、特に他人とのコミュニケーションを必要としないので、誠治は陶器職人の仕事に落ち着いたのだと思います。誠治にとって陶芸は心が安らぐ時間だったのでしょうね。

役所広司(やくしょ・こうじ)

1956年、長崎県生まれ。映画出演作に「KAMIKAZE TAXI」(1995年)「Shall we ダンス?」(96年)「ユリイカ」(2001年)「SAYURI」(05年)「BABEL」(06年)など。2009年「ガマの油」で監督デビューをしている。2012年、紫綬褒章を受章。今後は映画「銀河鉄道の父」が23年GW全国公開、Netflixシリーズ「THE DAYS」が23年配信予定。またヴィム・ヴェンダース監督による「THE TOKYO TOILET Art Project」の映画にも出演予定。日本を代表する俳優として活躍している。

「ファミリア」

(2023年1月6日より全国ロードショー)
監督:成島出
出演:役所広司
吉沢亮 /サガエルカス ワケドファジレ 中原丈雄 室井滋 アリまらい果 シマダアラン スミダグスカボ 松重豊 / MIYAVI 佐藤浩市

取材・文=斎藤香 写真=泉三郎 ヘアメイク=勇見勝彦(THYMON Inc.)スタイリスト=安野ともこ  編集=鳥居史(ハルメクWEB)

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ハルメク365編集部

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