夫に反対されつつも心理カウンセラーの資格に挑戦!

50代女性!自分の人生を考えてもう1度学び直したい

公開日:2021.01.02

更新日:2024.03.25

6歳年上の夫と結婚して24年。2人の子育てに奮闘、パートで働いてきたヨウコさん52歳。子どもの独立と夫の定年退職が見えてきたことを機に、心理カウンセラーの資格を取得しようと決意。立ちはだかったのは「何になるの?」夫からのストップでした……。

夫が定年間近。52歳、これから何かを始めるのはもう無理?

夫が定年間近。これから何かを始めるのはもう無理?

いくつになっても「やりたいこと」や「夢」は忘れずにいたいもの。頭ではそう思っていても、実際に50代になると、何かを始める意欲や気力が衰えていると感じることもある。周りの目も気になる。それでもやはり新たな人生をもう一度、考えてみたい。そうやって葛藤を重ねている女性は多いのではないだろうか。

「簡単に言ってしまうと、私、新たな人生を送りたい。そう思うんです。別に離婚したいわけじゃありません。ただ、このまま老いていきたくない。孫ができて、ときどき孫に会ってよかったよかったと言っているだけの人生はイヤだなと思うんです。もちろんそれで幸せな人はいいけど、私は今だからこそ何かを始めたい」

穏やかな口調ながら、どこか思いつめたような目をして、ヨウコさん(52歳)はそう言った。6歳年上の会社員の夫とは、結婚して24年になる。長男は就職して地方に在住、同居している大学生の長女は学業とアルバイトに忙しい。

「うちは今どきの人たちと違って、夫婦が分業でした。夫は外で仕事をして、私は家庭をうまく運営していく。長女が小学生になってからは私もパートで働いて家計を補填していました。そんな人生を後悔したことはありません。でもやっぱり子どもたちはどんどん巣立っていくんですよね。長女も再来年は大学卒業ですから、きっとどこかに羽ばたいていく。うれしいけどさびしいんです」

夫はあと2年で定年となる。その後も仕事はすると言っているが、そのころには夫婦二人きりの生活も見えている。そのままあと30年、二人きりで生きていくのだろうかと思うと、なんだか背筋が寒くなるとヨウコさんは言う。

「平均寿命はあと30年としても、そのうちどのくらいの期間、健康でいられるかはわかりませんよね。だからこそ健康なうちに何かをしたい。そう思うんです」

ただ、ヨウコさん自身、単なる趣味を求めているわけではない。何か仕事につながること、あるいは人の役に立つこと。それが目的だという。

「でも一方で、私自身、今から何かを始めても遅すぎる、ムダな努力やお金を使うくらいなら老後に備えて静かに暮らしたほうがいい。そうも思うんです」

内に秘めた何かがある。だがそれを口に出すのもためらわれる。ヨウコさんからはそんな気配が感じられる。やりたいことはやったほうがいい、やってから考えても遅くはない。

「今さら何がしたいんだ?」と言う夫との間に溝が……

「今さら何がしたいんだ?」と言う夫との間に溝が……

しばらくして、またヨウコさんから連絡があった。

「いろいろ考えて、心理カウンセラーを目指そうと思ったんです。直接、仕事につながらなくても、業界資格をとって誰かの相談相手になれればいいな、と。通信制でもとれるから始めようと思ったんですが、一応、夫に相談したんですよ。そうしたら夫が『今さらそんなことして何になるわけ?』と。そんなお金があるなら老後のために貯めておけとも言われました。やっぱりね、とちょっと思いました。私、ずっとそうやって夫からやりたいことを阻害されてきたから……」

結婚当初、運転免許をもっていなかったヨウコさんが免許をとろうとしたら、夫は「危険だから」と止めた。パートから正社員になる道もあったのだが、「家事はどうするつもりなの?」と夫に阻止された。40代後半で、社会人入試を受けて大学院に行きたいと思ったときも、夫は「大学院なんかいって何になる?」と邪魔をした。

「その時期には、やはり子どもが成人していなかったので私もどこかで自分を納得させてすべて辞めましたけど、もういいでしょ、今ならいいでしょという気持ちだったんです。だけど今度は『もう年なんだからやめておけ』と言う。今までにないくらい反発心がわきました。私がパートで貯めたお金をはたいて受講することにしたんです。夫に内緒で何かを始めるのも、自分のためだけにお金を使うのも私には初めてのできごとかもしれません」

娘の後押しも勇気に!何歳になっても学ぶのは楽しい

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娘は大賛成してくれた。それも彼女の大きな後押しになった。
「いくつになってもやりたいことはやってみるべき、失敗したっていいじゃない」
娘のその言葉はヨウコさんの支えになっている。

「今は夫が帰ってくる前、あるいは朝早く起きて、自分の時間を作って勉強しています。頭が固くてなかなかすんなり前に進めないんですが、それでも勉強するって楽しい。資格がとれたらなんとか人の役に立てたいし、余裕があれば別の勉強もしてみたいですね」
以前と比べてヨウコさんの目が輝いている。

50代になったら、新たに何かを始めることに躊躇している時間はない。やりたいと思ったらすぐにでも始めてみればいいのだ。

「外見の老化はしかたないですが、気力や意欲が老いていくのが怖いんです。夫はずっと仕事をしてきたから、『早くゆっくり休みたい』と思うのかもしれないけど、私はなるべく自分を同じ場所にとどめたくない。少しでも前に進みたい。私が勉強しているのがバレたら、夫はまたそれが何になるんだと言うでしょうけど、もうそういう言葉に惑わされるのはやめようと思っています」

脳はいくつになっても進化すると言われている。新しい刺激に身をさらして勉強しようと思う人は魅力的だ。

※この記事は2021年1月の記事を再編集して掲載しています。

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亀山早苗

東京生まれ。明治大学卒業後、フリーランスのライターとして雑誌記事、書籍の執筆を手がける。おもな著書に『不倫の恋で苦しむ男たち』『復活不倫』『人はなぜ不倫をするのか』など。最新刊は小説『人生の秋に恋に落ちたら』。歌舞伎や落語が大好き、くまモンの熱烈ファンでもある。

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