早期発見で負担を小さく確実に治す!

「大腸がん・胃がん」の検査と最新治療法

公開日:2023.02.08

初期症状が表れづらい大腸がんや胃がん。コロナ禍の検診控えの影響もあってか、早期発見を逃してしまう人が増えています。今回は、定期的ながん検診に加えて受けておくと安心な検査法と、それぞれの最新治療法について、専門医が解説します。

教えてくれた医師のプロフィール

大腸がん 胃がん 検査

がん研有明病院 消化器センター長・大腸外科部長
福長洋介(ふくなが・ようすけ)さん

1987年、大阪市立大学医学部卒業。同大学第二外科、マンチェスター大学ホープ病院リサーチフェロー、大阪市立十三市民病院などを経て、2010年にがん研有明病院・消化器センターに異動。2018年から現職。大腸がんの手術、特に腹腔鏡手術を数多く手掛ける。著書は『よくわかるがん治療 大腸がん』(主婦の友社刊)など。

大腸がん 胃がん 検査

立川病院院長
片井均(かたい・ひとし)さん

1982年、慶應義塾大学医学部卒業。米国テネシー大学メンフィス校研究員、国立がん研究センター中央病院胃外科長、副院長などを経て、2021年から現職。専門は消化器外科、特に胃がんの診断・治療。著書は『国立がん研究センターの胃がんの本』(監修/小学館刊)など。

定期的な検診に加えて、一度受けておくと安心な【検査】とは?

大腸がん 胃がん 検査

大腸がんと胃がんの検診、受けていますか?定期的な検診は早期発見の大前提。コロナ禍で検診控えをしていた方は、タイミングを見てできるだけ早く検診を受けましょう。定期的な検診に加えて、一度受けておくと安心する検査もあります。

大腸がんの【検査】

症状が出てくるのは、がんがかなり進行してからなので、早期発見のためには検診が欠かせません。実際、早期の大腸がんのほとんどが検診で見つかっています。「一番手軽で効果的な検査法が、便潜血検査。極力、毎年受けてほしいですね」とがん研有明病院消化器センター長の福長洋介さん。

がんがあると便が腸内を移動するときにこすれて血液が付着します。検査では目に見えない血液も検知し、死亡率を確実に下げる効果が認められています。結果が陽性なら、さらに内視鏡を使った精密検査を。早期がんを発見するチャンスと捉え、これも必ず受けましょう。

まずは便潜血検査から始めましょう

大腸がん 胃がん 検査

採便用の棒で便の表面をまんべんなくこすり取り、専用容器に入れます。通常、2日分の便を提出します。自治体の検診や企業検診、人間ドックなどで受けられます。

胃がんの【検査】

検診での検査法には胃X検査(バリウム検査)と内視鏡検査があり、「早期がんを見つけるなら内視鏡検査が優れています」と立川病院院長の片井均さん。2年に1回受けておくと安心。より苦痛の少ない、鼻から管を入れる方法も普及しています。

また胃がんになりやすいかどうかを調べる「ABC検診」も一度受けておくとよいそう。血液検査で、ピロリ菌の感染有無と胃液に含まれるペプシノゲンという物質を調べることでリスクを判定します。ピロリ菌に感染していれば、抗菌薬などの服用で除菌します。

「ABC検診」で胃がんの潜在的なリスクがわかります

大腸がん 胃がん 検査

ピロリ菌抗体価検査の陽性はピロリ菌の感染を、ペプシノゲン検査の陽性は胃粘膜の萎縮(老化)を示します。D群は胃粘膜の萎縮が進んでピロリ菌が住めなくなった状態で、最もリスクが高いとみなされます。費用の目安は5000円程度。

早く見つけて確実に【治療】することが最も重要

大腸がん 胃がん 検査

大腸がんも胃がんも、早期の段階なら多くの場合、内視鏡治療でがんを切除できます。早く見つけて、早く治す──。それが最も体への負担が小さく、確実な治療法です。

大腸がんの【治療法】

大腸がん 胃がん 検査

がんがまだ浅い早期がんなら、「内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)」で治療が可能。内視鏡を肛門から大腸に入れ、下の図のように、先端に付いた専用ナイフでがんを剥ぎ取ります。治療時間は1時間程度。5日ほど入院します。

「以前は開腹手術が一般的でしたが、今はより負担の軽い方法で治せるようになりました。ただしESDは難易度の高い治療法なので、経験豊富な医療機関で受けることをおすすめします」と福長さん。

がんの状態がより進んでいる場合は、お腹に小さな穴を開けて行う腹腔鏡手術や開腹手術でがんを取り除きます。

胃がんの【治療法】

大腸がん 胃がん 検査

胃がんの場合も、内視鏡治療が多く行われています。「現在、早期がんの約半数が、ESDなどの内視鏡治療で完治しています」と片井さん。治療は口から内視鏡を入れて、30分ほどで終了。入院は5~7日程度です。

なお同じ早期がんでも、がんが大きかったり、リンパ節転移の疑いがあったりする場合は、開腹手術や腹腔鏡手術が行われます。

「以前なら胃の全部を摘出していたようなケースでも、最近は小さな傷で胃の一部だけを切除し、できるだけ胃の機能を温存できるようになりました。早く見つけて治療するメリットは大きいですね」と胃がん手術を多く手掛けてきた片井さんは言います。

大腸がんも胃がんも早期ならESD治療が主流

(1)がんの下の粘膜下層に生理食塩水を注入し、がんとその周囲を浮き上がらせる

大腸がん 胃がん 検査

(2)内視鏡の先端に付いた専用ナイフでがんの周囲の粘膜を切開する

大腸がん 胃がん 検査

(3)がんと一緒に粘膜下層を剥ぎ取り、体外に回収。切除部分を止血する

大腸がん 胃がん 検査

あわせて、大腸がん・胃がんのセルフチェック発がんリスクを下げる予防習慣もご参考にしてください。


取材・文=佐田節子 イラストレーション=藤原なおこ
※この記事は雑誌「ハルメク」2021年10月号を再編集し、掲載しています。


大腸がん・胃がんについて詳しく知ろう

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