もし明日がんと診断されたら2

お金のプロのがん体験談!お金以上に大切だったこと

公開日:2020.02.25

更新日:2023.03.12

初期の乳がんを克服したファイナンシャルプランナーの深田晶恵さんの体験談を紹介します。がんになったときの備えには、お金以上に大切なものがあることに気付かされたそうです。

初期の乳がんを克服してわかった、お金以上に大切な備え

撮影=品田裕美
撮影=品田裕美

深田晶恵さん (53歳)
ファイナンシャルプランナー。生活設計塾クルー取締役。1967(昭和42)年生まれ。24年間で約4000件の相談を受ける。『定年までにやるべき「お金」のこと』(ダイヤモンド社刊)など。

これまで患者側からお金の相談を受ける立場だったファイナンシャルプランナーの深田晶恵さんが、乳がんと診断されたのは2015年のこと。実際に患者の立場となって、がんになったときの備えには、お金以上に大切なものがあることに気付かされたそうです。

私が初期の乳がんと診断されたのは、2015年の秋。診断を聞いて正直ショックではありましたが、「乳がんは再発・転移をしない限り、すぐに死には至らない」という知識はあったので、悲嘆に暮れることはありませんでした。

高額療養費も利用して治療費を準備

高額療養費も利用して治療費を準備

まず考えたのはやはり、治療費のこと。最初の診断確定と手術前検査の通院にかかるお金は約5万円。入院・手術費は10日ほどの入院で仮に100万円近くかかったとしても、高額療養費を使えば、現役世代の私の場合、食事代の自己負担額(当時1食360円、現在は460円)を合わせて月に約10万円。

加入していたがん保険をあてにしつつも、給付金を受け取れるのは退院から数か月後なので、当座、これらの費用は貯蓄から支払うことに。これまで相談者に高額療養費の存在をお伝えしてきましたが、自分が大病をして、あらためて制度のありがたみを実感しました。

私の場合、手術を終えてからも長い治療が続きました。この術後の治療費の工面こそ重要。再発予防のための抗がん剤投与に1回約2万円、放射線治療は約20万円かかり、1年2か月でトータル70万円近くの医療費がかかりました。とはいえ、治療の種類や期間によりますが、がんの治療費に数百万円もかかるということはほぼありません。保険の利かない個室での入院を希望するなら、治療費+個室代を心積もりしておくといいでしょう。

「看護師さん」ではなく名前で呼んでみる

深田さんの治療中の「バイブル」3冊。「病院から配布される資料を読み込むことが、病気を理解する上で大事」
深田さんの治療中の「バイブル」3冊。「病院から配布される資料を読み込むことが、病気を理解する上で大事」

がんになってみて、お金と同様に、もしくはそれ以上に大事だと気付いたのが「コミュニケーション力」でした。病気に関する知識量で主治医との間にギャップを感じた私は、それを埋めるべく病気のことをとにかく調べ、外来の前後には予習復習。これほど勉強したのは、生まれて初めてでした。命に関わることとなると必死になるものですね。

治療中に外来の予習・復習に使っていたノート。医師の話は赤ペンで書き込まれています。
治療中に外来の予習・復習に使っていたノート。医師の話は赤ペンで書き込まれています。

外来ではノートを用意し、前もって質問をメモ。自分がわからないことを伝えることで医師との信頼関係が深まり、依存せずに治療に向き合えました。

看護師との関係性も大事。「看護師さん」ではなく、名前で呼ぶと私のことも覚えてもらえるようになり、具合が悪かったり、困ったりしたときに、スムーズに助けてもらえました。

治療のつらさから誰かに当たりたくなることもあるでしょうが、人との間に壁をつくってもいいことはありません。「納得できる医療を受けたい」という姿勢を見せることも、患者として大事なことではないでしょうか。

心の支えになった家族

心の支えになった家族

最も心の支えになったのが、やはり家族です。私は、夫と義理の両親との4人家族。夫には診断を受けたその直後、病気のことを正直に伝えましたが、高齢の両親には、夫婦で今後のことを話し合った後に打ち明けました。

私の場合は抗がん剤治療が続いたので、家族が一丸となってサポートしてくれました。普段からお互いによく話をする一家だったからこそ、こうして支え合うことができたように思います。

がんは周囲の協力なしには一人では治せない病です。今日から備えられることがあるとすれば、家族や友人など身近な人たちと積極的にコミュニケーションをとっておくこと。そんな基本的なことではないかと感じています。

がんとわかってから今に至る、5年間の経緯

がんとわかってから今に至る、5年間の経緯

■2015年春
自分で胸にしこりを見つけたが、かかりつけの婦人科医に「脂肪だから大丈夫」と言われる。

■11月
診断・告知。乳がんだった義母の主治医に検診を勧められ、乳がんが見つかる。

■12月
がん専門病院へ転院。リンパ節への転移が見つかる。診断は「ステージⅡ」。

■2016年1月
乳房温存の部分切除手術を受け、11日間入院。

■2月
病理検査の結果により、再発予防のための抗がん剤と放射線治療が決定。

■3月
通院での抗がん剤投与が始まる。

■10月
抗がん剤治療終了。1か月に1度の放射線治療開始。

■12月
放射線治療が終わり、3か月に1度のホルモン治療のみに。

■2020年現在
ホルモン剤の服用継続中。再発も見られず、定期検診は年に1度。

取材・文=小林美香(ハルメク編集部)・清水麻子
※この記事は2018年10月号「ハルメク」に掲載された内容を再編集しています。


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