人生の先輩に学ぶ、生き方と暮らし方の流儀

樹木希林さんの“生かすこと、使い切ること”

公開日:2020.02.25

更新日:2023.09.13

2018年9月に75歳で亡くなった樹木希林さん。5年目を迎える今も、生前の言葉や行動、暮らしぶりは数多くの人に影響を与え続けています。樹木さんと公私ともに親しくされていたという、観世あすかさんの話からは、その片鱗をのぞくことができます。

語ってくれた人

観世あすか(かんぜ・あすか)さん

観世あすか(かんぜ・あすか)さん。幼少期からきものやお茶に親しむ。映画「あん」(2015年)ではプレミアム試写会を企画し、成功に導く。映画「日日是好日」(2018年)ではオフィシャルアドバイザーとしてイベントやフェアを実現。

突然「内田です」と家にやってきて(観世あすかさん)

人生の先輩に学ぶ、生き方と暮らし方の流儀

幼少期から着物やお茶に親しむ観世(かんぜ)あすかさん。樹木希林さんとは約4年前に知り合ったそうです。プライベートでの交流が主でしたが、樹木さん出演の映画「日日是好日」でオフィシャルアドバイザーを務めました。
 

樹木希林さんに初めてお目にかかったのは、私も試写会の運営に携わった映画「あん」(2015年5月公開)の打ち上げでした。お話しするうちに家が近いことがわかり、数日後、突然、「内田です」と我が家にいらしたんです(笑)。一緒に食事へ行き、それ以来、ときどきお互いの家を行き来するようになりました。

希林さんのご家族が不在の際は、食事を差し入れしたことも。食べやすいようにと枝豆を軟らかめにゆでていったら、「硬めの方が好き」ときっぱり。江戸っ子なんですね。

映画「日日是好日」(2018年10月公開)の宣伝に携わったのは、希林さんからのお電話がきっかけでした。私に茶道の知識があることを覚えてくださっていたようで、「撮影前に、私にお茶を教えてちょうだい」と、おっしゃいました(※樹木さんは映画でお茶の先生役)。

それだけに留まらず、「この映画は宣伝費がないから、あなた手伝ってよ」と言って、素人の私を宣伝担当のオフィシャルアドバイザーに抜擢されました。

なぜ希林さんが、私にこんなチャンスをくださったのか。今思うと、私という「素材」を生かせる場がないか、ずっと考えてくださっていたのではないでしょうか。

希林さんは、はぎれ一枚でもどう使うと生かせるかを常に考え、工夫された方。同様に、人にもどう光を当てると輝くかを考え行動されていました。そのために自分を“使い切る”ことをいとわず、結果、物や人が輝き出すのを見ることを何よりの喜びとされる方でした。

シミやシワは、出てきてありがとう

樹木さんの74歳の誕生日をお祝いしたとき(写真提供=観世さん)
樹木さんの74歳の誕生日をお祝いしたとき(写真提供=観世さん)

希林さんはよく、「なんでみんな、シミやシワを取ろうとするのかしら。出てきてありがとう、じゃない?」と言っていました。老いゆく姿も美しいと考えていて、昔から白髪もそのまま。今の白髪ブームの先駆けですね。

老いや病気を受け入れ、身の回りの始末も進められていましたが、実際にがんの余命宣告を受けられてどんなお気持ちだったのか、それは計り知れませんでした。

ただ、2018年の3月にお電話でうかがったのは、「新しい仕事は断る。でも、今まで撮った映画の宣伝はやり抜きたい。あなたにも一生懸命サポートしてほしい」ということでした。実際、それから公開された3本の映画の宣伝に尽力され、最期まで自分を使い切ろうという強いご意思を感じました。
 
希林さんと過ごした時間は短いものでしたが、近くでその潔い生き方を見せていただけたのは、本当に幸せなことでした。人として何が大切か、身をもって教えてくれた心の友です。 

取材・文=長倉志乃、田渕あゆみ(ともにハルメク編集部) 写真=中西裕人
※この記事は、雑誌「ハルメク」2019年2月号を再掲載しています。


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