インタビュー|余命3年と宣告を受けた写真家

幡野広志さん「病気になった今が幸せだと言える理由」

公開日:2019.07.04

更新日:2023.02.10

あなたは自分が、幸せだと言えますか?たとえ治らないがんで余命3年と知っても―。若くして、多発性骨髄腫となった写真家の幡野広志(はたの・ひろし)さん。彼が発信する現代社会で幸せに生きていくための教訓ともいえる言葉に、注目が集まっています。

幡野広志さんとは

※この記事は2019年にインタビューしました。
幡野広志さんのことを簡単にご紹介すると、「36歳の男性」、「職業・写真家」、「妻と3歳の息子とともに暮らす」、「末期がん患者」です。2017年8月、34歳のときにがんが発覚し、本人の言葉で表現すると“治らない方の、がん”である多発性骨髄腫で余命3年と告知されました。

幡野さんが世間の注目を集めるきっかけになったのは、2017年12月26日にがんであることを公表した「ガンになって気づくこと。」と題したブログの投稿です。

僕、ガンになりました。

父をガンで亡くしているので、自分もガンになるだろうとは思っていたけど34歳は早すぎる気がする。

背骨に腫瘍があり、腫瘍が骨を溶かすので激痛と神経を圧迫しているため下半身に軽い麻痺も起きている。

自殺も頭の片隅に考えるぐらいの激痛で夜も眠れず平常心を保てなかった。

緩和ケアの医療スタッフと強力な鎮痛剤を開発してくれた研究者のおかげで今は穏やかに暮らせている。

妻と結婚してどう控えめに言ってもかわいい息子に恵まれ、病状を知り涙してくれる友人がいる。

社会人とは思えないほど長期休暇を取って広く浅い趣味に没頭し、好きなことを仕事にした。

幸せの価値観は多様性があり人それぞれだけど、僕は自分の人生が幸せだと自信を持って言える。

だから死と直面していても後悔はなく、全て受け入れているので落ち着いている方だと思う。

それでもガンと診断された日は残される家族のことを想い一晩泣いた。

もしも自分の妻や息子がガンになり苦しんでいたら正気を保てないと思う。

自分の苦しみは耐えることができても、自分の大切な人の苦しみというのは耐え難い。

そういう意味で気丈に耐えている妻と母には感心する。

(以下略)

――2017年12月26日投稿「幡野広志のブログ」より

いつか自分が亡くなったとしても息子への愛が伝わるように、毎日息子の写真を撮影しているという幡野さん。この日のブログは「いい写真ってなんだろうという答えが見つかったら、生きるってなんだろうって疑問が湧いてきた。せめてこの疑問の答えを見つけてからしっかり死にたいところ」と、死を目の前にして生きる意欲を示す言葉で締められています。

このブログの投稿以来、がん患者としての心境を正直に吐露する言葉だけでなく、幡野さんの発信する“人生の幸せ”の本質を突く発言が、若い世代を中心に支持を集めています。そして2019年6月には、著書として2冊目となる『ぼくたちが選べなかったことを、選びなおすために。』がポプラ社から刊行されました。

「ぼくたちが、選べなかったことを選びなおすために」幡野広志/ポプラ社刊 1500円(本体)
「ぼくたちが、選べなかったことを選びなおすために」幡野広志/ポプラ社刊 1500円(本体)

本書は、がんと告知されてから変わった、幡野さんを取り巻く環境と自身の心境がつづられているほか、家族が理由で生きづらさを抱える人たちへの強いメッセージが込められています。

最初にお断りをしますと、幡野さんをかわいそうな人だと思わないでください。なぜなら、先ほどのブログの一節にもあるように「僕は自分の人生が幸せだと自信を持って言える」と宣言しているからです。また本書でも、次のように述べています。...

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