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- 「大腸がん・胃がん」は早く見つけて必ず治す!
40代以降からかかる人が多い消化器がん。中でも大腸がんは、死亡数1位です。しかし、早期発見ができれば、怖い病気ではありません。がんの発見が遅れるのはこんな人「セルフチェック」をやってみましょう。併せて基礎知識を専門医が解説します。
発見が遅れる前に!【セルフチェック】
あなたは定期的に検診を受けていますか?負担の少ない治療は、早期発見が条件。こんな人は特に注意が必要です。
- がん検診を2年以上受けていない
- 精密検査をすすめられているけれど受けていない
- 胃のもたれや便秘など胃腸の不調があるが、病院に行っていない
- ピロリ菌の検査を受けたことがない
40代、50代からは「大腸がん」「胃がん」にご用心!
毎年多くの人が命を失う消化器がん。でも早期発見ができれば、怖い病気ではありません。ですが、コロナ禍での受診・検診控えが影響して、がんが進行してから見つかるケースも増えているといいます。
50代を過ぎたら特に気を付けておきたいのは、大腸や胃、肝臓、膵臓などの消化器のがんです。女性の場合、これらのがんは年齢が上がるにつれて増加。"消化器がん"としてまとめて見てみると、罹患数はがん全体の4割近く、さらに死亡数では半数以上を占めています。
部位別がん罹患数(全年齢の女性/2018年)
部位別がん死亡数(全年齢の女性/2019年)
中でも年々増加しているのが、大腸がん。「女性の罹患数は乳がんに次いで2位、死亡数は1位です。急増の原因には、食生活の欧米化や高齢化などがあります」と、がん研有明病院消化器センター長の福長洋介さんは話します。
また胃がんも侮れません。「罹患数、死亡数ともに4位。以前に比べると減りましたが、それでも女性の約20人に1人がかかっています。特に65~80歳の方は発症リスクが高くなりますから、要注意です」と、胃がん手術を多く手掛けてきた立川病院院長の片井均さんは注意を促します。
早期発見を逃している人が増えている理由
がんは早期発見、早期治療が第一ですが、実は最近、心配なことが起こっていると言います。「ここ数年コロナ禍での検診控えの影響などもあり、早期の胃がんが見つかる人が大幅に減っています」と片井さん。大腸がんの現場でも、「最近、進行がんの患者さんが増えている印象があります」と福長さん。
過去にコロナ禍での行動自粛から、がん検診を控えていた、精密検査をすすめられているのに先送りしている、気になる症状があるのに放っていた……。その間にがんが進んでしまった可能性があるのです。
「例えば胃がんの場合、早期がんを放っておくと2年間で約2割が進行がんになります」と片井さんは話します。
早期のがんなら生存率は100%近い
大腸がんも胃がんも、早く見つけて適切な治療を受ければ、完治が可能です。大腸がんの場合、がんの深さが浅い早期がんなら、5年生存率は94~97%。胃がんの場合も96%と報告されています。
また早期がんだと内視鏡治療で治すことができるので、心身の負担も軽くて済みます。
グラフのように、がんが粘膜層や粘膜下層にとどまっているステージ0期やⅠ期の早期がんなら、治療で完治が望め、5年生存率は100%近いことがわかります。
半面、発見が遅れてがんが進行すると、5年生存率はグッと低下します。がんが全身に転移した段階では、大腸がんが19%、胃がんが6%と、厳しい現実を突きつけられることになるのです。
がんの進行度が上がるほど生存率は低下するので、早く見つけて早く治療することが何より重要なのです。
「大腸がん」になりやすい人と初期症状
大腸がんと胃がんは初期のうちは症状がほとんどありませんが、気を付けたいサインはあります。便秘や胃もたれなどの不調が続く人は要注意。食生活やピロリ菌の感染も危険因子になります。
大腸は全長1.5mほどあり、水分を吸収したり、便を作る働きを担っています。大腸がんは、結腸と直腸にできるがんの総称です。
どんな人がなりやすいの?
40歳以降、加齢とともにかかる人が増えてきます。過度の飲酒、肉類や脂肪分のとり過ぎ、喫煙、肥満、便秘、運動不足、家族歴などが発症リスクになるといわれています。
「女性は便秘の人が多いので、注意してください。便が腸内に長時間とどまると、発がん物質が粘膜に触れ続ける可能性があり、発症リスクが上がると考えられます」と福長さんは話します。
大腸がんの約6割は、肛門に近いS状結腸と直腸に発生。大腸の粘膜にできたキノコのような良性のポリープががん化する場合と、正常な粘膜に直接がんが発生する場合があります。
どんな症状が出るの?
初期のうちは、ほとんど症状がありません。進行すると血便や下血、下痢と便秘を繰り返す、便が細くなる・出にくい、残便感、腹部膨満感、腹痛、腹部のしこり、貧血、急激な体重減少などの症状が出てきます。
「胃がん」になりやすい人と初期症状
胃がんは、胃の粘膜の炎症が長期間続く慢性胃炎から発生することが多いものです。
どんな人がなりやすいの?
主原因の一つがヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)。子どもの頃に感染すると数十年かけて慢性胃炎を引き起こし、胃がんの発症リスクを高めます。60歳以上では6~7割の人が感染していると指摘されています。
喫煙者や塩蔵品を多くとる人も要注意。「タラコなどの塩蔵品は、塩とアミノ酸が結びつき体内でニトロソ化合物という発がん物質を発生させます」と片井さん。
食べたものを2~3時間ためて消化し、十二指腸に送り出すのが胃の働き。胃がんができやすいのは、幽門を含む下から3分の2の場所で、全体の8割を占めます。
どんな症状が出るの?
初期では、ほとんど症状はありません。ただ早期がんで見つかった約半数の人が、胃もたれや食欲不振など胃の不調を覚えていたとの報告も。「がん自体の症状ではなく、ピロリ菌が原因の症状と考えられます。最近、胃の調子が悪いという人は、受診してピロリ菌感染の有無も調べてもらうと安心です」(片井さん)
さらに、大腸がん・胃がんの検査&最新治療と発がんリスクを下げる予防習慣についても解説していきます。
教えてくれた医師のプロフィール
がん研有明病院 消化器センター長・大腸外科部長
福長洋介(ふくなが・ようすけ)さん
1987年、大阪市立大学医学部卒業。同大学第二外科、マンチェスター大学ホープ病院リサーチフェロー、大阪市立十三市民病院などを経て、2010年にがん研有明病院・消化器センターに異動。2018年から現職。大腸がんの手術、特に腹腔鏡手術を数多く手掛ける。著書は『よくわかるがん治療 大腸がん』(主婦の友社刊)など。
立川病院院長
片井均(かたい・ひとし)さん
1982年、慶應義塾大学医学部卒業。米国テネシー大学メンフィス校研究員、国立がん研究センター中央病院胃外科長、副院長などを経て、2021年から現職。専門は消化器外科、特に胃がんの診断・治療。著書は『国立がん研究センターの胃がんの本』(監修/小学館刊)など。
取材・文=佐田節子 イラストレーション=藤原なおこ
※この記事は雑誌「ハルメク」2021年10月号を再編集し、掲載しています。
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