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- 長谷川博己!監督との対話を重ねた役づくり
長谷川博己さんが主演する映画「はい、泳げません」は、カナヅチの哲学者が水泳を学ぶことで、過去の悲劇を乗り越え人生の再スタートを切る物語。映画、ドラマ、舞台と幅広く活躍している長谷川さんに役作りと年を重ねていくことへの変化などを伺いました。
実はコメディではない!カナヅチの哲学者が水恐怖症を克服していく物語
映画「はい、泳げません」は、実にユニークな人間ドラマです。大学で哲学を教えている小鳥遊(たかなし/長谷川博己)の悩みはカナヅチなこと。水が怖くて仕方がないのです。その彼がコンプレックス克服のために水泳教室に通うことに。水泳コーチの薄原静香(綾瀬はるか)の「必ず私が泳げるようにします!」という言葉を信じて入会した小鳥遊は、水泳を学ぶことで封印していた過去と対峙し、悲劇を乗り越えるきっかけを掴むのです。
主演の長谷川さんに、本作で演じた一風変わった小鳥遊の役作りや撮影の裏側などから話を伺いました。
――映画「はい、泳げません」、とても楽しく拝見しました。最初はコメディ映画だと思っていたのですが、人生について考えさせられる作品ですね。脚本を読んだときの感想を教えてください。
長谷川博己さん(以下、長谷川博己)
人が生まれ死んでいくことや、生きる意味を考えさせられる脚本でした。同時に、水の中のやさしさ、怖さ、そこに身を委ねることで見えるものがある、不思議な感動をもたらす物語だと思います。
――長谷川さんは小鳥遊について、どういうキャラクターと捉えて役作りをされたのでしょうか?
長谷川博己
今回の役は、あまり作り込まない方がいいのではないかと思いました。自分の知り合いに小鳥遊のようなキャラクターの人がいたので、参考にしつつ、考えすぎないようにして撮影に入りました。
演じながら小鳥遊という主人公を変化させていく
――渡辺謙作監督とは、たくさん話し合って役を作っていったそうですが、撮影現場ではどのような感じだったのですか?
長谷川博己
渡辺監督は、前半と後半をガラリと変えていきたいとおっしゃったんです。それと同時に小鳥遊の演技も、最初は軽やかにわかりやすく、後半はシリアスを強めていってほしいと言われました。
――確かに導入部はコミカルですが、小鳥遊さんの過去が見えてくるにつれて、彼が過去にとらわれ、苦しんでいることがわかります。
長谷川博己
ええ。でも、実際に撮影をしていくと、小鳥遊の変化を描くのにそれでは矛盾が生じるところが出てきたので、その度に監督と話をしながら進めていきました。結果としてその変化は自然に流れる形でスクリーンに出ていると思います。
――演じることで、役に血が通い、変化していくのですね。
長谷川博己
普段は役のことで監督と意見を交わすことは少ないのですが、この作品は、渡辺監督の方から「一緒に小鳥遊を作っていきましょう」とおっしゃってくださったので、話し合いながらキャラクターを作り上げることができました。
とはいえ、やはり大変な作業でした。監督はこの映画の脚本も書いているので、ご自身の考える小鳥遊像があり、思い入れも強かったと思います。僕自身にも脚本を読んで感じた小鳥遊があり、当然その見方で違った部分は出てきますが、その中で役の一貫性は損なわれないよう常に気を配りました。
撮影現場で細かく考えた演技が実を結んだ作品
――出来上がった映画をご覧になった感想は?
長谷川博己
僕が偉そうに言うのもなんですが、うまく物語が流れて、いい感動を生み出していたと思います。もちろん、結末も知っていますが、それでも感動できるし、面白いパートは素直に笑えましたから。
小鳥遊の水恐怖症や過去の出来事など、さまざまなエピソードが物語の中できれいに成立していたので、撮影中にいろいろ考えたことを思い出し「あんなに細かく考えなくてもよかったのだろうか。いや、考えたからこそうまくいったのかもしれない」といろいろな思いが脳裏をよぎりました。渡辺監督の映像手腕もあいまって、良い作品になったと思います。
長谷川博己(はせがわ・ひろき)
1977年、東京都出身。2002年に舞台「BENT」でデビュー。その後「ヘンリー六世」(10年)など数々の舞台で活躍。08年から映画やテレビドラマなどに活動の場を広げていく。「セカンドバージン」(10年/NHK)で話題を集め、「鈴木先生」(11年/テレビ東京)でドラマ初主演。そのほか「家政婦のミタ」(11年/日本テレビ)、朝の連続テレビ小説「まんぷく」(18年/NHK)、大河ドラマ「麒麟がくる」(20年/NHK)など。スクリーンデビューは「セカンドバージン」(11年)。ほか「シン・ゴジラ」(16年/日本アカデミー賞優秀主演男優賞受賞)など。
「はい、泳げません」
(2022年6月10日(金)TOHOシネマズ 日比谷 ほかにて全国ロードショー)
監督・脚本:渡辺謙作
出演:長谷川博己/綾瀬はるか
伊佐山ひろ子 広岡由里子 占部房子 上原奈美/小林薫
配給:東京テアトル、リトルモア
コピーライト:C2022「はい、泳げません」製作委員会
取材・文=斎藤香 写真=泉三郎 編集=鳥居史(ハルメクWEB)
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