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- 脳出血 目覚ましい回復 そして一時帰宅へ
40代でC型肝炎が発覚。22年間の闘病と新薬での完治後、明るい未来へ心を弾ませていた私に脳出血という次なる病がー。その時の体の状況や家族の支えなどを振り返ります。今回は一時帰宅に向けての訓練を綴ります。
タコ状態からの脱却
左視床下部の出血によって麻痺した右半身は、SCU(stroke care unit)にいる間(10日間)は全く動きませんでした。また、動かそうという意思もありませんでした。車椅子に乗せてもらっての移動のたび、タランと横に垂れた右腕を「ハイ、ひざの上に載せて! 巻き込まれたら骨折しますよ」と、介護士さんに何度も注意されていたのを思い出します。
理学療法の担当は最初、若くてかわいい女性でした。SCUの病室を訪れ、血圧と体温が落ち着いている日には徐々にベッドを起こして体を支える練習から始めてくれました。車椅子への乗り移り、トイレでの便座への移動と車椅子への戻り、車椅子からベッドへの戻りの訓練も、優しい言葉かけとともに進んでいきました。
補助してもらいながらも車椅子への移乗、トイレでの排泄、ベッドへの戻りができるようになる頃には、フニャフニャのタコ状態から脱却し、自分で車椅子も操れるようになっていました。そうして、SCUから回復病棟へ移ることになったのです。
お正月はどうされますか?
これを機に、担当の理学療法士さんの交代がありました。優しい女性から、がっしりとたくましい男性へ。彼は、安定した杖歩行ができるようになるまで、毎日回復病棟の病室に迎えに来て、リハビリテーション室への移動に付き添いながら回復の度合いをチェックしてくれました。
リハビリテーション室での、腰かけた状態からの立ち上がりや安全に座る練習。平行棒を使って足を前へ一歩ずつ進める練習。そして、杖歩行から杖なし自立歩行の訓練etc。それは、土日も祝日も、休みなく毎日続けられました。
その甲斐あって前回触れたように2016年12月13日、ついに歩くことができたのです。
2016年も押し詰まった12月のある朝、回診に来られた主治医の先生がこう私に尋ねられました。「harumatiさん、お正月はどうされるんですか、いつお家に帰られますか」と。さらに自立歩行に向けて、懸命のリハビリに取り組んでいた私は、年末年始も病院で過ごすものだとすっかり覚悟を決めていたので、その言葉に驚き、返事ができませんでした。
一時帰宅へ
その日の午後のリハビリテーションの時間、私は嬉々として理学療法士さんに尋ねました。
「お正月に、私、自宅へ帰れるんですか」
「そりゃあ無理でしょう。手すりも何もついていない家で過ごせないでしょ」
途端に私の目から涙が溢れて、止まらなくなりました。―お正月も帰らず、リハビリをがんばる―と決めてはいたものの、入院生活は優に50日を超えていたし、その上インフルエンザの流行による面会制限もあったので、無意識のうちに人恋しさ、家恋しさが募っていたのでしょう。
そんな私の様子に面食らいながらも、彼はこう言いました。
「分かりました。考えてみましょう」
翌日、主治医の先生が病室を訪れ「惑わせるようなことを言ってしまってごめんなさい。先日、泊まりなしで一度帰られたのでしたね。手すりをつけたりするのは間に合わないけれど、家で2泊できるかどうか、検討しましょう」と、言ってくださったのです。
それから数日間、一時帰宅に向けていっそう気合の入った歩行訓練が行われました。「かかとから着いて、つま先で蹴る!」「もっとゆっくり、骨盤に体重をしっかり乗せてから次を踏み出す」「今度は、もっと大股で!」ナースステーションの回りを何周もしました。初めて回復病棟のある4階から3階への階段の上り下りも練習しました。
そして、年の瀬が迫る12月26日、理学療法士さんと作業療法士さんが我が家を訪れ、トイレやお風呂の使い勝手を確認しながら、1日の流れに沿って具体的なアドバイスをしてくれました。
こうして、2016年の大みそかの夜、新しい年を家族で迎えるべく、自宅へと戻ったのでした。
次回は作業療法のこと、そして、いよいよ退院へと書き進めていきたいと思います。
■harumatiさんの闘病記一覧はこちら
第1回 私のC型肝炎治療記 その1
第2回 私のC型肝炎治療記 その2
第3回 私のC型肝炎治療記 その3
第4回 人生の設計図を書き直す日 その1
第5回 人生の設計図を書き直す日 その2
第6回 人生の設計図を書き直す日 その3
第10回 脳出血 目覚ましい回復 そして一時帰宅へ
第11回 いよいよ退院へ~維持期のリハビリは自宅でしたい!~
第13回 退院後の紆余曲折を経て、生み出した自分流
第14回 1本の電話から始まった新しい歩み
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