発症から3か月、維持期に入る頃退院へ。しかし……

2019年03月05日

退院へ向けて準備開始!

発症から3か月、維持期に入る頃退院へ。しかし……

40代でC型肝炎が発覚。22年間の闘病と新薬での完治後、明るい未来へ心を弾ませていた私に脳出血という次なる病がー。その時の体の状況や家族の支えなどを振り返ります。今回は退院準備について語ります。

発症から2年~旅も楽しめる私に~

2018年10月25日から29日まで4泊5日の旅に出た。

行き先は淡路島……明石海峡大橋が開通した1998年から実家の母が亡くなる2007年までの9年間に、何十回となく通過した島。母の四九日法要の夜、翌日次女の出産手伝いのために関空からシンガポールへすぐ飛び立てるようにと、1泊した島。

そんな淡路島を、今回はのんびりと訪れた。自炊方式アコモデーションに1泊した翌日、鳴門海峡大橋を渡って徳島県鳴門市にある大塚国際美術館へ行った。行く途中で「身障者用の駐車場はありますか」と電話した。「はい。駐車場まで行かずに、直接正面玄関にお越しください。ガードマンがご案内いたします」との快い返事。

果たして、 正面玄関に直接車で乗り付けるや否や、ガードマンが駆け寄り、「そのまま建物の中に入り地下にお進みください。次のガードマンがご案内いたします」と。

1時間の「ゆったりツアー」に参加した。車椅子利用者や杖歩行者に合わせてゆっくりした歩み。ショートカットで人混みを避けて進み 、椅子に腰かけて丁寧な説明を聞く。夢のようなひと時だった。

「ひきこもりさえしなければ、70歳になる頃には、普通のおばあさんになれますよ」と仰った脳神経外科の先生の言葉が、喜びと共に蘇る。
 

 

大塚美術館。光とともに変化する作品を作りたいというモネの願いを、実物以上に実現した陶板の睡蓮。
ここにも生命力を感じさせてくれる姿が。
淡路島西浦の海に揚がった魚を食べさせる店。

 

話は戻って2017年1月中旬-進む退院準備

「入院から3か月経つ、2017年2月3日に退院したい」と、理学療法士さんと作業療法士さんに申し出てから半月。退院に向けての準備が急速に進んでいきました。

まずは体力作り。理学療法士さんと共に病院の外へ出て歩く練習。「私が歩いていますよ。誰もぶつからないでね。話しかけないでね」状態でしたが、「harumatiさんは、こけないように訓練してきましたからね。それに僕がついています。リラックスして歩きましょう」と理学療法士さん。これまでの厳しさはどこへやら、優しく励ましてくれました。

作業療法では、ドライビングシミュレーターを使って車の運転にもチャレンジしました。交通の便が悪い田舎に住む私にとって、運転は最優先の課題でしたが、「言語療法のテストでは判断力に課題はないとのことだったけれど、シミュレーターで見る限り、実際には見落としが多い」ということで取りやめになってしまいました。また、書字訓練は、指と腕の震えのためなかなか進まず、通院リハビリの課題として残されました。今まで当たり前だった字を書くということが、実は緻密な手の動きを要する高度な作業なのだということを思い知らされました。大学を出たばかりの若い作業療法士さんが自らモデルとなり、自宅での自主リハビリのためのメニューを作ってくれました。
 

退院時に持たせてもらった自主トレメニュー

 

この頃とてもお世話になったもう一人は、病院のケアーマネージャーさんです。入院した当初からケアーマネージャーさんが、度々病室を訪ねて来てくださっていたのですが、長い間朦朧状態から抜け出せないでいた私は、正直なところ、その方が何のために病室を訪れ、私から何を聞こうとされているのかが、全く分からなかったのです。

いざ退院という運びになって、ようやくケアーマネージャーさんの役割が見えてきました。私が住む町の役場に連絡を取り、2017年1月17日、役場のケアーマネージャーさん、病院の理学療法士さん、作業療法士さん、それに施工業者の方、総勢5人が自宅に集まれるように段取りをし、介護保険を利用しての住宅改修にすぐに取り掛かれるようにしてくださったのです(実際には4か所に手摺を付けるだけで済んだのですが)。
 

喜びあふれて退院―現実は甘くなかった!

こうして退院の準備が整い、冬晴れの青い空がキラキラと輝く2月3日、玄関の階段や上がりかまちに手すりが取り付けられた我が家に帰ってきました。1階の和室には、夫と息子の手によってベッドが運び込まれ、臨時の寝室が設えられていました。ダイニングのテーブルには、アメリカの娘たちから送られた花とメッセージカードが飾られていました。~これが我が家、我が家なのです~

ゲスト用のソファベッドを夫と息子で2階から1階まで運び、当座の心地よい寝室を設えて迎えてくれました。
 ダイニングのテーブルには娘たちからの花とメッセージが。

 

その日の夕食は、チーズフォンデュ。倒れた日、私自身が夕食に作ろうとしていたメニューを、夫と息子が準備してくれていました。地元の友人が「節分だから」と手作りの恵方巻きを届けてくれました。夕方には夫のふるさとのボランティア仲間から「会いに行く」と電話があり、翌日昼食持参でお見舞いに来てくれました。

そんな中、張り切った私は、立ったり座ったりもままならないのに、早速病院から持ち帰った荷物を整理したり、臨時に設えられた寝室をお気に入りにアレンジしたり……。

退院からたった3日にして、ひどい悪寒に震え39度を超える発熱を繰り返すようになり、これまでのリハビリの成果はどこへやら、再びトイレにさえ自力では行けなくなってしまったのです。

次回は、退院後の紆余曲折から学んだことについて書きたいと思います。


■harumatiさんの闘病記一覧はこちら

第1回 私のC型肝炎治療記 その1

第2回 私のC型肝炎治療記 その2

第3回 私のC型肝炎治療記 その3

第4回 人生の設計図を書き直す日 その1

第5回 人生の設計図を書き直す日 その2

第6回 人生の設計図を書き直す日 その3

第7回 C型肝炎完治から21日後、脳出血に襲われ

第8回 「かむい、かむい」-。脳出血急性期の入院生活

第9回 歩くことが難しい! 回復期のリハビリテーション

第10回 脳出血 目覚ましい回復 そして一時帰宅へ

第11回 いよいよ退院へ~維持期のリハビリは自宅でしたい!~

第12回 発症から3か月、維持期に入る頃退院へ。しかし……

第13回 退院後の紆余曲折を経て、生み出した自分流

第14回 1本の電話から始まった新しい歩み

harumati
harumati

45歳~66歳までC型肝炎と共生。2016年奇蹟とも思える完治から、今度は脳出血に襲われ右半身麻痺の大きな後遺症が残り身体障害者に。同居する息子と夫に家事を任せての暮らしにピリオドを打ち、2021年11月「介護付き有料老人ホーム」に夫と入居。「小さな暮らし」で「豊かな生活」を創り出そうと模索中です。

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