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- 女優・寺島しのぶ!老いていく自分を笑い飛ばしたい
女優・寺島しのぶさんは映画「Arc アーク」で、ボディワークス制作の第一人者・エマを演じています。映画制作秘話、そしてご自身のライフスタイルなどについてお話を伺いました。
遺体を生きているように保持するボディワークス制作の天才・エマを熱演
映画「Arc アーク」は人類で初めて永遠の命を得て、若い身体のまま生き続けるヒロイン、リナ(芳根京子)の長い人生の旅を描いた驚きと感動のエンターテインメント。「老いることへの否定」と「死があるからこそ生が輝く」という正反対の思想を両軸に、現代社会につながるテーマとして描いた、とても興味深い作品です。
この映画で、遺体を生きているままの状態で保持するプラスティネーション技術を駆使した「ボディワークス」を制作する、リナの師となる女性・エマを演じた寺島しのぶさん。
とても難役だったと思いますが、寺島さんが演じたからこそ、説得力のあるキャラクターになりました。そんな役の話から、本作のテーマでもある「年を重ねること」の話まで語っていただきました。
―ヒロインのリナを見出し、彼女にプラスティネーションの技術を伝授する役でしたが、寺島さんがこの役のオファーを受けたときのことを教えてください。
寺島しのぶさん(以下、寺島しのぶ)
最初に脚本を読んだときはよくわからなかったのですが、石川慶監督と会って、お話を聞いて出演を決めました。監督の頭の中にはイメージがしっかり描かれていて、理路整然とわかりやすく説明をしてくださって、決して「なんとなくこんな感じ」というあいまいさがなかったんです。だから、「監督はきっと私を正しい方向へと導いてくれる」と思い、信じてついていこうと思いました。
―実際に役作りはどのようにされたのですか? エマさんのキャラクターは難しかったのでは?
寺島しのぶ
エマは、最愛の人を亡くした人々のために、遺体を生きているままの状態で保持するプラスティネーション技術を使って「ボディワークス」を作っている女性。彼女自身も最愛の親友を失って、そのことをずっと引きずって生きています。そんなエマの気持ちを大切に思いながら演じました。
自分の出演作はすぐに見られないタイプ!?
―エマがボディワークスを制作する会社は、アートな空間で、ヴィジュアルがとても素敵でした。
寺島しのぶ
撮影現場はとにかく美術が素晴らしかったですね。エマはボディワークス制作の天才なので、彼女の部屋のセットなど、見たことのない不思議な光景でした。作られた手や脚がいくつもあり、そこにパイプを通したりして、この映画に出演しなかったら決してやることのない作業をやらせていただけて、とても面白かったです。
―あとエマのストリングス糸と人体によるプラスティネーションの作業は、舞踏のようでした。
寺島しのぶ
あのプラスティネーションのシーンがエマの最大の見せ場だったので、振付師さんにいろいろと指導していただきながらがんばりました。遺体役のダンサーと私の呼吸をきちんと合わせないとうまくいかないので、間合いの取り方など勉強になりました。感情だけでなくフィジカルな面もとても重要な役でしたね。
―実際に完成した映画をご覧になった感想は?
寺島しのぶ
実は見ていません。自分の出演作は、演技の粗ばかり目立ち「どうしてこういう芝居をしたんだろう」と思ってしまい、物語に集中できないから、公開時すぐには見ないんですよ。でも私の出演作を見てくださった方の感想を聞くのはとても好きです。
出演作を自分と切り離して冷静に見られるのは数年たってからですね。最近になって、2007年の出演作「愛の流刑地」をやっと見られました。「Arc アーク」も観られるようになるのは何年かたってからになりますが、必ず見たいと思っています。
老いていく自分を笑い飛ばせるくらい余裕と自信を持ちたい
―この映画が描いている「不老不死」の世界はフィクションですが、人生100年時代に突入している現代、決して切り離して考えられないのではないかと思いました。
寺島しのぶ
そうですね。近未来に本当に可能になるかもしれないし、みんなが長生きできる時代は、そう遠くないとも感じます。ただ、それを自分に投げかけたとき、そこまでして長生きしたいかなという疑問もありますね。
この映画は永遠の命を描き、リナは若い姿のまま年を重ねていきますが、果たしてそれでいいのかしらと思うんです。日本は何歳になっても若々しくて美しいことを良しとしますが、私は年の取り方がキレイであればいいんじゃないかな思います。「素敵なシワだわ」とか「私も年を取ったものね~」なんて、老いについて笑い飛ばせるような、そんな余裕を持ちたい。自信を持って生きていきたいですね。
寺島しのぶ(てらじま・しのぶ)
1972年、京都市生まれ。高校在学中にドラマ「詩城の旅人」で女優デビュー。2003年映画「赤目四十八瀧心中未遂」で第27回日本アカデミー賞最優秀主演女優賞、「ヴァイブレータ」では東京国際映画祭女優賞を受賞。2010年「キャタピラー」で、ベルリン国際映画祭の銀熊賞(最優秀女優賞)を受賞。2018年「OH!LUCY!」で、インディペンデント・スピリット賞主演女優賞候補になった。最新作に山田洋次監督作「キネマの神様」がある。
「Arc アーク」
(2021年6月25日公開)
監督:石川慶
出演:芳根京子、寺島しのぶ、岡田将生、清水くるみ、井之脇海、中川翼、中村ゆり/倍賞千恵子/風吹ジュン、小林薫
(C)2021映画『Arc』製作委員会
ヘア&メイク:片桐直樹(EFFECTOR)
スタイリング:中井綾子(crepe)
取材・文=斎藤香 写真=泉三郎 編集=鳥居史(ハルメクWEB)
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