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- 103歳、義母と歌う「夕焼け小焼け~♪」
義母は103歳
姑は103歳。もう誰のことも認識できないのですが、山あいにある施設で人生の終わりを静かに歩んでいます。
先月には医師と施設の担当の方から終末はどうするかと、書類に記名捺印するという重大な局面になりました。103歳ですから夫にも十分わかっていることですが、重い決断になったようです。
そして夫が施設に見舞いに行くと、義母はほほ笑んで布団の中の手を振ってくれたそうです。
その翌日、施設から「昨晩は呼吸が薄れてきましたが、今は持ちこたえています。急変したらすぐに連絡します」との電話を受けました。
仕事が終わってから、私はバスを3回乗り継いで義母のいる施設に向かいました。鬱々と眠っている時間が長くなっているのですが、その時はちょうど目を開けていました。私の顔を見るとにっこりほほ笑んで口を動かしています。入れ歯を外しているので声はわかりませんが、施設の人が「ありがとう」を繰り返しているのですよ、と教えてくれました。
手のひらで私の手を何度もたたき、ニッコリ笑っています。義母は若い頃から歌が大好きでした。
夕焼け小焼けで日が暮れて~♪と、私が歌い始めると口を動かして歌っているのです。手のひらは私の手の上でリズムを取っているかのようです。施設の方もみなさん部屋を見に来て「おやまぁ、歌っているのですね。すごいすごい」と入れ代わり立ち代わり……。男性職員が動画を撮影してくれました。
いつもは虚ろな義母なのですが、この時ばかりはシャキっとしてほほ笑み、歌っているのです。嫁が来たから少しはがんばらないと、カッコいいところを見せてくれたのかもしれません。
嫁と姑
嫁いだ時から数え上げればいろいろなことがありました。でも、穏やかな義母のほほ笑みを見たら「全部、無かったことにしてみよう」と心から思える時間です。
私はあまり人さまから嫌われたことも無かったので、嫁いでからの仕打ちはなぜここまで嫌われるのだろうと、理不尽な思いに悩んだこともありました。でも時間がすべてを穏やかな流れに変えてくれるものだと実感できる時になりました。一緒に歌った夕焼け小焼けの歌は、すべてを越えてくれました。
命をゆだねる
命を、生活のすべてを、衣食住を人にゆだねて生きる日々を過ごす義母の心はどのようなものなのだろう。私もその時が来たら理解するのだろう。人に命をゆだね、任せきり、命の刻を静かに歩んでいる義母の姿に別れを告げて帰路につきました。
義母のこの先の、たぶん長くはないであろう日々が穏やかでありますようにと祈らずにはいられません。
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