50代以降も快適に!脳の不調との向き合い方#2
脳の不調を引き起こすNG行動!機能低下で起こる「感情失禁」とは?
脳の不調を引き起こすNG行動!機能低下で起こる「感情失禁」とは?
更新日:2025年03月09日
公開日:2025年03月02日
不調をもたらす「脳の3つの機能の低下」とは?
前回の記事では、「脳のコンディションチェックリスト」を紹介しましたが、結果はいかがだったでしょうか?
今回は、脳のコンディション低下がもたらす不調と、その原因を解説していきます。
脳のコンディションには、次に挙げる脳の3つの機能が大きく関わっています。これらの機能が低下すると、何が起こるのか? 日常生活に及ぼす影響とともに見ていきましょう。
脳の機能1「決定・遂行」
物事を判断し、進める機能。目標を設定し、そこまでのプロセスを計画し、適切な問題解決を行い、意思決定をし、それを効果的に実行していきます。
【この機能が低下すると……】
- 要領が悪くなり、業務に時間がかかる
- 優先順位が決められない
- 見通しを立てて行動できず、納期に遅れる
- 一つ一つ指示されないと行動できない
- 臨機応変に対応できない
脳の機能2「社会的認知」
他者とかかわる機能。他人とコミュニケーションをとり、社会生活を営むために必要な認知機能で、これにより人に共感し、モラルに沿った適切な振る舞いができるといえます。
【この機能が低下すると……】
- 他人の気持ちがわからなくなる
- 非社会的な行動をしてしまう
- イライラしやすくなる
- 他人の言葉に敏感になる
- 感情のコントロールができなくなる
脳の機能3「主観的幸福感」
感情を司る機能。快い感情、満足度、気分を形成します。感情的側面(楽しい、悲しいなど)と認知的側面(自己の生活に対する満足度)を持ちます。
【この機能が低下すると……】
- 感情のバランスが取れない
- 生活への満足度が下がる
- 集中力や意欲の低下
- 気分が落ち込みやすい
- なかなか寝付けない
「感情失禁」を知っていますか?私自身が驚いた経験
「感情失禁」とは、喜怒哀楽やあらゆることに対して、感情が自分でも信じられないほどに大きくなり、言葉や表情などを抑えるのが困難になる現象です。前述の「社会的認知」の低下や、脳梗塞などの脳疾患の術後に出るといわれています。
典型的な症状としては、抑えきれない感情をコントロールできずに早口で話したり、話の途中で自分が何を言っているのかわからなくなったりするなど。堰を切ったようにあらゆる感情があふれ出してしまうのです。
私の場合は、くやしさ・悲しみに対して、とにかく泣きそうになるという症状が出ました。本当に些細なことで泣いていて、泣き始めたら最低30分は泣き止むことができなかったのです。
術後3か月くらいで症状は止まりましたが、手術前の50倍くらい感情が動かされていたように思います。
みなさんの中にも、ストレスフルな日々が続くと、「些細なことで涙が出てきた」「それを抑えられなかった」という経験をした人はいるかもしれません。
感情のコントロールの困難さは、燃え尽き症候群の症状でもあります。もし、自身や職場の同僚らに似たような兆候がみられたら、産業医などの専門家に相談することをおすすめします。
脳のコンディションを低下させる原因
ここからは、脳のコンディションを低下させる原因を、具体的に見ていきましょう。
お酒の飲みすぎ・睡眠不足
一見関係がないように見えますが、脳が受けるダメージは同等です。意欲や感情の制御、集中力に関わる前頭葉がダメージを受け、脳の活動が低下。「決定・遂行」機能の低下で判断力も衰え、ミスが起きやすくなります。
また、「主観的幸福感」に関わる三大幸せホルモンの一つ、「セロトニン」の分泌を減少させ、イライラや集中力の低下、頭痛やめまいといった症状の原因になることも。自律神経のバランスが崩れ、自律神経失調症になってしまうこともあります。
長時間座りっぱなしの生活
じっと座ったままでいると、記憶を司る脳の領域(内側側頭葉)が縮むということがわかってきています。
アメリカ・カリフォルニア大学ロサンゼルス校の研究チームは、45~75歳の35人を対象に1週間の身体活動量と座っている時間を調べました。
そして、MRI検査で新しい記憶が形成される内側側頭葉を調べました。すると、座りっぱなしの生活だと、たった1週間で、明らかに内側側頭葉の減少が見られました。
さらに、活動量が多くても長時間座っていたことによる内側側頭葉への悪影響は消えないこともはっきりしています。
うつ病、適応障害、燃え尽き症候群
ストレスなどが原因で発症する、うつ病、適応障害、燃え尽き症候群などでも、脳の3つの機能は低下することが多いといわれています。
例えば、燃え尽き症候群では、「小さな判断がうまくできず納期が遅れる」「これまでよりも業務に時間がかかる」「情報の重要度の判断がつかず大事な情報が抜けもれてしまう」「眠れない」などがサインとして現れます。
ストレスは脳にとって一番の大敵
ストレスを取り除くことは、脳のコンディションを整えることと同じくらい大切といっても過言ではありません。
ストレスは、記憶力の低下、不眠症やうつなどのメンタル不全、生活習慣病をはじめとするストレス性疾患、免疫力の低下など、さまざまな不調の原因になることが、科学的に立証されています。
また、慢性的なストレスにさらされると脳の萎縮で感情のコントロールが難しくなり、「暴走老人化」の原因にもつながるので、注意が必要です。
ストレスは「心理ストレス」と「物理的ストレス」の2種類に分類されます。これらは両方とも脳のコンディションを下げます。
心理的にも物理的にもストレスを受けると、その影響で脳は急性的にも慢性的にも、集中力、記憶力、認知機能、幸福度などの低下を起こします。
特に怖いのが物理的ストレス。自分がストレスと認知していなくても少しずつ蓄積され、脳のコンディションを下げていくからです。
もし身の回りにあてはまる要因がある人は、適切な対策を取るようにしましょう。
心理的ストレスの要因
- 働きすぎ
- 人間関係の問題
- 人間関係の希薄化、孤独
- 行動意義や目的意識の喪失
物理的ストレスの要因
- 大気汚染
- 騒音
- 密集
- 高温、低温
- 睡眠不足
やっても意味がない?NGストレス解消法
ストレス解消の方法にも、注意が必要です。
ストレスを感じると、脳は、短期的に気が晴れるようなことをしたくなります。
ここで気を付けたいのが、「興奮」と「満足感」の違いです。短期的に気が晴れる行動は、ドーパミンの大量分泌を促し、「興奮」をもたらすものが多いのです。
ドーパミンが大量に放出されると、欲しくなったものを何が何でも手に入れなければ気が済まなくなります。この衝動は、依存症とも大きく関係しています。
例えば、アルコール依存症の人は、家族とのケンカなどのストレスを感じると、アルコールが猛烈に欲しくなります。買い物で憂さを晴らしたり、大量に甘いものを食べたり、一晩中ゲームをしたりすることも同じです。
これらは「興奮」をもたらしても、「満足感」をもたらさないことが多いので、脳科学的によいストレス解消法とは言えません。
では、ストレスを取り除き、脳のコンディションを整えるには、一体何をしたらよいのでしょうか?
おすすめは、いつもと違うコミュニティに参加したり、自然の写真を見たりすること。これだけでも、脳によい刺激を与えることができるのです!
次回の記事ではさらに詳しく、「脳のコンディション」を 高める方法を紹介します。
※本記事は、書籍『「脳にいいこと」すべて試して1冊にまとめてみた』(サンマーク出版)より一部抜粋して構成しています。
著者:平井麻依子(ひらい・まいこ)さん

スイス在住/医師
ロンドン大学衛生熱帯医学大学院修了。 外資系コンサルティングファームで、日本、マレーシア、UAE、イギリス、スイスのオフィスにて勤務。医薬品医療機器分野のイノベーション戦略を担当。 患者中心の医療に関する出版物・講演多数。2023年、イギリス出張中に視野に異常をきたし緊急入院。その後、脳腫瘍と診断される。スイス・アメリカにて闘病生活を送る。1年で職場に復帰し、現在、自身の体験をもとに、ヨーロッパ最大の脳腫瘍に関わる非営利機関での活動をしている。
書籍:『「脳にいいこと」すべて試して1冊にまとめてみた』
世界中の脳科学のエビデンスを自分の脳で実験。医師が実践する脳のコンディションを整える方法をまとめた一冊。




