毎日が楽しくない…心の危機に専門医がアドバイス
2024.11.142024年11月21日
メンタル不調は「自律神経」から整える#2
働く女性の「メンタル不調・ストレス疲れ」の解消法
自律神経とメンタルの乱れの整え方を、自律神経研究の第一人者・小林弘幸先生に伺う連載。第2回のテーマは「働く女性のストレス疲れ」。「小さなことでも、つい悩み過ぎてしまう」「仕事に振り回されやすい」人の気持ちを軽くする方法を紹介していきます。
お話を伺ったのは、小林弘幸(こばやし・ひろゆき)先生
順天堂大学医学部教授。日本スポーツ協会公認スポーツドクター。
自律神経研究の第一人者。“腸のスペシャリスト”でもあり、自律神経と腸を整えるストレッチの考案など、さまざまな形で健康な心と体のつくり方を提案している。最新著に『なんとなくだるい、疲れやすいを解消する!自律神経について小林弘幸先生に聞いてみた』(Gakken)、ほか著書多数。
Q.仕事の対人関係に悩んでしまい、どうしていいかわかりません
A.「自分は自分」と割り切る。時にはスルーも大事
仕事上のストレスは、自律神経にも悪い影響を及ぼします。ストレスの最大の要因となるのは、やはり対人関係です。
相手が自分の思い通りにならなかったり、自分と周りの人たちを比べて劣等感を抱いたりすると、心がマイナスの方向に引っ張られてしまいます。
しかも、対人ストレスは自分一人では解決できません。その分、悩みが深刻化し、自律神経のバランスも大きく崩れてしまいます。
ストレスで悩みやイライラが生じると、交感神経が優位に働き、血流を滞らせてしまうことも。その結果、脳への血液が回りにくくなり、思考力も低下するため、感情をコントロールするのが難しくなります。
そんな状態に陥らないためには、「人は人、自分は自分」と割り切るのが一番です。
他人の意見に左右されない確固たる信念を持って、常にブレることなく、自身の価値観を貫けるよう人間力を磨くのです。
それでも他人の目が気になる場合は、スルーするスキルを身に付けることも大切です。心がマイナスの方向に引っ張られるような出来事は「見ざる聞かざる」に徹しましょう。
常に気分が高まることだけを考えていれば、自律神経も安定します。
Q.仕事から帰ると何もやる気が起きません
A.一度切れたスイッチを入れるのは困難
事から帰宅するといつもクタクタ。ひと休みしようとソファに腰を下ろした途端、ドッと疲れを感じて、そのままスイッチが切れてしまう……という人は多いのではないでしょうか。
気を取り直し、ごはんをつくったり、部屋を片付けたりしようと思っても、一度切れてしまったスイッチを再び入れるには膨大なエネルギーが必要になります。そのため、余計なエネルギーを使うことで、さらなる疲労を招くという悪循環に陥ってしまいます。そうならないための対処法があります。
実は「疲れたときほど動く」を意識して、完全なオフモードになる前に、やるべきことを片付けてしまうほうが効率的。時間をダラダラと浪費しないことも、自律神経にもプラスに働きます。
人間は毎日同じペースで過ごすほうが元気でいられるもの。だから、休日も忙しいときと同じようなリズムを保つことが大切です。
「疲れが溜まっているから」といって、朝寝坊や昼までゴロゴロしていると、自律神経が乱れて、かえって疲れが抜けなくなるので注意しましょう。
Q.休みの日に仕事が入ることが多く、ゆっくりできません
A.「仕事」と「休み」を区別しないという選択も
「退勤後や休みの日も仕事の電話やメールの対応に追われて、ゆっくり休めない」という方も多いのではないでしょうか。週休2日が当たり前になった今、しっかりと休めるオフの日が取れないと、ストレスになるものです。
しかしここで、少し発想を変えてみるのも一つの方法です。例えば、仕事と休みをあえて区別しないスタイルを取り入れてみるのです。
もちろん、職場や職種によっては難しい場合もあるでしょうが、「この日は休み」と決めず、「早めに仕事を切り上げて午後から休みにしよう」というように、フレキシブルに動くことも検討してみましょう。
最近はテレワークや、旅先で仕事もこなすワーケーションなど、仕事とプライベートを融合させた多様な働き方が広まってきています。私も完全なオフの日をつくるより、休日でも1~2時間仕事をする、といったスタイルの方が自分に合っていることに気付きました。
仕事と休みのベストバランスは人それぞれ。とはいえ、働き過ぎで心身が疲弊し、自律神経が乱れてしまうようではいけません。
もし、総合的に考えて自分に適した働き方ができるのであれば既存の型にとらわれず、自分に合うスタイルを探してみるのもおすすめです。
Q.病気や症状をネットで調べたら、怖くなってしまいました
A.「検索のし過ぎ」が新たな病を招くことも
「不調の原因は何だろう?」と軽い気持ちで調べたのに、検索していくうちに、重大な病気の可能性があると知って、「これは大変だ!!」と不安に駆られたことはありませんか?
頭の中が病気のことでいっぱいになり、自分が深刻な病気にかかっていると思い込んで、さらに検索を繰り返したり。時には痛みなどの自覚症状が実際に出てきて、不安が増大してしまったケースもあるでしょう。
ネットやテレビに氾濫している、さまざまな情報に惑わされ、心を病んでしまう人も少なくありません。これは「サイバー心気症(しんきしょう)」と呼ばれています。
ネットで病気を検索して不安に陥ったら、一人でくよくよ悩んだりせず、病院で診てもらうのが一番です。もし本当に病気だったら早期に治療してもらえますし、何でもなかったとわかれば、「なーんだ」と安心できます。
ネット検索で新たな“病気”をつくるより、正しい入浴やストレッチなどで、自律神経を整え、体調の改善に努めましょう。
考え過ぎて不安になってしまったり、現在地を見失ったりするのは、真面目にがんばり過ぎてしまうがゆえの反動かもしれません。次回は「メンタルが回復する休息の取り方」を紹介するので、ストレスを抱えやすい方も参考にしてみてください。
※本記事は『なんとなくだるい、疲れやすいを解消する!自律神経について小林弘幸先生に聞いてみた』(Gakken 刊)を一部引用して作成しています。
もっと知りたい
#1毎日が楽しくない…心の危機に専門医がアドバイス
#2働く女性のメンタル不調・ストレス疲れ解消アドバイス
#3メンタル回復!自律神経が喜ぶ休息の取り方アドバイス
自律神経についてもっと知りたい方は小林先生の著書をチェック
『なんとなくだるい、疲れやすいを解消する! 自律神経について小林弘幸先生に聞いてみた』/ Gakken
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