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中高年の心の不調には、実は自律神経が深く関係しているとご存じですか?メンタルと自律神経の乱れの整え方を、自律神経研究の第一人者・小林弘幸先生に伺う連載、第1回は「毎日が楽しくない」と感じたときの解消法をアドバイスしていただきました。
アドバイスをくれるのは、小林弘幸(こばやし・ひろゆき)先生
順天堂大学医学部教授。日本スポーツ協会公認スポーツドクター。
自律神経研究の第一人者。“腸のスペシャリスト”でもあり、自律神経と腸を整えるストレッチの考案など、さまざまな形で健康な心と体のつくり方を提案している。最新著に『なんとなくだるい、疲れやすいを解消する!自律神経について小林弘幸先生に聞いてみた』(Gakken)、ほか著書多数。
メンタルの乱れは自律神経に直接影響を及ぼす
自律神経は体だけでなく、メンタルの状態とも深い関係にあります。
怒りを感じたり、不安な気持ちになったりして、メンタルの状態が不安定になると、交感神経の働きが高まり、血流が悪くなります。自律神経は体中を巡る血液をコントロールしているため、血流が悪くなると、必要なエネルギーが全身に届かなくなります。
特に脳の場合は、栄養や酸素が不足すると、記憶力や判断力の低下を招いてしまいます。内臓や各器官も同様で、体調不良や見た目に及ぼす悪影響という形で、不調が表面化してきます。
それほど、心と体は自律神経を介して深くつながっているのです。
特に対人関係のストレスなどは交感神経を強く刺激するので、睡眠のリズムの乱れや自律神経失調症にもつながりかねません。そこから大きな病気を招く可能性もゼロではないのです。
人間の「心」と「体」を完全に切り離して考えることはできません。目に見えない「心」のコンディションにも気を配り、健康な毎日を送れるようにしていきましょう。
Q.毎日ため息ばかりついてしまいます
A.ため息のような深い呼吸は自律神経を整えるのに効果的
ため息は心配事や悩み事があったり、仕事で疲れていたりするときなどに出がちです。
ため息は自律神経の面から見ると、実はとても体にいいものなのです。
悩んでいるときや疲れが溜まっているときは、体が緊張でこわばり、呼吸も浅くなって、血管が収縮した状態になっています。これでは、自律神経も不安定になってしまいます。
そんなときに「ふぅ~」とゆっくり長くため息をつくことによって、浅くなっていた呼吸が深くなります。さらに滞っていた血流がよくなり、酸素の供給量も増えるため、副交感神経の働きを高めてくれます。
逆にため息をつくのを我慢すると、血流はますます悪くなり、頭痛や肩こりなどにつながる可能性も高まってしまいます。
Q.最近疲れていて、笑うことが減りました……
A.口角を上げるだけでも自律神経がプラスに働きます
毎日のストレスフルな生活で、しばらく笑っていないな、という人もいるかもしれません。そんなときは、たとえつくり笑いであっても、鏡の前で笑ってみましょう。
口角を上げることで顔の筋肉の緊張がほぐれ、副交感神経が優位に。その結果、心はリラックスでき、血液の流れも改善されます。さらなるメリットも報告されています。
最近の研究では、笑うことが体の免疫力をアップさせ、がん予防にも効果があるナチュラルキラー(NK)細胞を増大させることが明らかになってきました。
また、笑うことは脳の活性化につながり、認知症の予防にもなるといわれています。
さらに、つらいことや悲しい出来事に見舞われて落ち込んでいる人にとっては、笑うことが元気を取り戻すきっかけになることもあります。
反対に怒ったり、イライラしたりすると、自律神経が乱れて血管が損傷し、老化のスピードが加速してしまいます。
Q.忙し過ぎるからなのか、食事をおいしく感じません……
A.「マインドフルネス」で一つのことに集中してみましょう
「マインドフルネス」という瞑想法をご存じでしょうか。これは「今ここにある現実」だけに目を向けて雑念を排除し、心を安定させる瞑想の手法で、誰でも簡単に始めることができます。
このマインドフルネスの「一つのことに集中する」手法には、実は自律神経を整える効果があるのです。
例えば、呼吸をしているときは呼吸だけに意識を向け、「今、鼻から吸った息が肺を膨らませている」と目の前のことに集中します。
また、食事をしているときには、自分が何を食べているのか意識しながら、自分のやっていることを頭の中で実況中継してみましょう。「肉汁とタレの甘みがよくマッチしている」「隠し味の柚子が効果的」など、実際に感じたことを言葉で表現してみるのです。
そうすれば、知らず知らずのうちに食べるペースがゆっくりになり、一つ一つをじっくり味わうことができます。たまっていたストレスや雑念がいつの間にか消え去り、食事の楽しさで心も満たされるはずです。
これらのような工夫を取り入れれば、ストレスを解消し自律神経を安定させることができます。
Q.人生の目標が見つからないのですが······
A.1か月に一度「やりたいことリスト」を作ってみる
長い人生ではいつ何が起きるかわかりません。ある日突然、思わぬ事故や災害に見舞われたり、病気で入院したりすることだってあります。
そんな人生の重大事に直面して「あのときこうしておけばよかった」と後悔しても、失われた時間は返ってきません。
そうならないためにも「今を生きる」という意識を常に持って、「やりたいこと」のリストを作ってみましょう。
やり方は簡単。まずは1か月に一度、自分のやりたいことを自由に思いつくままリストにまとめます。その内容を見直しながら、生きる目標を意識し、リストの項目を一つずつ実行できるよう努力してみるのです。
「今、一番やりたいことは何だろう?」と自分に問いかけることで、やりたいことが明確になり、生きる目標が見つかります。
そこから、「後回しにしたら、いけないものは何だろう?」とリストの項目を整理することで、今やらなくてはいけないことも発見できるようになります。
しっかりとした目標を持つことができれば、自ずとモチベーションが上がって毎日が充実。自律神経も整っていきます。
第2回では、働く女性のメンタル不調や、ストレス疲れの解消法を紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
※本記事は『なんとなくだるい、疲れやすいを解消する!自律神経について小林弘幸先生に聞いてみた』(Gakken 刊)を一部引用して作成しています。
もっと知りたい
#1毎日が楽しくない…心の危機に専門医がアドバイス
#2働く女性のメンタル不調・ストレス疲れ解消アドバイス
#3メンタル回復!自律神経が喜ぶ休息の取り方アドバイス
自律神経についてもっと知りたい方は小林先生の著書をチェック
『なんとなくだるい、疲れやすいを解消する! 自律神経について小林弘幸先生に聞いてみた』/ Gakken
現代人を悩ませる「なんとなく不調」の正体は自律神経の乱れ。自律神経の基礎知識から不調への対処法、おすすめの生活習慣まで幅広く網羅した一冊!
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