50代以降も快適に!脳の不調との向き合い方#3
孤独は危険!?「脳のコンディション」を高める5つの方法と孤独との向き合い方
孤独は危険!?「脳のコンディション」を高める5つの方法と孤独との向き合い方
更新日:2025年03月16日
公開日:2025年03月02日
脳のコンディションは何歳からでも高められる
第1回では脳のコンディションチェックリスト、第2回では脳のコンディションの低下による影響を詳しくお伝えしてきました。今回はいよいよ、脳のコンディションを高める「脳にいいこと」を紹介していきます!!
脳にいいこと1:ストレスを解消する
アメリカ心理学会は効果的なストレスの解消法として、 「散歩をする」「エクササイズをする」「読書や音楽を楽しむ」「家族や友達と過ごす」「瞑想をする」「絵画の制作や鑑賞などクリエイティブな趣味の時間を過ごす」などを挙げています。
また、燃え尽き症候群やその手前の症状で、まだ本格的な治療が必要ではないと思われる人には、「太陽が出ている間に外を歩く」「寝る前にベッドの中でストレッチをする」「入浴」をすすめることが多いといいます。
これらは、セロトニンをはじめとする癒やしのホルモンや、オキシトシンなどの気分をよくするホルモンを活性化させることで、脳のストレス反応をシャットダウン。体内のストレスホルモンを減らし、治癒反応やリラクゼーション反応を起こします。
脳にいいこと2:新しいことに挑戦する
アメリカ・マサチューセッツ総合病院の神経内科が行った「スーパーエイジャー」(80歳以上で同世代の人よりも高い認知能力をもつ人)の研究では、若さの秘訣の一つとして、「新しい刺激を脳に与え続けること」が挙げられています。
一例としては、「楽器を習う」「外国語を身に付ける」「ダンスで新しい動きをする」「カードゲームをする」「新しい料理を作る」など。今まで経験したことがなく、考える力が試されるようなことであれば、なんでもOKです。
認知機能を刺激する活動は、脳の老化を減速させます。逆に、脳を刺激する活動をやめると、認知低下が加速します。それは定年後やることがないと物忘れが始まる……といった身近な例からもわかるでしょう。
脳にいいこと3:週に150分の有酸素運動を行う
日本の厚生労働省、欧米の各国政府機関も、週に150分の有酸素運動を健康のために推奨しています。
有酸素運動で脳の血流量が増えると、脳が活性化します。また長期にわたって運動することで、新しい血管が作られ、血液や酸素の供給量が増え長期的な活性化も望めます。
また、定期的に有酸素運動を続けていると、ストレスに対してコルチゾールが分泌されにくくなり、記憶を司る海馬の破壊を防いでくれるようになります。
あまり運動をしない人なら早歩きや家の掃除、運動をある程度する人だと軽いジョギング程度でも効果は得られます。日々の通勤、お迎え、買い物等を工夫すれば、1日20−30分早歩きをする時間は作れるかと思います。
脳にいいこと4:いつもと違うコミュニティに参加する
考え方が違う人との交流も、脳に刺激を与えます。加えて脳科学的には、おしゃべりだけではなく、何かの作業を並行すると、さらに効果を高めてくれるといわれています。
例えば私の場合は、近所にあった読書サークルに入りました。これは月に1回程度集まり、課題図書を決め、みなで本を読んで意見を出し合う、というものです。メンバーの国籍もさまざまで、読む本も毎月バラエティー豊かなのが特徴。今までと違う頭の使い方をするという意味では、とても役に立っています。
私は気が向いたときに行くので、参加は2、3か月に1回程度です。それでも気負わず参加できるコミュニティがあるのは、孤独を防ぐためにも心強いものです。
脳にいいこと5:自然に触れる
フィンランド・ヘルシンキ大学のリサ・ティルヴァイネン博士が実施した調査では、「緑がある場所に30分間いるだけで、ポジティブな気持ちになれる」ことが、脳科学的に示されています。
緑のある場所、つまり、通勤・通学時に公園を通るだけでも、その効果は確実に得られるといいます。緑の中で散歩することはストレスレベルを軽減させ、脳にもよい行動です。私も積極的に、公園での散歩やピクニックを行っています。
また、オランダ・アムステルダム大学のミヒール・ファン・エルク博士らの研究では、大自然の広大さや美しさが感じられる動画を見ることでも、脳を活性化できることが立証されました。
家やオフィスに小さな観葉植物や、自然の写真を置くだけでも効果が得られるので、試さない手はないでしょう。
脳の調子を維持するには「孤独」の回避が大切
整った脳のコンディションを維持するため、脳に影響を与えるリスクファクター(危険因子)への対策も取っておきましょう。
私が一番注意していただきたいのは、世界保健機関(WHO)でもたびたび問題になっている「孤独」です。社会的孤立は、1日に15本のタバコを吸うことや、アルコール依存症レベルの飲酒と同じくらい、健康に害があるといわれています。
また、孤独は、脳に関わる病気も含む、生活習慣病と大きく関係があります。
他者との会話や交流がない孤独状態に陥ると、使われていない脳の神経細胞が少しずつ衰え、脳のコンディションが低下。将来的な認知症などのリスクが高まります。
例えば、スウェーデン・カロリンスカ研究所が、ストックホルム在住の75歳以上の高齢者1000人以上を3年間追跡調査した研究があります。この研究では家族や友人が多い人に比べ、他者との交流が少ない人は、認知症の発症率がおよそ8倍になるという結果が出ました。
退職後に、物忘れがひどくなったり、怒りっぽくなったりする人や、暴走老人化する人がいるのも、孤独による脳のコンディションの低下が一因といえるでしょう。
なぜ、人とのつながりが脳によいのか?
人との会話や交流が、なぜ脳によいのか。まとめてお伝えしましょう。
- 気分のよい会話は、脳内のセロトニン、オキシトシン、ドーパミンなどの幸せホルモンを放出させ、健康や幸福感を高める。
- 人と話をすることで、脳細胞を使い、脳の萎縮を防ぎ、脳の老化に伴う認知症などの症状を遅らせる。単調な脳細胞の使い方よりも、幅広い年齢の人と幅広い話題の会話を行うことがよいとされる。
- 人はポジティブな情報よりも、ネガティブな情報に注意を向けやすく、記憶にも残しやすい。そのため、一人でいると思考がネガティブな方に傾いてしまうため、人と話すことでそれを止めるようにする。
精神科医の間でも、「人の話を聞いてあげることが、一番大事」というアドバイスがあります。すべての患者に当てはまるわけではないですが、話を聞くだけで症状が改善するケースは多いそうです。
脳科学的には親しい友人は2人いればいい
とはいえ、いきなり「友人をたくさん作りましょう」と言われて困る人も、いらっしゃると思います。
脳科学的には、2人の親しい友人、そしてその他の広く緩いつながりがあればよいのです。
2人のうちの1人は、配偶者やパートナーでもOKです。
広く緩いつながりは、困ったときに電話をしたり、定期的に会ったりするような関係性でなくてもかまいません。オフィスの廊下で会った同僚との会話、子どもを迎えに行ったママ友との情報交換といった、ちょっとした立ち話をする程度でも十分です。
いかがでしたか? 私自身も脳腫瘍の手術を受けた後の1年間で、脳のコンディショニングに包括的に取り組んだ結果、今まで以上に頭が働く、幸福度が高い、うっかりミスがなくなったなどの変化を実感することができています。
ぜひ、みなさんも、気になった取り組みから始めてみて、変化を実感してもらえたらうれしいです。
※本記事は、書籍『「脳にいいこと」すべて試して1冊にまとめてみた』(サンマーク出版)より一部抜粋して構成しています。
著者:平井麻依子(ひらい・まいこ)さん

スイス在住/医師
ロンドン大学衛生熱帯医学大学院修了。外資系コンサルティングファームで、日本、マレーシア、UAE、イギリス、スイスのオフィスにて勤務。医薬品医療機器分野のイノベーション戦略を担当。患者中心の医療に関する出版物・講演多数。2023年、イギリス出張中に視野に異常をきたし緊急入院。その後、脳腫瘍と診断される。スイス・アメリカにて闘病生活を送る。1年で職場に復帰し、現在、自身の体験をもとに、ヨーロッパ最大の脳腫瘍に関わる非営利機関での活動をしている。
書籍:『「脳にいいこと」すべて試して1冊にまとめてみた』
世界中の脳科学のエビデンスを自分の脳で実験。医師が実践する脳のコンディションを整える方法をまとめた一冊。




