母が認知症と診断された日、ごまかし合っていた家族が前向きになれた
2025.03.06
更新日:2025年03月20日 公開日:2025年02月17日
8年間、母を介護した脳科学者・恩蔵絢子さん#3
認知症の母から学んだ、治療以外にできること「無駄に見える言葉や遊びこそ大事に」
2023年5月、8年間介護してきた母・恵子さんを亡くした脳科学者の恩蔵絢子(おんぞう・あやこ)さん。娘としてだけでなく研究者としても認知症とその人らしさに向き合ってきました。最終回は、治療以外に周囲の人ができることについて伺いました。
恩蔵絢子さんのプロフィール

おんぞう・あやこ
1979(昭和54)年神奈川県生まれ。脳科学者。2007年東京工業大学大学院総合理工学研究科知能システム科学専攻博士課程を修了、学術博士。22年5月現在、金城学院大学・早稲田大学・日本女子大学で非常勤講師を務める。専門は自意識と感情。母親が認知症になったことをきっかけに、生活の中で見られる症状を記録し脳科学者として分析した『脳科学者の母が、認知症になる』(河出書房新社刊)を18年に出版。近著に『なぜ、認知症の人は家に帰りたがるのか』(中央法規出版刊)など。
私の変顔に変顔を返してくれる母
アルツハイマー病の進行を抑制する薬「レカネマブ」が2023年9月に承認され、12月には保険が適用になりました。アミロイドβの除去に効果がある薬ができたことは、とてもうれしいことですが、高額で、心配な副作用もあると言われており、私としてはまだ楽観的になることはできないでいます。
脳科学者でもある私の立場からは、治療については専門家に任せて、身近な人が認知症と診断されたときに、まわりの人はどのようにそれを受け入れ、何ができるのかということを、これからもお話ししていきたいと思います。
私自身、母の介護で、自分のための時間がどんどんなくなっていき、行き詰まりを感じていたとき、ケアマネジャーさんの言葉で「ハッ」としたことがありました。
「最近、必要以外の言葉を使っていますか」と言われたのです。確かに...