聡明な母が認知症に…桐島かれんさんの向き合い方は?

2024年02月15日

“切れ味鋭い桐島洋子”が少し恋しい日もあるけれど…

聡明な母が認知症に…桐島かれんさんの向き合い方は?

成長し、母になり、年を重ねていく中で、母の「自分らしく、ただ生きる」という生き方を理解できたというモデルの桐島かれんさん。ですが、聡明だった母で作家の桐島洋子さんが認知症を患って……。どう受け止め、どう向き合っているのか、お聞きしました。

桐島かれんさん、母・桐島洋子さんのプロフィール

桐島かれんさん、母・桐島洋子さんのプロフィール

左/桐島かれんさん(モデル・58歳※取材時)
きりしま・かれん 1964(昭和39)年生まれ。モデル。現在はファッションブランド「ハウス オブ ロータス」のクリエイティブディレクターとして世界中を飛び回っている。著書に『ホーム スイート ホーム』(アノニマ・スタジオ刊)など。

右/桐島洋子(作家・86歳※取材時)
きりしま・ようこ 1937(昭和12)年生まれ。出版社勤務を経て、フリージャーナリストに。1970年に作家デビュー。1972年『淋しいアメリカ人』で大宅壮一ノンフィクション賞受賞。世界中を旅しながら、書籍や雑誌の執筆のほか、テレビのコメンテーターとしても活躍。未婚のまま、かれんさん、ノエルさん、ローランドさんの三姉弟を育て上げた。

母が恥ずかしい…「普通のお母さん」に焦がれた幼少期

母が恥ずかしい…「普通のお母さん」に焦がれた幼少期
かれんさんは今、かつて洋子さんも暮らした、海に臨む葉山に居を構えています

桐島かれんさんが思い出す母・洋子さんの姿は、机に向かって原稿を書き続ける背中です。

1970年に作家デビューした、母の桐島洋子さん。発表する作品はどれも同世代の女性に熱狂的に受け入れられ、さらには文学賞も受賞しました。

同時に、「未婚であり、恋も存分に楽しんでいたようでしたから、メディアの恰好のネタになりました」とかれんさんは話します。

小学校に上がると、「それが恥ずかしくて。『かれん』という名前も、母が私に着せる洋服も、友達とは全然違う。私はよく、夜ベッドの中で『普通のお母さん』のいる家庭を想像しながら寝たものです」

でも今になれば、気になってしまう原因は母にあったのではなかった、とかれんさん。

「母は、母親だから女だからということは一切なく、自分らしくただ生きていただけでした。自分も成長するにつれ、それが理解できました」

力強く、自分らしく生きてきた母。その道を追いかけて

力強く、自分らしく生きてきた母。その道を追いかけて

一方、かれんさんは20歳でデビュー。モデル、歌手、女優として活躍し、29歳で長女が生まれてからは、仕事を休み子育てに専念しました。

しばらくは4人の子育てにどっぷりでしたが、「放っていても子どもは育つから、やりたいことをしなさいよ」という洋子さんの言葉に後押しされるように、アクセサリーやインテリア雑貨を扱うショップをオープン。

「母が私たち子どもを連れ、世界を旅しながら作品を発表したように、私も子どもを連れて世界を旅して手工芸品を集め、お店に並べていました」

かつて気になって仕方のなかった母の生き方と、桐島さんの人生が交差していったのでした。

力強く、自分らしく生きてきた母。その道を追いかけて
骨董品を蒐集していた洋子さんから譲り受けたアンティークのバカラのグラス。丁寧に作られた手仕事の品が大好きなのは母と同じ

聡明な母が「アルツハイマー型認知症」と診断されて

聡明な母が「アルツハイマー型認知症」と診断されて
病気のため途中で断筆し、子どもたちが書き継いだ『ペガサスの記憶』(桐島洋子・かれん・ノエル・ローランド著、小学館刊)

2020年に発表した母と3人の子どもによる共著『ペガサスの記憶』で、2014年から洋子さんがアルツハイマー型認知症であることを公表しました。

「それまでも物忘れはありましたが、年のせいと思っていましたし、あの聡明な母が認知症だなんて考えたくなかったのです」

しかし旅先でホテルの部屋へ戻れないことなどが続き、検査に行くと、アルツハイマー型認知症と診断。心の整理がつかず、母への告知も悩みました。

「医師に相談すると、『伝えても大丈夫でしょう。5分後にはお忘れになっていると思います』と。本当にその通りでした」

現在は症状も落ち着き、横浜でヘルパーさんとマンション暮らし。月に数回会っています。

「病気になる以前の“切れ味鋭い桐島洋子”を少し恋しく思うこともあるのですが、母は今とても穏やかで、かつて私が望んでいた『普通のおばあちゃん』でもあります」

認知症を患う母との接し方で心掛けていることは

認知症を患う母との接し方で心掛けていることは
かれんさんと洋子さん。「昔から母はパーティー好きで、お料理上手。お客さんが集まるときは腕を振るって、よくごちそうを作りました」

認知症もいろいろあり、症状も段階も人それぞれだから一概に言えませんが、母に関しては、プライドを傷つけずに接することを第一に考えています。

とにかく自立して生きてきた母なので、今でもそう本人が思えるように生活を組み立てています。

「〇〇してあげようか?」と言っても「そのくらい、自分でできるわよ」と必ず答えるから、言わずにごはんを作っておいたり、洗濯機を回しておいたり。

アルツハイマーとわかってから母に依頼のあった取材は、私や妹が一緒についていきサポートしたりしていました。

それと何より、家族だけで抱え込まずプロに頼むのもポイント。

妹は母と7年間一緒に暮らして面倒を見ていましたが、彼女はすごく大変でした。「何度言っても、どうしてできないの?」と母に強く言ってしまっては、落ち込んでいました。

今は、妹が探したヘルパーさんの力をフルに借りています。その結果、衝突することもなくなり、母とは楽しく旅の話などをしています。母も、私たちがピリピリしないので、気持ちよく過ごせるようになったと思います。

取材・文=井口桂介(ハルメク編集部) 撮影=平岡尚子(桐島かれんさん) 衣装協力/ハウス オブ ロータス

※この記事は雑誌「ハルメク」2023年6月号を再編集、掲載しています。

HALMEK up編集部
HALMEK up編集部

「今日も明日も、楽しみになる」大人女性がそんな毎日を過ごせるように、役立つ情報を記事・動画・イベントでお届けします。

みんなの コメント
【限定コラボ】職人技が光る!ハルメク×マエノリのセーター誕生秘話

子どもに残すべきはお金?不動産?どちらがお得?

子に遺すべき資産は?

「現金」か「不動産」か…どっちが得?メリット・デメリットは?相続や親族間のトラブルに悩まされないためにしておくべき準備とは

2024.12.12
【PR】「渋滞の文字で……」トイレ事情あるある

突然の我慢できない尿意

実は多くのハルメク世代が悩んでいる「尿トラブル」…中には上手に対策をしている人も!気軽にできる対策って?

2024.12.10
【PR】個人情報の上手な管理・整理術とは

個人情報管理できてる?

銀行口座・保険・クレジットカードなど、「デジタルの情報」をきちんと管理できていますか?煩雑にしていると思わぬ落とし穴が…

2024.12.09
【PR】三井住友銀行アプリにシンプルモードが登場

お金の管理が簡単に!

三井住友銀行アプリに「シンプルモード」が新登場!スマホ操作が苦手な人でも簡単に使える便利機能が満載です!

2024.11.29
認知症セルフチェック

認知症セルフチェック

「もの忘れが増えた」「名前が思い出せない」という症状に心当たりがある方は要注意!それ、「認知機能のレベル低下」が原因かもしれません…

2024.11.22
思わず笑顔になるコミュニケーションロボット「ニコボ」

健気な姿がかわいい!

「思わず笑顔になる」と巷で話題の「永遠の2歳児・ニコボ」!ハルメク世代の2人に、ニコボとの生活にハマる理由をお聞きしました!

2024.11.22
デジタル資産の遺し方

生前親に●●聞き忘れると

老親の契約や登録しているサービス、これらを子が把握していないと将来ムダな出費や面倒なトラブルに発展する可能性が!特に見落としがちなのは…

2024.10.11
【PR】50代からの願いを叶える新しい資金調達術

50代~お金の増やし方

将来を見据えて、50代から「まとまった資金の調達」が重要になります。どんな選択肢があるか、ご存知ですか?

2024.11.20
【PR】たった60日で英語が話せる!3つのコツ

60日で英語が話せる!

英語をマスターするのに「完璧」はいらない!初心者でも60日で英語が話せるようになる、驚きの3つのコツとは?

2024.08.29
認知症のリスクを確認してみませんか?

今なら無料でお試し!

将来、自分の認知機能が低下するリスクがあるか、簡単に予測できるサービスが誕生。今なら無料で先行利用できます!

2024.08.08
【PR】頼れる家族がいない……入院・入居どうする?

おひとり様の備えはOK?

この先「おひとり様」になったら意外な落とし穴がいっぱい…。そんな不安に備える、おひとり様専用お助けサービスが誕生!

2024.07.22
50代から1日1分!脳トレクイズで楽しく脳を活性化

50代から1日1分脳トレ

認知機能を衰えさせないためには、早い時期から「脳を活性化」させることが大切。脳トレ効果がグッとアップするコツって?

2024.12.04