「なんだかちょっとおかしい?」を見逃さない! 認知症グレーゾーン診断
2025.02.27
公開日:2025年02月13日
認知症の分かれ道「グレーゾーン期」の対策で27%の人は回復できる!
「認知症は、誰もが当事者になるかもしれない身近な病気。その前段階で気付き、早めに対処することが大事です」と語るのは、メモリークリニックお茶の水院長の朝田隆さん。「もしかしたら……」と感じたときどうすればいいのか、対策を伺いました。
教えてくれた人:朝田隆(あさだ・たかし)さん
1955(昭和30)年生まれ。82年東京医科歯科大学医学部卒業。東京医科歯科大学神経科精神科、山梨医科大学精神神経医学講座、国立精神・神経センター武蔵野病院(現・国立精神・神経医療研究センター病院)などを経て、2001年より筑波大学教授。15年より筑波大学名誉教授、メモリークリニックお茶の水院長。20年より東京医科歯科大学客員教授。最新刊は『認知症グレーゾーンからUターンした人がやっていること』(アスコム刊)
認知症の前段階にある「グレーゾーン」4人に1人は早めの対策で回復
人生100年時代を迎え、高齢化が進む日本では2025年に65歳以上の5人に1人が認知症になると見込まれています(※)
「現在、日本の認知症患者は500万人を超え、その予備軍は450万人以上と見られています」と説明するのは、これまで40年以上にわたり2万人を超える認知症の患者さんを診てきた朝田隆さんです。
予備軍とは、本格的な認知症に進む一歩手前のグレーゾーン(軽度認知障害)のこと。日常生活に支障が出るほどではないものの、「ちょっとおかしいかも」と感じるさまざまな警告サインを発している状態で、正常な脳と認知症の間に位置します。
※「日本における認知症の高齢者人口の将来推計に関する研究」(厚生労働科学研究費補助金・特別研究事業)の推計
おかしいと感じてから受診するまで平均4年
一般的に、認知症になる人は20年も前から脳の病的変化が始まるといわれています。
「例えば80歳で認知症になる人は60歳くらいから脳の変化が始まっており、必ず認知症グレーゾーンの状態を通ります。そして、このグレーゾーンの段階で何も手を打たなければ、5年で約半数が認知症になるといわれています。
ただし、すべての人が認知症に移行するわけではありません。適切に対応すれば27%、だいたい4人に1人が正常な脳の状態に回復できるという報告があるのです」と朝田さん。
よって認知症グレーゾーンの段階で専門の医療機関を受診し、治療や生活習慣の改善に取り組めるかどうかが「認知症の分かれ道」と言っても過言ではありません。
「しかし現実には、認知症の患者さんが最初に“おかしいな”と気付いてから初めて受診するまでに平均4年もかかっていることが2021年に報告されています。そうなると肝心な治療や対策ができる期間が過ぎてしまうこともあるわけです。
おかしいなと思ったら、歯科医を受診するくらいの気軽さでぜひ認知症の専門医に相談してほしいです」
日本でもアルツハイマー型認知症の治療薬が承認されました
2023年12月に認知症の治療薬「レカネマブ」が保険適用になりました。認知症の原因となるアミロイドβを取り除く働きがあり、対象となるのは軽度認知症患者と、その前段階のグレーゾーンの人。
ただし高額な薬であり、3人に1人の割合で脳出血などの副作用が生じうるため、実際に使用する人は限られています。
次回は、認知症グレーゾーンのチェックリストを紹介。「まだ大丈夫」とタカをくくらず、ぜひチェック!
取材・文=五十嵐香奈、大門恵子(ともにハルメク編集部)、イラストレーション=ねもときょうこ
※この記事は、雑誌「ハルメク」2024年6月号を再編集しています