【10】56歳バリキャリ女子・初お見合いにいざ出陣!
2025.03.12
公開日:2025年03月19日
50代婚活奮闘記11・バリキャリB美の場合
【11】50代でスピード婚なるか!?外資商社マンと仮交際後の初デート
恋愛・婚活ジャーナリストの清葉アキコが出会った婚活女子の第11話。初お見合いの相手と仮交際をすることになった56歳バリキャリ雑誌編集長B美。初デートは、彼の地元の横浜でおいしい中華ランチ。デートの結果はいかに?
初対面から1週間で初デート。スピード婚なるか!?
前回の話はコチラから。バツイチ子無し56歳B美はバリキャリな雑誌編集長。結婚相談所で59歳の外資系商社マンと初お見合いした話の続き。
お見合いした双方が「また会いたい」となった場合、交際がスタートする。結婚相談所ではこれを「仮交際」と表現するのだが、なぜ「仮」がつくのかというと、この時点ではまだお見合いを続けたり、並行して他の人とも交際したりがOKという“恋人”とはちょっと異なる関係性だからだろう。彼氏というより、友達以上恋人未満(彼氏候補)と言った方がいいかもしれない。
「で……どうだったんですか、横浜初デートは?」。私は連載エッセイの打ち合わせで訪れたB子の会社の会議室で事情聴取を始めた。仕事はそっちのけで。
初デートはお相手側からの提案で横浜中華街に決定。勤務先に近く、仕事相手との会食でもよく行く老舗高級中華店でランチコースをいただく、というデートプラン。天気が良ければランチの後ゆっくりとお散歩を楽しめる。まさに大人の健全な昼デートにピッタリのチョイスだ。
「あの店、夜はかなり高いけれどランチだとそこまでじゃないのがいいわよね。久々に行ったけれど、おいしかったわ~」とB美。いや、私が聞きたいのはご飯の話じゃない。仮交際デートの話だ。なぜ話を逸らす?
シラを切る容疑者に詰め寄る刑事さながら、わざと強面をしてB美の顔をグッと覗き込んだ。「いやいやB美さん、デートのことですよ!」。B美は手元では打ち合わせの資料をセットしながら何度もうなずいた。「わかってるわよ」ということだろう。
資料のセットが終わると私の方にスッと顔だけ向けて、低い声でこう言った。「仮交際は終了よ!」
B美と彼との横浜デート、いったい何が起きたのか!?
ひとことの結果報告だけで事情徴収を済ますわけにはいかない。私は結構しつこい女なのだ。「いったい何が……」と聞きかけたところで、B美は話さないわけにはいかないと観念したのだろう。自らポツリポツリと語り始めた。
「あのね、彼と一緒にいるときに、高齢のおじいちゃんと一緒にいるような感じがしたの」。休日デートならば、お見合いのときのスーツ姿とは違うカジュアルスタイルで現れたのだろう。ファッションにうるさいB美のお眼鏡には適わなかったということか?私がそう思っているのを感じたのか、こう続けた。「ファッションがどうこうっていうより、雰囲気かな……」
食事を楽しみながら、B美は彼との結婚後の生活をイメージしていた。お互いの趣味や仕事のことなど、なんてことはない会話を気楽に楽しめる。笑顔がとても優しくて、自分の話もよく聞いてくれる。食事の好みも合いそうだ。彼となら休日や退職後の余生を楽しく笑って過ごせそうな気がした。
楽しくランチを終えたB美は、「もう少しお話ししたいので」と海が見える公園に誘った。腹ごなしの散歩も兼ねて――。海からの心地良い風が頬を撫でる五月晴れの公園の中を横並びでゆっくりと歩いているときに、B美は気付いてしまった。
「あれ……私より小さくない!?」
デートだからとちょっとがんばって5cmヒールのパンプスを履いてきたとはいえ、B美の目線は結構下に向いていた。結婚相談所のデータによれば、彼の身長はB美と同じだったはずだ。「そういう嘘をつく人なの!?」。彼にちょっとした疑念が生まれた。
身長のことは“絶対譲れない3つの条件”から外したのだから……と考え直したものの、B美が化粧室に寄って戻るとき、遠くから見た彼は背中も腰も丸まっていて、まるで“おじいちゃん”のように見えたのだという。「私より小さく感じたのはこのせいか!」
お散歩デートでの会話が「仮交際終了」の決定打に!
B美はランチ後の散歩では、いろいろな話をしてお互いの理解を深めていきたいと思った。横並びで歩いているときは、対面でのランチのときよりも本音が話しやすい。自分がイメージしている結婚後の生活について語り、彼自身の結婚感や意見を聞きたいと質問すると、彼は「うーん……」と小さく声を漏らしただけだった。
自分の将来の話については話したくないのか考えていないのかわからないが、そのぼんやりとした様子を見て、ますます“おじいちゃん”のように感じてしまったとB美。「一緒にいたら私までグッと老けそうな気がしちゃったの」
デートの帰り、電車の中で1日を振り返ってみたが、何度もイメージしていた彼との結婚生活がまったく違うものになっていたそう。「まるで彼を介護しているかのように『結局どうするの?』『これでいいの?』と私が口うるさく言っている毎日しかイメージできなくなっちゃってね」とB美はカラッと笑った。
デート1回で仮交際終了を決めたB美。自分から断ったとはいえ、期待がかなり膨らんでいただけに落ち込みも大きかったそう。しかもその夜、前日までに申し込んでいたお見合いがすべて「不成立」という結果も目にし、相談所に入会しても会うこともそう簡単ではないことに改めて気付かされたという。
「せっかく縁があって出会えた相手と仮交際することになったのに、なんでもう1回、彼とちゃんと話をしてみようと思えなかったんだろう……」。B美はその夜、自分を何度も何度も責めた。B美は明るく話してはいたが、きっと口惜しさと悲しさが入り混じった涙を味わっただろう。声のトーンがいつもとは違った。
「結婚相談所に入ればすぐに結婚できる」と思っている人も多いが、思っているほど簡単ではないのが実情。とはいえ、自己流で進めていくよりも、結婚を目的とした出合いのシステムとプロによる適切なアドバイスのもと婚活を進められれば、かなり効率はいいはずだ。
B美は今回のことで「もう嫌!婚活はやめる」と言い出さないだろうか? 打ち合わせの帰り、彼女に聞こうと思ったがやめておいた。
家に帰ると、B美から今日の打ち合わせの資料がメールで届いていた。そしてメッセージにはこう書かれていた。「私、婚活やめないわよ! だって、今日、次のお見合いが決まったから。次は婚活アドバイザーMさんイチ推しの同業者で同い年。今度はうまくいく気がするの!」
- (次回予定)【第12話】いよいよ!50代A子もお見合いスタート
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婚活初心者専門コンサルタント・三島光世さん
三島さんからのひと言
『仮交際ステイタスは、結婚前提でお互いのことや結婚に対する考え方など確認していく期間。最長3か月間と決まっているので、食事や遊びを楽しむだけのデートではなく、短期間に何度も会ってお互いの意向を話し、すり合わせていきましょう』
婚活業界歴19年。20代・30代向けの結婚相談所「ganmi(眼深)」と50歳以上の結婚相談所「とわ婚」(https://towakon.net/)を展開する株式会社ヒカルヨの代表をつとめる。メディア出演多数。著書に『「普通」の結婚がなぜできないの?』(WAVE出版)、『婚活は「がんばらないほうが」うまくいく』(秀和システム)がある