018:まいこさん(54歳)
悶々とした日々が力に!54歳主婦が趣味と経験を生かして社会復帰を果たすまで
悶々とした日々が力に!54歳主婦が趣味と経験を生かして社会復帰を果たすまで
更新日:2025年08月02日
公開日:2025年07月30日
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あなたの“リスタートのヒント”が、きっと見つかるはず。
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まいこさんのリスタート・ストーリー
ご主人の転勤を機に会社を辞めて専業主婦になり、4人のお子さんを育ててきたまいこさん。40代は実母の通い介護が始まり、多忙な日々を送る中で、新たに仕事をする選択肢はなかった。
それでも、いつか必ず終わる子育てや介護に備えて何か準備しておきたいと、40代で保育士などの資格を取得。実母が介護施設に入居したのを機に保育園のパート勤務をスタート。
さらに、コロナ禍にSNSに興味を持ち、好きだった読書をテーマに「50代読書主婦の惚れる言葉に出会える本紹介&選書」のInstagramを開始。フォロワー3万人になるまでに。
現在は保育の仕事とInstagramで社会復帰し、忙しい日々を過ごしている。
https://www.instagram.com/maiko_books/
人生に焦りを抱えた50代目前の迷走期。きっかけが欲しくて

――保育士の資格を取得したきっかけは?
専業主婦だったとき、平日の昼間が嫌いでした。ほっとできる時間であるはずなのに、お茶を飲んでいても「こんなことをしていていいの」「さぼっているんじゃないの」と、焦りで胸がざわついていました。
私の大学時代はすでに、女性も自分の仕事を持ち、子どもを持っても働き続けましょう、と言われていた時代です。でも実際は子育てと介護に追われて毎日いっぱいいっぱいで、仕事まで抱えることはできず、どこかで諦めてしまったんです。その思いが、ずっと胸のどこかに残っていました。
子育ては大変ながらも楽しくて、今振り返っても幸せな時間でしたが、子育ての終わりが見えてきた40代後半、「このままではいけない」「50歳までに第二の人生をスタートさせたい」と、何かしなくちゃと焦り始めました。
何かきっかけが欲しい、今までの経験を生かせる仕事ができたら、そう思って始めたのが保育士の資格取得のための勉強です。
――資格取得の勉強の費用の時間はどうやりくりしましたか?
自分のやりたいことにお金や時間をかけるのに、罪悪感を感じる癖がついてしまっていて。母の介護で心と時間に余裕がなかったのもありますが、 参考書を2冊だけ買って、家で一人、スキマ時間を見つけては死に物狂いで勉強しました。
結果、3か月間で保育士の資格を取得!その後、宅地建物取引士の資格も、参考書2冊の独学で取得しました。
20代の頃も資格の勉強をしたことはありましたが、当時とは本気度が違いましたね。「このモヤモヤから脱却したい」「もう後悔はしたくない」という思いが起爆剤になり、がんばり続ける力になりました。
それに、子どもや母……誰かのためじゃなく、自分のために勉強をすることは、大変だったけれど楽しかった。迷走していたかもしれないけれど、今振り返れば、充実した時間だったとも思います。
――保育の仕事はいつから、どうやって始めましたか?
50歳のとき、母が自宅介護から施設に移りました。それまでは、何をしていても心配で気忙しかったのですが、ポカっと時間ができて。
ならばと地域の保育園の募集に応募して、保育サポートのパートを始めました。今は週3日だけ、9時から1時半まで4.5時間ほど、地元の保育園で働いています。
子どもたちがひたすらにママを求める姿を見て、自分が子育てしていたときには気付けなかった、母親の存在価値のようなものを感じることができたのは、うれしい発見でしたね。
ただ、資格を生かせることはうれしかったのですが、保育の仕事は年齢を重ねるにつれて体力的にきつくなっていくので、60歳以降も何か在宅で仕事ができたらいいなと考え始めました。
人生の支えだった「本」を通して掴んだ一生モノの仕事

――Instagramで本の紹介を始めたきっかけは?
コロナ禍になり、子どもたちが楽しそうにSNSの話をしているのを見て「じゃあ私もやってみようかな」って。子どもに教えてもらいながら最初は、Instagramで細々と日常の出来事を発信していたんです。
でも、本が好きで、学生時代も社会人、主婦になってもずっと読んできたので、本について発信するようになったら、だんだん見ていただける人が増えてきて。
子どもに相談したら、「本の紹介に特化にしたらいいんじゃない?」とアドバイスをしてくれました。
――まいこさんにとって、本はどんな存在ですか?
本は私のメンターです。
思い返せば、人生に迷ったとき、いつも本に救ってもらいました。子どもに怒りすぎた日も、親にひどいことを言ってしまった日も、自分が嫌いだと思えば思うほど本を開いて言葉を探しました。私を諭してくれる言葉、許してくれる言葉たちが自己嫌悪で落ち込む私を救い出してくれたんです。
本ってストーリーがありますよね。だから、これからどうなるのか予習ができるし、「一人じゃない」と思わせてくれるものでもあります。
そして、本は自分以外の人生の旅をさせてくれるもの。
ミステリーを読めば探偵になれるし、恋愛小説を読めばヒロインになれる。リスクなく違う世界に連れていってくれる。誰かの経験から届く言葉は神様がくれた贈り物です。同じ言葉でも、その人にだけ刺さる瞬間があるのは、その言葉をその人が必要としているからですよね。
――自分らしい投稿のために工夫していることは?
一つはプロフィール欄の内容を変えたこと。以前はちょっとカッコつけて年齢も隠していたんですが、「50代」「主婦」というワードを入れて正直な自分を出すようにしてから反応が大きくなり、自分でも投稿しやすくなりました。
そして「介護と育児に悩んだ時の本」から、「惚れる言葉に出会える本」へ、ポジティブで前向きになれるような文面に変えました。
書店の本棚を写しながら旬の本を紹介するコーナーがあるのですが、これは、近所の書店の店長さんに相談し、了承を得た上で、本棚の写真を撮らせていただいたり、手に取った本をご紹介させていただいたりしています。
というのも、子育てや介護で、私自身もゆっくり書店で本を選ぶ時間がありませんでした。書店に行って本を選べることがどれだけ幸せで貴重な体験か、身をもって知っています。ネットで簡単に本が買える時代だからこそ、書店さんの良さも紹介していきたい。
そして、本屋さんで過ごすワクワクする気持ちが伝わればと思っています。
――「選書サービス」を始めたきっかけは?
60歳以降も働ける仕事を考えていて、ほかのブックセレクト系のインスタグラマーさんがやっているのを見て、自分でもやってみようと思い、選書サービスも始めました。
選書カルテに記入してもらい、カルテを元にその人に合った本を何冊かセレクトしてご紹介するというサービスで、これまで30人以上の選書をしてきました。
その方に合った本を選ぶのは責任重大で大変なのですが、その人にとっての一期一会の本をご紹介でき、喜んでいただけたときは本当にうれしいです。
不思議なことに、同じ本を読んでも、読んだときの自分の年齢や状況によって感想が変わったり、刺さる部分も変わったりしますよね。そんなふうに読書って自由でいいと思うんです。私が紹介した本がすべての人に刺さるわけではないと思っていますが、1冊でも役に立てたらうれしいですし、そのときに読みたいと思った本を自由に読んでほしいですね。
お金も時間も有限。主婦にはそれを生かす知恵がある
――本の購入費用はどうしていますか?
Instagramを始めて、フォロワーが5000人を超えた頃から、出版社さんから献本していただくこともありますが、自分で購入する本代は月2万円くらいです。
そのほか、週1で図書館に通い、借りた本も紹介しています。図書館は、なんといっても値段を気にせず選べるので、実はとても贅沢なこと。気になる本はまず図書館にリクエストするようにしています。
――本を読む時間はどうやってつくっていますか?
たくさん読書しているように思われますが、同じ本を切り口を変えて何度も紹介していますし、正直、全部読み切っていない本もあります。仕事も家事もしながらの活動なので、そのあたりは等身大でカッコつけずに発信しています。
それに、年齢とともに集中力が落ちていくし、特に小説を読むのが一番エネルギーを使います。だから私は、本を読みたいときは、電車に乗るようにしています。
もう一つ、おすすめなのが「オーディブル」などの、読書を耳で聴く方法。家事をしながら聴けるので忙しい人でも本を楽しめますし、本によっては有名な俳優さんが読んでいたりして、声も楽しめます。
話題の「国宝」はオーディブルでは尾上菊之助さんが語り手という豪華さで思わず聞き入ってしまいました。原作を聞いた後の映画は一層理解が深まって面白かったです。
――「あの過去があったから今がある」と思えることは?

本を選び、写真を撮ること、文章を書くこと、継続すること、全部が大変です(笑)。それでも続けているのは、「私のできることってなんだろう」「私は今、何をしたいんだろう」と不安と焦りだらけだった、かつてのモヤモヤ期に戻りたくない、という気持ちがあるから。
決して仕事を辞めたことや専業主婦時代を否定しているわけではなくて、あのモヤモヤの時間が、今の糧になっていると思います。
インスタを始めて4年、毎日投稿を続けています。「今日は無理かも」と思う日もあるけれど、私はほかに取り柄がないんです(笑)。私の武器があるとすれば、継続することだと思っているので、せめて続けることだけはしたいと思っています。
――Instagramを始めて得られたことは?
自分の居場所。そして、新しい友達ができたこと。
同じような本の紹介をしている仲間もいますし、別のテーマでも、同じ50代でインスタで活躍されている方と食事に行ったりもします。やはりお互いの発信しているものが好きなので、価値観が合うんです。楽しい話もしますが、「インスタ、大変だよね」みたいな苦労話も共有しています。
ママ友との付き合いはだんだん減っていきますが、50代を過ぎてから新しい知り合いができるのは、SNSのおかげかもしれません。
また、実家の相続や処分をするのに宅建の資格が役に立つなど、資格は生きる知恵になりました。人生に無駄なことはないなあって実感しています。
――あなたの座右の銘は?
好きな本のタイトルでもあるのですが、『人生で大切なことは、すべて「書店」で買える』です。
私は何か悩んだときや迷ったとき、人に相談する方ではないし、かと言ってカウンセリングに行く時間もお金もありません。本のいいところは、セルフカウンセリングできるところだと思っています。人生で何かあったら、本を読もうと思っているので、この言葉がとても好きです。
――これからやってみたいことは?
今やっていることで精いっぱいで、これからのことは未知数です。でも新しいことに挑戦してもっと成長したいという思いはあります。
例えば、今はいい本に出会えたときだけ、インスタライブをやっていますが、YouTubeでもう少し長くお話しするようなこともしてみたいですし、本好きな方との交流もしてみたい、もっと上手に文章を書けるようになりたい。
まだ答えは出ていませんが、やりたいことはたくさんあります。
50代のリスタートに必要な3つの備え
周囲の協力を得てまわりを巻き込みながら、やりたいことに本気でチャレンジしていく。そうすれば、どんなことも楽しく、自分のプラスになるはずです。
1.家族に嘘をつかない
家族が反対したり、心配したりすることもあるかもしれません。SNSはリスクもありますが、得るものも大きいです。家族に隠れてこっそりやるよりも、嘘をつかず、「こういうことをしたいから協力して」とお願いする方が、きっとうまくいきますよ。
2.人生の残り時間を考える
実母の介護をしているとき、いろいろなことが少しずつできなくなっていく様子を目の当たりにしました。どんなに努力をしても、老いは必ず訪れます。だから、やりたいことがあったら先延ばしせず、挑戦すること。今、迷っている人も、それは必ず人生の糧になるはずです。
3.本気でやってみる
何でも本気でやってみることです。私は20代のときに取れなかった資格が、本気で取り組んだ40代で取得できました。それがこの先の人生で何に生かされるかわからなくても、本気でトライしている時間は楽しいし、自信にもつながります。
取材・文=樋口由夏 写真=masaco 企画・構成=長倉志乃(HALMEK up編集部)
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