定年女子は。どこへ行く?

50代、定年後の“居場所迷子”。今の私に合う「心地いい場」の見つけ方

50代、定年後の“居場所迷子”。今の私に合う「心地いい場」の見つけ方

公開日:2025年11月29日

50代、定年後の“居場所迷子”。今の私に合う「心地いい場」の見つけ方

定年後に向けて自分の居場所を探す定年女子たちが増えています。家庭でも職場でもない心地よい場は、実は探すより“出会う”もの。定年女子トーク代表・石崎公子さんが、迷いを抱える大人女性に向けて自身の経験から最初の一歩を踏み出すヒントを語ります。

※定年女子=定年が気になる、定年をきっかけに自身の生き方働き方を考えたい働き続けてきた女性たちのこと

50代、「居場所がない」不安の正体

50代、「居場所がない」不安の正体
kouta / PIXTA

いつか会社勤めを卒業すれば、会社という居場所は無くなってしまいます。そのとき自分の「居場所」はどこになるんだろう……友達付き合いがあるから心配ない?

令和5年(2023年)5月の国会で「孤独・孤立対策推進法」が成立し、翌2024年4月に施行されました。

定年女子世代の中には、子どもが独立することで家族の人数が減ってきた人もいるでしょう。そもそも、既婚非婚問わず子どもがいない人も増えています。そこにコロナ禍で孤立化リスクが高まってきたから、こういう法律ができるのでしょう。

孤独?孤立? そんなワードを使われることに私は少々違和感があります。だけど、本音を話せる場があるかと聞かれて、自信をもってYes!と答えられる定年女子は、果たしてどれくらいいるでしょう?

近年、「居場所づくり」が重要と言われますが、私には「居場所」というワードがあまりなじめないんです

「居場所」かどうかは別にして、自分にとって居心地のいい場があればそれでいいのではないかしらと思うのです。それを「居場所」って言うんだよ!と突っ込まれそうですが、そういう場を一生懸命作ろうとするのは、ちょっと違うんじゃないかなと私が思うせいかもしれません。

何をしたいかわからない…「居場所迷子」だった日々

何をしたいかわからない…「居場所迷子」だった日々
mits / PIXTA

私が会社を退職したのは、世の中の「定年」より少し前の頃でした。

未来に向けて会社を辞めたけれど、じゃあ何をするの?の答えは持たず、いわゆる「やりたいこと捜し」をしていたように思います。

会社とは関係ない昔の友達は、ますます仕事に励んでいたり、趣味に熱中して楽しんでいたり、旅行三昧だったり……。それらを横目で見ながら、あぁ、私には何もない——そう思いました。私はいったい何がやりたいんだろう?と。行く場所もなく、取り残された気持ちでした。

会社を辞めたら自分の「居場所」がないことに気付き、これじゃ定年退職したオジサンと一緒じゃん!と、かなり落ち込みました。暗いトンネルの中でうずくまっているような気持ちで、私はマジひとりぼっちだと感じたのです。

“とりあえず動く”と、景色は少しずつ変わる

“とりあえず動く”と、景色は少しずつ変わる
zon / PIXTA

でも時間だけはあったので、ネットをつらつら見ていました。気になったことがあればもっと調べてみたり、時には試しにその場に出掛けてみたり……。

当時の私が気になっていたことは「人の顔」、それも年を重ねた人の顔。ほら、年を重ねた顔で、目鼻立ちに関わらずいい顔してるなあと思う顔ってあるでしょ?アレです。

何がその人を「いい顔」にさせるのかが気になり、興味を持ちました。

そこから、ネットで見つけた「百歳の顔」写真展に出掛けてみたり、高齢者をモデルにした単館上映の映画を見に行ったり、お葬式の遺影に注目して芸能人のお葬式に出掛けてみたり……。

最初の一歩は重たい。でも、一歩踏み出すと“面白い”は増えていくもの。そのうち私は、人の顔には生き方がにじみ出てくると思うようになり、「生き方」を学べそうなことを探し始めたのです。

コーチングやキャリアを学び始めたのはそんな流れでした。そこからキャリアコンサルタントの資格取得の勉強も始めるのですが、これがなかなか苦戦し、またもがき苦しむことにも(笑)

終活カウンセラーの民間資格を取得したのも、定年女子トーク実行委員会を発足したのもその頃です。

同じ方向を見ている人と出会うと、世界がひらく

同じ方向を見ている人と出会うと、世界がひらく
kikuo / PIXTA

学びの場には、私と似たようなことに興味関心を持つ人が多数いました。私が行ってみようと思ったように、みんなそれぞれ「行ってみよう」と思ってそこに来ているわけですから、当然と言えば当然なのかもしれません。

今まで会ったことがないような人もいましたが、それもまた興味深く、好きなものや、興味の方向が同じ人が集っているせいか、きっと居心地がいいんですね。

趣味の集まりや、推しの集まりなんかでも、こんな感じではないでしょうか。

定年女子トーク実行委員会を始めたのは、私自身がこれからどうする?これからどうなる?と考えていたからでした。他の人はどう思っているのかを知りたかった。

あれから9年半。毎月の「定年女子カフェ」にやって来る人たちは、「職場に同世代の女性がいないから」、「他の人はどんなふうに考えているのか聞きたくて」「もやもやした気持ちを話す場が欲しくて」と口をそろえます。

中には参加するかどうか1年以上迷ってから参加する人もいますが、みんな「行きたい」と思ってやってきます。

来たら「他では話せないこともここではいろいろ話せる」「自分とは全く違う世界で生きる人に会える」と何度も参加するようになるのです  。

“知らない世界”は、そもそも選択肢に入らないから

“知らない世界”は、そもそも選択肢に入らないから
EKAKI / PIXTA

そもそも、自分が用意する選択肢から「やりたいこと」「おもしろいこと」「居場所」を探すこと自体がナンセンスなんです。

なぜなら自分が知らないことは、選択肢には入らないから。

でも、もし自分と同じ方向を見ている人が集まる場であれば、居心地がいいのではないかしら。

定年女子カフェに集う人は、結果的に自分と同じ軸で安心して話せるような居心地のよさを感じてくれているのではないかと思います。それは「居場所」とは少し違うかもしれないけれど、“気付いたら居心地を感じている”場があれば、それで十分。

知らないこと、面白そうなこと、価値観の違う人――。そんな新しい世界には、いろいろ動いて出合ってみないと気づけません。

それに、 不安や迷いでもがいているときだからこそ、当たり前の心地よさに気付けることもあるのではないかと思います。

居心地のいい場は、あればあるほどいい 

居心地のいい場があればあるほどいい 、きっと楽しくいられる
Ayleeds / PIXTA

誰にでも、居心地のいい場はあった方がいいでしょう。

でもこれからの私たちは、一つではなく“複数”持つほうが健やかだと、最近思います。

還暦を過ぎたら、友達も交際も断捨離しましょうと言う人がいるけれど、本当にそうかしら。

スポーツ、趣味、学び、仕事、健康、自分の興味関心はいろいろあって、これからも変わっていくかもしれません。だからこそ、テーマごとに「心地いい場」があるって、とても楽しそうです。 

それに私たちはこれからだんだんと年齢を重ね、自分自身も周りも、気持ちや環境が少しずつ変わっていく可能性があります。今の私が心地よいと思う場所が、未来の私にとっては違うかもしれない。

そんなことを考えると、私はますます、“居心地のいい場は、いくつあってもいい”、そう思うようになりました。

【連載】定年女子はどこへ行く?(毎月更新)はこちらから>>

石崎公子
石崎公子

定年女子トーク実行委員会・委員長。新卒で広告代理店に入社し、勤続25年で退職、独立。会社に囚われない働き方を志向し、新規事業を起ち上げるも失敗、試行錯誤を繰り返す。現在は定年女子キャリア講座のナビゲーターを中心に、よりよく生きるための終活講座も手がける。共著に定年女子ライフシリーズ「そろそろこれからを考えよう、定年女子ライフ計画」ほか。

今日の運勢ランキング
水瓶座 乙女座 獅子座
1
2
3