50歳から「やりたいこと」を見つける~小さな一歩を始める8つの方法
2025.03.15
公開日:2025年03月15日
『60歳の迎え方』著者・河野純子さんがすすめる
50代は「第二の思春期」もやもやして当たり前~気が楽になる3つの視点
50代女性が人生の折り返し地点で多くの変化に直面し、不安やモヤモヤを感じるのは自然なこと。『60歳の迎え方』の著者・河野純子さんが提案する、充実した人生につながる「小さな仕事」「自分を雇う」「時間を味方に」の3つの視点を解説します。
不安の正体は「ありたい自分」が見えないこと
定年や人生の残り時間が気になりだしたり、子どもや親との関係が変化したり、急に老いを感じたり……。50代はさまざまな変化が重なって、多くの人がもやもやとした気持ちを抱く時期です。
そのもやもやの正体は、後半人生の「ありたい自分」が見えないことにあります。なにせ私たち日本人女性は「人生100年時代」のトップランナー。世界中を見渡してもロールモデルがいないのですから、不安に思って当たり前です。
50代は「第二の思春期」。後半人生を自分らしく生きていく方法を探す適齢期と考えて、焦らずじっくり悩み、できることから準備を始めていきましょう。
90歳まで元気に楽しく働くことを目標に
100年ライフを楽しむために欠かせないことは、できるだけ長く働き続けることです。経済的な不安から解放されるだけでなく、社会に貢献できる喜びがあり、健康にも良いことがわかっています。
私の提案は、90歳まで元気に楽しく働くこと。スポーツ庁の調査でも女性の体力年齢はこの20年で10歳若返っていますから、健康面では十分可能なはずです。ではどうしたら「楽しく」働き続けることができるでしょうか。
小さくても好きなことを仕事にする
キーワードは3つあります。
1つめは「小さな仕事でOK」ということ。
数年前に「老後資金2000万円不足問題」が大きな話題になりましたが、これは夫婦二人世帯の場合、年金だけでは家計が月5万円赤字になるという金融庁の試算がベースです。逆に言えば、月に5万円の収入があれば家計は赤字にはならないのです。
家計の事情は人それぞれですが、年金がもらえる65歳以降はそれほど多くの収入を得る必要がないと考えれば、自分の「好き」を優先して仕事を選ぶことができます。例えばヨガが趣味ならヨガ教室を開いて、5000円の月謝で10人生徒さんを集めれば、月収5万円を達成できるのです。
自分で自分を雇えば定年もない
2つめは「自分で自分を雇う」
現在、多くの会社の定年は60歳、雇用延長しても65歳までです。一方で自営業やフリーランスなど、自分で自分を雇う働き方なら、定年もありません。なにしろ自分が雇い主。年齢で「不採用」になることもありません。
何もかも自分でやらなければいけない働き方ですから、もちろん大変な面もありますが、組織の論理に振り回されず、自分の裁量で働けることは実に楽しいことです。これは53歳で会社員を卒業した私の実感でもあります。
時間を味方につけて、新たなスキルを学ぶ
私には特別なスキルや資格もないから、自営業やフリーランスになるなんて無理と思う人もいるかもしれません。でも人生100年時代の一番の魅力は、時間がたっぷりあること。50歳から新たなスキルを身に付けたり、資格を取得することも十分可能なのです。
ということで、3つめのキーワードは「時間を味方につける」
実際に50代以降で起業した人の5人に1人は、新たなスキルを学んで未経験の分野で起業をしています。
やりたいことは1つに絞らなくていい
時間を味方につけて、小さな仕事を、自分のペースで続けていく。これが90歳まで楽しく働く「作戦」であり、これから「やりたいこと」を見つける大前提となります。
後編では、先輩事例から見えてきた「やりたい仕事を見つける8つの方法」をご紹介しますが、前編の最後に一つ、少し気が楽になるお話をします。
それは、やりたいことは一つに絞らなくてもいいということ。「本当にやりたいことを探さなきゃ」と思うとプレッシャーになりますが、変化の激しい時代、仕事を1つに絞ることはリスクでもあります。
いくつかやってみる。変わってもいい。まずはできることから始めて、少しずつ好きなことにシフトしていってもいい。それぐらいの気持ちで、準備を始めることがおすすめです。
河野純子さんのプロフィール
慶應義塾大学SFC研究所上席所員、ライフシフト・ジャパン取締役CMO。1986年リクルート入社。「週刊住宅情報」(現SUUMO)副編集長、「とらばーゆ」編集長、女性のライフ&キャリア研究チーム長を経て、2008年に住友商事に転身。17年独立。18年ライフシフト・ジャパン参加、慶應義塾大学大学院で人生100年時代のライフデザインの研究を始める。20年慶應義塾大学SFC研究所上席所員、21年上新電機社外取締役、22年ダイドーグループホールディングス社外取締役。いばらき大使。著書に『60歳の迎え方 定年後の仕事と暮らし』(KADOKAWA刊)がある。