「こうあるべき」を捨てて「身の丈」で生きる方法

2022年11月27日

心も暮らしもラクに生きる!気にしない新習慣#12

「こうあるべき」を捨てて「身の丈」で生きる方法

日々を穏やかに過ごすためのヒントを、各専門家に伺う特集。今回は、理学博士である中村桂子さんに、ご自身が実践している心穏やかに、気にしないで生きる方法について教えてもらいました。「きりがありませんから」と口に出せば途端に心がゆるむのだそう。

中村桂子(なかむら・けいこ)さんプロフィール

1936(昭和11)年、東京都生まれ。理学博士。93年大阪府高槻市に「JT生命誌研究館」を設立、2020年4月より名誉館長。著書に『生命科学から生命誌へ』(小学館刊)、『「ふつうのおんなの子」のちから 子どもの本から学んだこと』(集英社クリエイティブ刊)など多数。

※インタビューは2021年5月に行いました。

全部やろうとか、完璧にやろうとは考えない

全部やろうとか、完璧にやろうとは考えない
美容院で「草笛光子さんみたいになりたい」とオーダー。「染めるのをやめたらラクになった」とはにかみます

―― 雑誌「ハルメク」でも何度か登場されている生命誌研究者の中村桂子さん。お住まいは東京・世田谷区成城。10万年以上の歳月をかけて多摩川が削り出した斜面の上に立ち、その庭は標高差15mにも及ぶ、急勾配の林のようです。

30年近く前に私たち夫婦が住み始めたときは、この庭は上から下までざーっとドクダミだらけ。二人で全部取ったんです。今も毎日、草を取ったり落ち葉を片付けたりしますが、今日掃除しても明日も葉っぱは落ちてきます。

いくらやっても、私の手には負えませんね。そんなとき「きりがありませんから」と口に出すんです。

これは実は「男はつらいよ」の寅さんの口癖。全部やろうとか、完璧にやろうとしても、自分の思う通りにはなりませんから「きりがありませんから」で、いったん上がる。すると、とても気持ちがラクになるんです。

全部やろうとか、完璧にやろうとは考えない
「いくら草取りしてもまた生えてきます。草も自分らしく生きているだけ。終わりはないですが、『きりがありませんから』で解決」と中村さん
全部やろうとか、完璧にやろうとは考えない
庭の二輪草。近所では減りましたが、まだ自然に生えるといいます

私は生命誌という分野で生き物の研究をしてきましたが、生き物には「ねばならぬ」がないんです。自分が一生懸命生きているだけで、アリがライオンになりたいと他の生物をうらやんだり、競争なんかしたりしないんです。振り返ってみると私自身も人生で競争をした記憶がありません。

趣味でテニスを続けていますが、勝ち負けとか点数とかは全く気にならなくて、いいショットが決まったらそれでうれしいの。誰かに勝ちたいとか、こうでなければ、というのがないから落ち込むこともないんですよ。

本当は、落ち込まなければならないことは、たくさんあるのですけれど(笑)。

ヒメウツギ
「気候のせいなのか、コロナによる環境変化の影響なのかわからないけれど、これまでこんなに咲いたことがない」というヒメウツギ(2021年)

背伸びせず「身の丈」でいればとてもラク

背伸びせず「身の丈」でいればとてもラク

二代目桂枝雀(かつら・しじゃく)さんが、噺(はなし)の枕に「見なかったことにする」とよく言っていました。これも魅力的な言葉です。

本当はそういうのはいけないと思うんですよ。でも嫌なことや、やらなきゃいけないのにできなかったことなどを「こうあるべきだ」と気にして悩んでいるよりは「見なかったことにする」と言って、すり抜けることも人生、時には必要なんじゃないかなと思います。

両親からの育てられ方も影響しているのかも。「あれをしなさい」とか「これはやっちゃダメ」といったことを、まったく言われたことがありません。

同世代の女性は、「女の子だから」とやりたくてもできなかったことがたくさんあるみたいですが、私はそれがありませんでした。

両親も含め、先生や上司も自由にさせてくれて、困っているときは助けてくれました。なんて恵まれているんだろうとずっと思ってきましたが、振り返ってみると、私にはできないことがたくさんあり、頼りなさそうなところばかりだったからかも。

私は、私ができることだけを一生懸命に「身の丈」でやってきました。背伸びをせずに「身の丈」でいたら、幸せにラクに生きられると思いますよ。

「心も暮らしもラクに!気にしない新習慣特集」として、日々の習慣で気にしない、振り回されない人になる練習や、執着と不安をから心を開放するための片付け方50代以降だからこそ見直した家事のあれこれ、「不安」や「怒り」「後悔」「妬み」「悲しみ」を脳科学で解決する方法などを解説してきました。心軽やかに!これからの人生も過ごしていきたいものです。

取材・文=長倉志乃、原田浩二(ともにハルメク編集部)撮影=中川まり子
※この記事は雑誌「ハルメク」2021年7月号の再編集しています。

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