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背中を反る動きに注意!おすすめストレッチや運動は?
脊柱管狭窄症でやってはいけないストレッチって?
医療法人OJ会 ILC国際腰痛クリニック東京
簑輪 忠明
公開日:2024.02.22
脊柱管狭窄症のときにやってはいけないストレッチってあるの?腰の痛みやしびれが起こっているときは、ひとまず安静にするのも一つの方法ですが、ある程度痛みがひいたらストレッチや運動をすることが大切です。おすすめストレッチや運動もご紹介!
脊柱管狭窄症の基礎知識
腰の痛みやしびれが起こる「脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう)」。
多くの中高年を悩ませる病気の一つですが、具体的にどのような原因で起こりどのような治療法があるのか、いまいち理解していないという人も多いのではないでしょうか。
ここでは、脊柱管狭窄症の基礎知識をご紹介します。
脊柱管狭窄症とは
脊柱管狭窄症は、50代以降に多く見られる病気です。
そもそも脊柱とは、24個の背骨(脊椎)が柱状につながった状態のことで、縦に長いトンネルのようになっています。そのトンネルが脊柱管と呼ばれ、脳から伸びている脊髄神経が通っています。
脊髄神経の役割は、脳からの指令を手足に伝えたり、手で触れたものの情報を脳に伝えたりすること。脊柱管は、その重要な役割を担う脊髄神経を保護しています。
脊柱管狭窄症は、何らかの原因により脊柱管が狭くなってしまい、神経や血管が圧迫されて腰や足に痛みやしびれが生じている状態です。
狭窄の程度や部位によっては、脚が麻痺したり排泄障害が起こったりすることもあります。
カートにつかまったり、腰を曲げて前かがみになった状態だと脊柱管の圧迫が緩んで楽になります。
脊柱管狭窄症の原因
脊柱管が狭くなる直接的な原因は、椎間板や背骨、黄色靱帯などの周辺組織の肥大や変形によって脊柱管が圧迫されることです。
では、なぜ脊柱管が狭くなってしまうのかというと、以下のような原因が考えられます。
加齢
脊柱管狭窄症の主な原因は、加齢による老化現象です。年齢を重ねるとともに背骨周辺の組織が変形・変性することで、徐々に脊柱管が狭くなってしまいます。
若い頃に重いものを持つなど腰への負担が大きい仕事をしていたなどの場合、リスクが上昇するのも脊柱管狭窄症の特徴です。
また、加齢による筋力の衰えも原因の一つです。筋力が衰えて背骨に負担がかかりやすくなり、脊柱管狭窄症を発症しやすくなります。
肥満
肥満になると体重を支える背骨、特に腰椎に大きな負担がかかり、椎間板や靱帯、軟骨部分などが変性したり炎症を起こしたりします。
腰椎が変性すると、脊柱管が圧迫されて脊柱管狭窄症が発症する原因になります。
生活習慣
長時間のパソコン作業や車の運転など、日常的に腰に負担がかかる姿勢を取ることが多い人は、脊柱管狭窄症になるリスクが高まります。特に、猫背や反り腰の人は注意が必要です。
また、喫煙や糖尿病、ストレスなどの生活習慣や健康状態も、脊柱管狭窄症に影響を及ぼすことがあります。
椎間板ヘルニアなどの疾患
腰椎に起こる椎間板ヘルニアや腰椎すべり症などの疾患によって腰椎が変形すると、脊柱管を圧迫して脊柱管狭窄症が起こる可能性があります。
他にも骨粗鬆症による圧迫骨折や側弯症(脊椎が側方に曲がる状態)などによって骨が変形すると、骨や椎間板によって神経が圧迫されて脊柱管狭窄症の症状を引き起こす場合があります。
50代以降の女性は、閉経によって骨の代謝を調整する女性ホルモンが減少することで骨量も急激に減少するため、骨粗鬆症に注意が必要です。
先天的な異常
脊柱管狭窄症は、年齢を重ねたことで起こる後天的な変性によるものがもっとも多いですが、稀にもともと生まれながらにして脊柱管が狭い先天性のものもあります。
はっきりとわかってはいないものの、血縁者に脊柱管狭窄症の人がいる場合は比較的発症しやすいといわれています。
脊柱管狭窄症の治療法
脊柱管狭窄症の治療法は、以下のようにさまざまです。MRIやCTなどの画像診断の結果や症状の強さなどにより、一つあるいは複数を組み合わせて適切な治療を行います。
薬物療法
一般的な鎮痛剤の他、神経由来の痛みに効果を発揮する薬、血流を改善する薬、痛みを抑える効果が期待できる抗うつ剤などの服用や痛みを抑えるブロック注射などを行います。
薬で痛みを抑えられれば、その間に運動や生活習慣の改善などが行えます。
リハビリテーション
電気刺激を与えたり温めたりして痛みを緩和させる物理療法と、関節の動きの改善や筋力の向上などを目的とした運動療法を行います。
物理療法は運動療法と併行して行うことが重要です。
装具療法
腰椎が不安定な場合や圧迫によって症状が緩和する場合は、コルセットを装着して背骨を安定させ、余計な筋肉の緊張を緩和させます。
手術療法
薬物療法やリハビリテーション、装具療法で症状が改善しない場合や、症状が強く日常生活に大きな支障が出ている場合などは手術が検討される可能性があります。
通常、圧迫の原因となっている組織の一部を切除して症状を取り除きますが、状態が悪い場合は金属のボルトなどを使って椎骨と椎骨を留めて固定することもあるでしょう。
症状が強く出ているにも関わらずそのまま放置してしまうと、後遺症が残る可能性もあるため、早めに手術を受けることが大切です。
脊柱管狭窄症でやってはいけないストレッチとは
脊柱管狭窄症と診断された人の中には、少しでも症状を軽減しようとストレッチを行っている人もいるかもしれません。
しかし、中には行うとさらに症状が悪化する恐れのある「やってはいけないストレッチ」もあります。
具体的には、腰や背中など体を反らせるようなストレッチに注意が必要です。
普段仕事で長時間座っている人の中には、少しでも体を動かそうと両手を上げて伸びをしている人もいるかもしれません。
しかし、背中を伸ばすような動きは、神経を圧迫するストレスがかかって痛みやしびれを悪化させる可能性があるため、背中を反らせたりひねったりするようなストレッチは行わないようにすることが大切です。
また、脊柱管狭窄症が疑われる場合、やってはいけないスポーツもあります。例えば、ゴルフやテニス、ヨガなどの腰をひねる動作が必要な運動は控えましょう。
特に急激な痛みやしびれがある場合は、症状を悪化させないよう安静にすることが必要です。
ただし、長期間安静にしているとかえって症状が悪化する可能性もあります。痛みやしびれがある程度落ち着いたら、医師と相談の上で適切なストレッチや運動を行ってください。
脊柱管狭窄症におすすめのストレッチとは
上述の通り、体や腰を反らせるようなストレッチは避けた方がよいですが、脊柱管狭窄症の症状改善につながるストレッチもあります。
特に座っている時間が長いときや長時間同じ姿勢でいるときは、合間にストレッチを行いましょう。
ここでは、脊柱管狭窄症におすすめのストレッチを3つご紹介します。
「股関節緩め」
脊柱管狭窄症の症状を改善するには、腰椎の負荷を減らす「股関節緩め」で股関節の動きを柔軟にすることが大切です。
特に腰や背中が反ってしまう原因が筋肉にある場合は、原因となりやすい腸腰筋の緊張を和らげることで、背中が反る姿勢を改善できます。
以下の要領で、腰椎から太ももへと伸びる腸腰筋を伸ばしましょう。
- 足は腰幅、爪先は正面に向け、腰に手を当てて立つ
- 両足を前後に大きく開く
- 口から軽く息を吐きながら腰をゆっくりと落とす
- 自然に呼吸しながら20秒間キープ
- 口から軽く息を吐きながら立ち上がる
- 前後の脚を入れ替えて同様に行う
- これを2〜3回繰り返す
股関節緩めは、毎日続けると症状の改善を実感できるようになるため、できれば3か月は続けるようにしてください。
また、普段から骨盤の傾きを意識することも大切です。脊柱管狭窄症では反り腰が悪化する傾向にあるため、腰椎が反らないよう骨盤を後傾させる意識を持ちましょう。
「腸腰筋トレーニング」
股関節の安定に重要な腸腰筋を鍛える「腸腰筋トレーニング」をもう一つご紹介します。
腸腰筋が衰えると、股関節を開く力が弱くなって内股や反り腰になりやすくなるため、日頃から股関節力を上げておきましょう。
- 両膝を開いて床に座り、両足の裏をしっかり合わせる
- 腰を立てて背筋を伸ばし、両手の指は床につける
- ひし形にならないよう注意しながら、両脚の内側に正方形をつくる
- 骨盤を立てたまま、おへそをグーっと前に押し出すように上半身を前傾させる
- 足の付け根に力を入れて10秒間キープ
- 4〜5を3〜5回繰り返す
上記のトレーニングを1日に朝晩2回、週に3日ほど行うのがおすすめです。続けていくと、腸腰筋が強くなって股関節が安定し、痛みが改善したり歩くスピードがアップしたりします。
「猫のポーズのストレッチ」
足腰の痛みやしびれが強く出ている人でも行いやすいのが「猫のポーズのストレッチ」。
背骨をゆっくりと上げ下げすることで、脊柱管狭窄症の原因の一つである硬膜(脳と脊髄を覆う膜)の外圧が下がり、神経への圧迫を緩めることが可能です。
それに加えて血液や脳脊髄液の循環もよくなり、脊柱管狭窄症の症状を緩和する効果が期待できます。
- 四つん這いになり、背骨本来のカーブを意識しながら背中をまっすぐ伸ばす
- 背中が弓なりになるように背骨のお腹部分を下に下げ、5秒間キープ
- 息を吐きながら、おへそを覗き込むイメージで猫のように体を丸め、5秒間キープ
1〜3を1回として、朝昼晩に各10回ほど行いましょう。骨盤周辺のインナーマッスルも鍛えられるので、腰が安定して歩くスピードをアップすることもできます。
ストレッチ以外で脊柱管狭窄症におすすめの運動
脊柱管狭窄症の改善には、以下のように安全に行えて痛みやしびれを感じない姿勢で行える運動がおすすめです。
水中ウォーキング
水中ウォーキングは、浮力によって体への負担を軽減できる他、水の抵抗力を利用することで全身の筋肉を無理なく使えます。
通常のウォーキングでは背中や腰への負担が大きい、痛みやしびれが起こったことがある人でも安心です。
エアロバイク
エアロバイクを漕ぐことで腰回りを支える筋肉が鍛えられると、背骨への負担が軽減されて脊柱管狭窄症の症状を緩和する効果が期待できます。
しかも痛みやしびれが楽になる前傾姿勢で行えるうえ、室内で安全に自分に合ったレベルで運動ができます。
ただし、症状の程度や利用時間によっては腰に負担がかかり、かえって痛みが増してしまう恐れもあるため注意が必要です。
エアロバイクを持っていない場合は、痛みが出ない程度の距離と時間を意識しながらサイクリングを行いましょう。
脊柱管狭窄症は体を反らせるストレッチに注意!
脊柱管狭窄症は、脊柱管が狭くなることで神経が圧迫され、腰や足に痛みが出る病気。
脊柱管狭窄症と診断を受けた人の中には、自分で治そうとストレッチを行っている人もいるかもしれませんが、背中を反らせたりひねったりなど、無理な動きをすると神経を圧迫して痛みやしびれを悪化させることになるため注意が必要です。
また、脊柱管狭窄症は自然に治ることはありません。症状が進行してしまうと手術が必要になることもあるため、早めに医療機関を受診して適切な治療を受けるようにしましょう。
ストレッチについても、医師と相談しながら適切に行うことをおすすめします。
※効果には個人差があります。試してみて異変を感じる場合はおやめください。
監修者プロフィール:簑輪 忠明さん
医療法人OJ会の理事長。ILC国際腰痛クリニックの理念である「腰痛治療の効果100%を目指してよりラクにリスクの少ない治療を安心・納得して受けていただく」ために、ひとりひとりの患者様に寄り添い30分以上の時間をかけてじっくりと丁寧に診察。腰痛や下肢の症状を可能な限り無くすことができるよう世界の先進腰痛治療技術を駆使し治療にあたっている。
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