体を支え、内臓を動かし、血を作る。

背骨のゆがみは自律神経に影響も。動かし方の注意点

公開日:2018.08.08

更新日:2024.01.19

肩こりや腰痛など、一見背骨と関係なさそうに思える不調ですが、実は背骨のゆがみや、動きが悪くなることで起こります。なんと、読者が抱える不調の10位までは、すべて背骨のゆがみに関わるもの! 背骨と体の不調の関係や予防法について解説します。

背骨が体調の9割を決めている
背骨のゆがみに要注意!9割の体調不調の原因はコレ

読者が抱える不調10位まで、すべて背骨のゆがみが関係!

背骨のゆがみが関係! 女性の不調ランキング

  1. 77人 肩こり 
  2. 71人 目の疲れ 
  3. 55人 腰痛 
  4. 49人 ひざの痛み 
  5. 40人 ドライアイ 
  6. 36人 物忘れ 
  7. 35人 不眠 
  8. 32人 手足の関節の痛み 
  9. 30人 頻尿 
  10. 29人 首の痛み 

※このアンケートは、ハルメクが2017年5月12日~14日に実施。インターネット上でアンケートを送り、50歳以上の女性219人から回答を得ました。

肩こりや腰痛、ひざの痛みは、猫背などで頭の重心がずれることでその重みが肩や腰、ひざにかかり、引き起こされます。一方、背骨がゆがむと、内臓や神経が圧迫され、目のトラブルや不眠、物忘れ、頻尿なども招いてしまいます。

私たちの命を支える、背骨の重要な役割とは

背骨の仕組み

背骨は、7個の頸椎、12個の胸椎、5個の腰椎に、仙骨、尾骨で構成されています。

「この一つ一つの骨(椎骨)が重なって絶妙なS字を描き、上半身の重みを分散するからこそ、歩いたり体をひねったり、自由に動けるのです」と、背骨と体の不調の関係に詳しい鍼灸師の石垣英俊さん。

さらに、背骨の中心には脊髄が通っていて、そこから椎骨の隙間を通って末梢神経が全身に伸びています。「熱い、冷たいといった感覚を瞬時に感じられるのも、内臓がしっかり働くのも、背骨が神経を守り、手足やさまざまな臓器に神経をつなげているからです」と話すのは、脳神経外科医の工藤千秋さん。他にも、胸椎にある造血細胞が新鮮な血液を作り出すなど、背骨は私たちの命を支える重要な役割を果たしています。

姿勢を正すだけで脳の血中酸素が122%に

背骨は体の広範囲と結びついているため、「不調の多くは、背骨の状態に起因している」と、石垣さんと工藤さんは口をそろえます。実際、ハルメクのモニター組織「ハルトモ」に「気になる不調」を聞いたところ、間接的な原因になるものも含めると、10位までの不調のすべてに背骨が関係していました(上のランキング参照)。

「背骨のゆがみは、加齢や運動不足による筋肉の衰えなどで進行します。例えば猫背になると頭の重心が前に傾き、頭の重さが直接首や肩、ひざ、腰に負荷をかけ痛みを招きます。さらに肺や心臓が圧迫されて呼吸が浅くなるので、酸素も十分に運ばれなくなる。結果、脳の活動量が落ち、気分の落ち込みにもつながるのです」

実際、工藤さん独自の実験では、姿勢を正しただけで脳の血中にある酸素量が平常時の122%に上がるという結果も出ています。

内臓を守りつつ正しい位置にキープ

神経を保護し全身につなぐ上半身の重みを支えるひねる、曲げるなど体を自由に動かす新鮮な血を作り全身の細胞を活性化

背骨のゆがみが引き起こすこと

(右)背骨が曲がってバランスが悪いと…
背骨がゆがみ、頭の重心が前後にずれると、足腰に余計な負荷がかかり、痛みの原因に。神経が圧迫されることで、内臓の働きが悪化することも。

(左)背骨が真っすぐだと…
背骨が適正なS字カーブを保っていれば、頭の重さが背骨でうまく分散され、腰やひざなどの関節も内臓も、健やかに働ける。

さらに、背骨がゆがむことで自律神経にもトラブルが

「背骨のゆがみは自律神経のバランスの崩れを招き、不眠や震え、頻尿を引き起こします。多くの方が悩む疲れ目やドライアイも、自律神経の乱れで目の調整機能が弱って起こることも多いのです」

そう話す工藤さんが危惧するのが、感覚神経や運動神経の働きに欠かせない「ミエリン」という構造への影響です。「ミエリンは、電気コードの覆いのように神経に巻きつき、電気信号が早く伝わる手助けをしています(下図参照)。背骨がゆがみ、神経が圧迫されると、このミエリンが傷ついて溶け、電気信号が止まったり、外へもれ出てしまい、体が思うように動かなくなる。転倒や手足の痛み、しびれにも、実は背骨の問題が潜んでいるのです」
 

神経伝達に欠かせない「ミエリン」の仕組みとは?

ミエリンが正常な場合

ミエリンが絶縁体の役割を果たし、脳からの電気信号がミエリンを飛び越えるため、より早く伝わる(跳躍伝導)。

ミエリンの仕組み

ミエリンが傷ついた場合

背骨のゆがみなどで神経が圧迫され、神経に酸素がいかなくなると、ミエリンが溶け、電気信号が伝わりにくくなる。

傷ついたミエリンの仕組み

 

背骨のゆがみを防ぐ方法は?

では背骨のゆがみを防ぐにはどうしたらいいのでしょう。

「背骨は全体が連動して動くので、一部でも痛めたり、周囲の筋肉が衰えるだけでゆがみを招きます。特に胸椎は普段動かし足りない方が多いので、積極的に動かすこと。そして痛めやすい頸椎と腰椎は、苦手な動きを知り、日常生活で気を付けることです」と石垣さんはアドバイス。

また工藤さんによれば、溶けたミエリンも、背骨の周囲の筋肉を動かし、酸素や栄養を送ることで修復できるのだそうです。

頸椎(首の骨)の役割とゆがみを防ぐ方法

頸椎(首の骨)でやってはいけない動き
頚椎をゆがませる動き​​​​

回す動作もでき、背骨で一番可動域が広い。頸椎がゆがんで頭が前に出ると、首に負荷がかかり、頭痛や肩こりの原因にも。よく動く分、急にねじると痛めやすい。本を長時間うつむいて読む姿勢も、頸椎のカーブ(前弯)がなくなるなどのゆがみを招く。

胸椎(胸の骨)の役割ととゆがみを防ぐ方法

胸椎でやってもいい動き
胸椎で行ってもいい動き方

肋骨につながり、心臓や肺を守って、呼吸にも大きく影響。自律神経との関わりが深く、動きが悪いと内臓や心の不調が起こりやすい。胸椎を意識的に使い、柔軟性を保つことが頸椎と腰椎を痛めないコツ。振り向く際も首や腰からでなく腕からねじるよう意識を。

腰椎(腰の骨)の役割ととゆがみを防ぐ方法

腰椎で行ってはいけない動き
腰椎をゆがませる動き

上半身を支えるため、椎骨もクッションである椎間板も一番大きい。その分、少しの負荷でも椎間板が傷つきヘルニアを起こしやすい。椎骨同士が組み合っているため、特に前かがみにねじると痛めやすい。物を拾う際は、股関節を使って拾う物の方に体を向けて。頭の重さでさらに背骨が曲がり内臓や神経を圧迫!

次の記事では、「パーフェクト背骨」を目指す画期的なメソッドをご紹介します。さっそく挑戦してくださいね。

 

教えてくれた人

神楽坂ホリスティック・クーラ代表

石垣英俊(いしがき・ひでとし)さん
1976(昭和51)年、静岡県生まれ。鍼灸師、応用理学士。神楽坂ホリスティック・クーラ代表。

くどうちあき脳神経外科クリニック院長

工藤千秋(くどう・ちあき)さん
1958(昭和33)年、長野県生まれ。脳神経外科医。くどうちあき脳神経外科クリニック院長。

 

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取材・文=新井理紗(ハルメク編集部) 撮影=中西裕人、イラストレーション=田渕正敏

※この記事は、2017年9月号「ハルメク」に掲載した特集「しなやか背骨で不調知らずのカラダに!」内、「体調の9割は、背骨が決め手!」を再編集、掲載しています。

雑誌「ハルメク」

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