医師監修┃心筋梗塞、脳卒中…怖い病気は血管から対策

ストレスも要注意!動脈硬化の原因と検査・予防法

加藤大也
監修者
たいや内科クリニック
加藤大也

公開日:2024.03.11

「ストレス」は動脈硬化を進行させる原因のひとつです。高血圧・血栓・悪玉コレステロールの増加などにも影響しています。強いストレスは急性心筋梗塞の引き金となることも。動脈硬化の原因や検査方法、予防法について医師監修のもと解説します。

ストレスは動脈硬化を進行させ心筋梗塞リスクを高める

ストレスは動脈硬化を進行させ心筋梗塞リスクを高める

一度発症すると致死率約40%にもなるという恐ろしい病気、心筋梗塞

心筋梗塞を引き起こす主な原因といわれているのが、動脈硬化。そして、その動脈硬化を招く原因の一つとなるのが「ストレス」です。

現代社会は、過剰なストレスを感じることも多いです。

デジタル化によって溢れ返る膨大な情報によるストレス、時間に追われるストレス、社会の中での対人ストレス。

さらに50代は、家庭や子どものことの他にも、自分の仕事や更年期症状による不調・気分の落ち込み、親の介護や死別など、大きなストレスがかかるライフイベントが多くなる時期です。

ストレスは適度であれば脳の活性化や判断力・行動力の向上に役立つといわれているものの、慢性的なストレスは体に負担をかけてしまいます。

動脈硬化がすでに進行している場合、強いストレスが引き金となり、急性心筋梗塞を引き起こすこともあります。

閉経後は動脈硬化性疾患に要注意!

動脈硬化に影響する要素はいくつもありますが、女性ホルモンもその一つです。

閉経前の女性は、同年代の男性と比べると動脈硬化性疾患(狭心症、心筋梗塞、脳卒中、脳梗塞、大動脈瘤など)の発生頻度が少なめです。しかし、閉経後は少しずつ増加していきます。

これは、閉経に伴って大きく減少する女性ホルモン「エストロゲン」に動脈硬化の原因となる血中の悪玉コレステロールの増加を抑えて、同時に動脈硬化を防ぐ善玉コレステロールを増加させる働きがあるから。

また、エストロゲンの作用の一つに「血管拡張作用」があり、これによって血管が拡張し、血管に加わる抵抗が減って血圧が低下します。

女性の血管を守る働きを持つエストロゲンが低下する閉経後は、動脈硬化だけでなく高血圧、脂質異常症、糖尿病、肥満のリスクが高まります。

だからこそ、健康的な体を保つためには食事を変えたり、運動習慣をつけたりするなど、健康への意識と行動を変えないといけません

厚生労働省の『令和4年(2022) 人口動態統計月報年計(概数)の概況』によれば、「心疾患(高血圧性を除く)」は、がんに続いて2番目に多い日本人の死因となっているため、注意が必要です。

ストレスで動脈硬化が進行する原因・仕組み

ストレスで動脈硬化が進行する原因・仕組み

ストレスがなぜ、動脈硬化のリスクを高めてしまうのでしょうか?

ストレスを受けると、「交感神経の活動を高める」「コルチゾールが盛んに分泌される」「ストレスの影響による生活習慣の乱れ」といったことが起こり、これらが動脈硬化のリスクを高めることになります。

ここから、それぞれの原因や仕組みについて詳しく解説します。

交感神経が活発になる

ストレスを受けると、自律神経の一つである「交感神経」が活発になります。

緊張や不安などのストレスを感じたときに心臓がドキドキするのは、交感神経の働きによって脈が速くなり、血圧が上がるためです。

自律神経は体温調節・血液循環・消化といった身体機能を調節している神経で、体を活発・緊張させる「交感神経」と、体を休ませ・リラックスさせる「副交感神経」の2つがバランスを取り合っています。

一時的なストレスや適度なストレスであれば問題はありませんが、過剰なストレスや慢性的なストレスがかかると交感神経が優位な状況が続き、自律神経のバランスが崩れてしまいます。

これにより血管や心臓に負担がかかり続けると、血管壁が傷つきやすくなり、動脈硬化につながるのです。

財団法人 循環器病研究振興財団の『知っておきたい循環器病あれこれ ストレスと循環器病―ストレスとつきあうために―』によれば、イタリアで「沈黙の誓い」を守る修道女たちの血圧の変化を観察したところ、血圧の上昇が見られなかったという結果が出ています。

また、修道女たちは信者の女性たちに比べ、循環器病を発症する割合も低かったそうです。

コルチゾールの過剰分泌

ストレスを受けると、副腎皮質からコルチゾールが分泌されます。コルチゾールはストレスを受けたときに急激に分泌量が増加することから、「ストレスホルモン」とも呼ばれます。

コルチゾールは生命維持に欠かせないホルモンであるものの、慢性的なストレスによって過剰分泌されると、血圧が上昇しやすくなります。

また、コルチゾールの材料となるLDLコレステロール(悪玉コレステロール)も増加します。LDLコレステロールは増え過ぎると血管壁にたまってプラークとなり、血管を狭くして動脈硬化を進行させる原因です。

ストレスによる生活習慣の乱れ

暴飲暴食、飲酒量の増加、タバコを吸いたくなる、睡眠不足など、ストレスがたまったときは生活習慣が乱れてしまいがちです。

生活習慣の乱れは血圧を高め、動脈硬化を促進させてしまいます。

ストレスによって規則的な生活が乱れると、これがさらなるストレスを生み、悪循環につながってしまうことも。

ストレスが原因となり食事や生活習慣が乱れている場合は、できることから少しずつ対策していきましょう。

ストレス以外の動脈硬化の原因

ストレス以外の動脈硬化の原因

ストレスだけでなく、動脈硬化は生活習慣と深い関係があります。

ここからは、ストレス以外の動脈硬化の原因について詳しく紹介します。

肥満(メタボリックシンドローム)

肥満(メタボリックシンドローム)も、動脈硬化と深い関わりがある要素です。

特に、内臓周辺に脂肪がたまる内臓脂肪型肥満になると、肥大化した内臓の脂肪細胞から血管を傷つける物質が分泌され、血管に炎症を起こし、動脈硬化を進行させてしまいます。

また、内臓脂肪が増えると血中の中性脂肪やLDLコレステロールが増えてしまい、これも動脈硬化につながります。

ただし、高齢になると痩せ過ぎもサルコペニアやフレイルに注意が必要です。BMI22が適正体重といわれるため、痩せ過ぎ・太り過ぎを避け、適正体重の維持を目指しましょう。

脂質異常症

脂質異常症とは、血液中の脂質の値が正常域をはずれた状態のことです。

LDLコレステロール(悪玉コレステロール)・中性脂肪(トリグリセライド)の増え過ぎや、HDLコレステロール(善玉コレステロール)が減った状態を指します。

コレステロールの中でも注意したいのが、「小型LDLコレステロール」です。

小型LDLコレステロールは「超悪玉コレステロール」と呼ばれ、サイズが小さいため血管壁に入り込んで酸化しやすく、動脈硬化の大きな危険因子です。

高血圧

高血圧とは、安静時の血圧が「140/90mmHg以上」の状態のことです。

高血圧はさまざまな病気のリスクを高めるものの自覚症状がないことが多く、放置されがち

しかし、血圧が高い状態が続くと血管壁が傷つき、血管内にコレステロールが入りやすくなります。また、血管に負担がかかり続けることで、動脈硬化が進んでしまいます。

糖尿病(高血糖)

糖尿病は遺伝的な影響もありますが、生活習慣にも大きな影響を受けます。

血糖値が高い状態が続くと血管壁への付着物が増加したり、血管壁が傷ついたりして、動脈硬化を招きます。特に、食後に血糖値が急上昇する「食後高血糖」には注意が必要です。

生活習慣(食生活や運動不足)

食生活や運動不足といった生活習慣も、動脈硬化に大きく関わっています。

時代の流れに伴い、日本では食の欧米化が進みました。また、今の時代は24時間営業の店も多く、食べたいときにいつでも脂肪や糖分たっぷりの食事ができる環境です。

脂質や糖質、コレステロール、塩分の取り過ぎ、食べ過ぎは肥満や脂質異常症、糖尿病などのリスクを高めます。

また、運動不足も肥満を招き、動脈硬化の原因になります。

喫煙

喫煙は動脈硬化をはじめとして、がんや消化器疾患、呼吸器障害などさまざまな病気のリスクを高める原因です。

タバコを吸うと活性酸素が増えて、血管壁内のコレステロールを酸化させてしまいます。

また、慢性的な炎症反応を引き起こしたり、血管を収縮させて高血圧につながったりと、血栓も起こりやすくなります。

加齢

健康な人でも、年齢を重ねるにつれて血管が硬くなり動脈硬化が進みます。特に、60歳以降からは急速に血管が硬くなっていくといいます。

食事や生活習慣に気をつけて過ごし、タバコを吸わず、しっかり運動している人でも、加齢に伴う動脈硬化は避けられません。

だからこそ、それ以外の原因をなくして動脈硬化の進行を遅らせることが大切です。

遺伝

遺伝的な要素も動脈硬化のリスクに影響しています。

親や兄弟・姉妹など家族に心筋梗塞や脳卒中などの病気になった人が多い場合、動脈硬化になりやすい可能性があるでしょう。

その他さまざまな要素の影響

その他にも動脈硬化は、高尿酸血症や慢性腎臓病、骨粗鬆症、睡眠時無呼吸症候群といった病気との関連があると考えられています。

また近年では、腸内細菌との関連性も注目されています。

滋賀医科大学が行った研究では、動脈硬化の進行度と腸内の一部の乳酸菌増加には関連があるという結果が出ました。

動脈硬化に関係する菌は特定できていないものの、今後の研究により、便内の腸内細菌を調べることで病気の進み具合を示す指標となることが期待されています。

動脈硬化が原因で起こる主な病気

動脈硬化は自覚症状がほぼないものの、知らぬ間に進行して命に関わる重大な病気につながります。動脈硬化が原因で起こる主な病気は以下の通りです。

  • 虚血性心疾患(狭心症・心筋梗塞)
  • 大動脈弁狭窄症
  • 大動脈瘤
  • 大動脈解離
  • 脳卒中
  • 脳梗塞
  • 閉塞性動脈硬化症
  • 腎臓の病気(腎硬化症、萎縮腎、尿毒症など)
  • 血管性認知症 など

動脈硬化の検査方法

動脈硬化の検査方法にはさまざまな方法がありますが、症状がない人は、できるだけ体に負担のない検査を行うことが一般的です。

  • 頸動脈エコー検査(超音波検査)
  • CT検査
  • MRI検査
  • 血管の機能を見る検査(PWV、FMD、ABIなど)
  • X線検査
  • 心電図検査 など

頸動脈エコー検査は、首にゼリーを塗り超音波を当てて「血管壁のプラークや血栓の有無」「血管壁の厚さ」「血管の内側の状態」を調べる方法です。

痛みや被爆もなく、5~10分程度で終わり、検査費用も3割負担の場合は1500~2000円ほど。40代以降であれば、自覚症状がなくても一度検査を受けてみるといいでしょう。

動脈硬化を予防する方法

動脈硬化を予防する方法

動脈硬化を予防するには、ストレス対策や生活習慣の乱れを直すといった方法が有効です。

  • ストレスをためない工夫、定期的なストレス発散
  • 食生活の見直しやカロリーコントロール
  • 適度な運動
  • 節煙や禁煙

すでに動脈硬化が進行しているといわれた場合は、医師の指示に従いながら生活習慣の改善に取り組みましょう。

ストレス軽減&生活習慣の乱れを直して動脈硬化を防ごう

ストレスは動脈硬化を進行させる原因の一つです。強いストレスは急性心筋梗塞のような重大な病気の引き金にもなるため、できることから対策を行っていきましょう。

動脈硬化は加齢に伴って進行していくものでもあり、どんな人でも年を重ねることで血管が硬くなります。

そのため、加齢以外の動脈硬化の要因について対策し、しなやかで強い血管を保つことが大切です。

監修者プロフィール:加藤大也さん

加藤大也さん

たいや内科クリニック院長。1997年、藤田保健衛生大学(現・藤田医科大学)卒業後、同大学院医学研究科内分泌・代謝内科学修了。2003年4月から同大学医学部内分泌・代謝内科助手を務める。2010年5月、JA愛知厚生連豊田厚生病院内分泌代謝科病棟部長などを経て2022年5月、たいや内科クリニックを開院。藤田医科大学医学部客員講師・医学博士・糖尿病専門医・総合内科専門医・甲状腺専門医。糖尿病、生活習慣病を中心に、日々診療に取り組む。患者さん目線で分かり易い説明がモットー。

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