医師監修│寒さ?チアノーゼ?爪の色で健康チェック!

爪が紫になるのはなぜ?病気・原因・受診の目安

石橋彩里
監修者
医療法人社団光陽会 みずほ台サンクリニック
石橋彩里

公開日:2023.09.11

爪の色が紫・赤紫・青などに変色している原因には「内出血」「血行不良」「血液中の酸素が少ない(チアノーゼ)」などが考えられます。すぐに治る場合は問題ないケースも多いものの、繰り返す場合は要注意。考えられる病気や受診の目安を解説します。

爪が紫色になるのはなぜ?色が悪くなる仕組み

一般的に爪と呼ばれているのは、「爪甲(そうこう)」と呼ばれる部分です。爪甲の下の毛細血管の色が透けて見えるため、健康な爪の場合は「全体的に薄いピンク色」をしています。

酸素を多く含んだ血液は鮮やかな赤色をしていますが、酸素が少ない血液は少し黒っぽい赤色(赤紫・紫色)のようになります。また、血の巡りが悪いときも、爪の色が悪くなります。

爪は「健康のバロメーター」とも呼ばれる部分です。

紫や青に変色したときだけでなく「爪に黒い縦線ができる」「爪に白い点や選ができる」「爪が割れる」「爪に横溝ができる」「爪がボコボコになる」「爪のへこみや蒼白(貧血の可能性が高い)」など気になる症状があれば、放置せずに早めに原因を調べて対処しましょう。

爪が紫や青になる原因

爪が紫や青になる原因

ここからは爪が紫や赤紫、青などになる原因について詳しく見ていきましょう。

外傷による内出血(爪下血腫)

爪の根元をドアに挟んだり、指をどこかに強くぶつけたり、爪の上に物を落としたりすると、爪の内部で内出血が起こることがあります。

この出血が爪越しに透けることで、爪が紫や赤い色に見えることがあります。場合によっては、時間が経つにつれて赤から黒に変色していくこともあるでしょう。

爪の下に起こる内出血を、「爪下血腫(そうかけっしゅ)」といいます。

爪下血腫の場合、痛みがなければ放置しても問題はありません。内出血部分は爪が成長するにつれて移動していき、最終的にはなくなります。

爪は爪母(爪の付け根部分)で作られ、10 日で1mmほど伸びます。爪が入れ替わるまでは3か月〜半年ほどかかるため、消えるまでにはそれくらいかかるでしょう。

痛みがある場合や爪が剥がれそうなときは、穴をあけて血を抜くなど病院で処置を受けた方がいいケースもあります。

靴のサイズが合っていない

爪下血腫は、ぶつけるなどの外傷の他にも、指先で踏ん張るスポーツをしている人や、サイズが合っておらずきつ過ぎる靴、先端が狭く尖った靴などを履き続けた場合にも起こることがあります。

靴のサイズ選びは、実は多くの人が間違っているともいわれています。足の爪が紫や黒に変色していたり、特定の靴を履いたときに足が痛くなったりする場合は、この機会に靴を見直してみましょう。

女性の足の悩みの中でも代表的なものである「外反母趾(がいはんぼし)」になっている人は、外反母趾におすすめの靴や選び方を参考にして自分に合った靴を探すのがおすすめです。

冷え性などによる血行不良

急に寒いところに行ったときや、末端冷え性があると、血管が細くなって血行不良が起こり、爪の色が紫になったり、黒ずんで色が悪くなったりすることがあります。

冷えが原因の場合は、体が温まってくるにつれて、爪の色は元の色に戻っていくのが普通です。このようなケースであれば心配はいらないでしょう。

しかし、冷える冬の季節だけでなく、夏の時期でも爪が紫がかっているようなら一度病院で診てもらうようにしましょう。

レイノー現象(レイノー病・レイノー症候群)

レイノー現象によって爪が紫になっている可能性もあります。

レイノー現象とは、冷たいものを触ったときや寒い場所にいるとき、精神的に緊張したときなどに指先が突然白くなったり、紫色になったりする現象のことです。冷えることで指先の血行が悪くなることで、皮膚の色が変化します。

一般的には、指先の色が「白→紫→赤」の順番で変化することが多いとされています。これは、手足の血行が悪くなることで、皮膚の色が蒼白・紫色(チアノーゼ)になり、血液の流れが回復すると今度は充血が起こり、赤くなるためです。

レイノー現象のうち、原因がわからないものを「レイノー病」、なんらかの病気が原因で症状が起こっているものを「レイノー症候群」と呼びます。

レイノー現象が見られ、指にズキズキした痛みがある場合、強皮症(自己免疫疾患)の可能性も考えられるため早めに病院を受診しましょう。

チアノーゼ

爪が「黒っぽい紫」「暗い赤紫」「青紫」などの色になっている場合は、チアノーゼの状態と考えられます。チアノーゼとは、爪や皮膚、粘膜などが青っぽく変色する状態のことです。体内を循環している血液に含まれる酸素が不足することで、このような症状が表れます。

チアノーゼには「中心性チアノーゼ」と「末梢性チアノーゼ」があります。

  • 中心性チアノーゼ……呼吸器・循環器の障害により中枢の動脈血の酸素飽和度が低下して起こる。全身の皮膚や粘膜に症状が現れる
  • 末梢性チアノーゼ……末梢の毛細血管に障害が起こり、血液がうっ滞することで起こる。手足や口のまわりなどに症状が現れる

中心性チアノーゼは血液中の酸素が全身で低下している状態で、爪、舌、口の中、まぶたの裏側、全身に症状が出ます。呼吸器疾患や循環器の障害による肺や心臓の病気、血液疾患など重篤な疾患の可能性が考えられます。

末梢性チアノーゼの場合は、症状が見られる範囲が限られ、手足や口のまわりにのみ症状が現れることが特徴です。心拍出量の低下、末梢血管の閉塞(閉塞性動脈硬化症など)などが考えられるでしょう。なお、レイノー現象もチアノーゼに含めることがあります。

病気などによるもの

病気や、生まれつき心臓や血管に奇形がある場合、ヘモグロビンに異常がある場合にも、爪の色が悪くなることがあります。

病気によって末端に血液を送る心臓の力が弱まって、血行障害が起きた場合も、爪が紫になることがあります。

爪が紫や青になった場合に考えられる病気

爪が紫や青になった場合に考えられる病気

爪をぶつけた場合や、寒いところで一時的に爪が紫になった場合などは、問題ないケースがほとんどです。しかし、なんらかの病気が原因で爪が変色している可能性もあります。

ここからは、爪が紫や青になった場合に考えられる病気について解説します。

肺の病気

慢性閉塞性肺疾患(COPD)や肺線維症(間質性肺炎)など、肺の病気が重症化すると血液に含まれる酸素が少なくなり、爪が紫になる、顔色が悪くなるなどの症状が起こることがあります。

「慢性閉塞性肺疾患(COPD)」は、息切れ、長く続く咳や痰などの症状がみられる病気です。気管支や細気管支、肺胞に炎症が生じることで症状が起こります。原因のほとんどはタバコによるもので、40歳以上の喫煙者や喫煙歴がある人に多く見られます。

「肺線維症(間質性肺炎)」は、肺胞の壁に炎症や損傷が起こり、線維化(壁が厚く硬くなること)して血液中に酸素が取り込まれにくくなる病気です。金属やアスベストなどの粉塵吸入、薬剤によるもの、自己免疫の異常によるものなどさまざまな原因が考えられます。

閉塞性動脈硬化症

足の爪や足の指が紫色〜黒っぽくなる、足先が冷たい、足が痛い、足先の傷がなかなか治らない、歩いてしばらくするとふくらはぎが痛くなるが休むと落ち着くなどの症状がある場合、「閉塞性動脈硬化症(末梢動脈疾患)」の可能性が考えられます。

閉塞性動脈硬化症とは、手足の血管に起こる動脈硬化のことで、手足が冷たく感じる、しびれ、歩くときの痛みなどが見られます。悪化すると手足に潰瘍ができ、壊死することもあるため注意が必要です。

閉塞性動脈硬化症の症状は、以下の4段階に分けられます。

  • 初期症状……手足が冷たくなったり、青白くなったり、紫になったりする
  • 第2期……一定距離を歩くとふくらはぎに痛み・しびれが起こるが、しばらく休むと治まる(間歇性跛行(かんけつせいはこう))
  • 第3期……安静にしているときでも手足が痛む(安静時疼痛)
  • 第4期……手足に潰瘍ができ、壊死する

閉塞性動脈硬化症を発症した場合、手足の血管だけでなく全身の血管で動脈硬化が進行している可能性があるでしょう。

糖尿病

足の爪だけが暗い赤紫になっている場合や、爪に線ができたり白くなる場合、糖尿病の影響が考えられます。

糖尿病になると血糖値のコントロールが難しくなることで、足の血管が狭くなります。すると、体の末端部分である爪に栄養が届きにくくなるため、爪の状態が悪くなり、さまざまな症状が現れます。爪の変色もその一つです。

糖尿病で高血糖の状態が長く続くと、知覚神経・運動神経・自律神経などに障害が生じる「糖尿病神経障害」が起こることがあります。糖尿病神経障害では痛みや冷たさを感じにくくなることがあり、爪が紫色に変色していても、本人が気づかないこともあります。

「皮膚が紫色になる」「足が冷たい」といった症状のある人は、進行すると壊疽が起こる糖尿病性足潰瘍につながりやすいため注意が必要です。

心不全、先天性心疾患など心臓の病気

心不全、先天性心疾患など心臓の病気でも、爪の色が紫色になることがあります。心臓の病気が原因で、うまく血液を送り出せないと、爪や顔色が紫になります。

メラノーマ

爪下血腫と間違われやすい病気として、メラノーマ(悪性黒色腫)があります。がん細胞がメラニン色素を大量に産生することで、黒っぽく見えることが多いです。

メラノーマは爪下血腫と似ていますが、爪下血腫の場合は、黒っぽく見えてもよく見ると紫や赤紫に見えるところがあります。

多血症(赤血球増多症)

健康な爪はピンク色をしていますが、爪が濃い赤や真っ赤になっている場合は、多血症(赤血球増多症)の可能性があります。

多血症(赤血球増多症)とは、血液の中に含まれる赤血球やヘモグロビンの量が基準値よりも増加してしまう病気です。赤血球が増え過ぎることで血液がドロドロになり、高血圧や脳梗塞、心筋梗塞などを引き起こすこともあります。

爪が紫や青になっているときの受診の目安

爪をぶつけたときや、寒いときに一時的に爪が紫色や青になっている場合は、それほど心配はいらないでしょう。

しかし、症状が続く場合や他にも気になる症状がある場合は、なんらかの病気が隠れている可能性もあるため、放置せず病院を受診することが大切です。

また、以下のような症状が見られる場合は、急いで医療機関を受診しましょう。

  • 息苦しさを感じる
  • 急に呼吸が苦しくなった
  • 熱がある
  • ぐったりしている
  • 前にチアノーゼを起こしたことがある
  • 徐々に症状が悪化してもとに戻らない
  • 短い時間で爪や顔色が悪くなったり良くなったりを何度も繰り返す

爪の紫色・青色の変色は放置せず病院へ

爪の色は、血行不良や血液中の酸素が少なくなることで紫や青など、色が悪くなることがあります。

爪をどこかにぶつけた場合や、寒さのせいなど、原因がわかっているのであれば爪が紫になっていても心配いらないケースがほとんどです。

しかし、症状が続く場合や他にも症状が見られる場合、なんらかの病気が原因になっている可能性があるため早めに病院を受診しましょう。

監修者プロフィール:石橋彩里さん

石橋彩里さん

2018年、医療法人社団光陽会 みずほ台サンクリニック理事長に就任。当院では“必要な医療をもっと身近に”をモットーにし保険診療から自費診療まで幅広く医療を提供しております。

昔から続く内科や透析だけでなくコロナ対応や美容医療、障がい者歯科など時代の流れやニーズに合わせた医療体制でより一層患者様に寄り添うクリニックとして成長してまいります。

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