【医師監修】病気のサイン?縦割れ、横割れに注意

爪が割れる理由は?症状や原因・トラブルを防ぐ対処法

豊田雅彦(うるおい皮ふ科クリニック 院長)
監修者
うるおい皮ふ科クリニック 院長
豊田雅彦

公開日:2021.11.30

更新日:2023.09.19

更年期のトラブルの一つ、爪。“割れる”“欠ける”は、加齢や乾燥などが原因で引き起こされます。他に病気が原因のケースも! 縦に割れる「爪甲縦裂症」、二枚爪を指す「爪甲層状分裂症」などの症状・原因を教えてもらいました。割れるのを防ぐ対策も必見!

更年期は、爪の割れ・乾燥に要注意!

更年期になると、女性ホルモンの低下によって保湿力が下がることで爪が乾燥したり、割れたりしやすくなります。また、女性ホルモンの分泌量の減少が爪の主成分であるケラチンの保持力に影響することも、爪が割れやすくなる原因の一つです。

体の末端にある爪は栄養が届きにくく、体調不良や栄養不足のサインが出やすいため「健康のバロメーター」とも呼ばれています。爪にトラブルが生じたときは、症状や原因をチェックしてみましょう。

爪の異常としては、①形状の変化、②色の変化、③爪の周辺皮膚の変化などが挙げられます。ここからは、爪の形の変化として「爪が割れる、割れやすくなった」などのトラブルの症状と原因について見ていきましょう。

爪が割れるなどのトラブルの症状・原因:爪が割れる予備軍

爪が割れるなどのトラブルの症状・原因:爪が割れる予備軍

健康な爪は全体的に薄いピンク色をしており、表面はなめらかな状態です。割れや欠け、縦線や横線が出るといった症状が出ている場合はなんらかの原因が考えられます。

爪が割れる・欠ける

爪の主成分であるタンパク質のケラチンが不足あるいは脆弱化すると、爪が縦や横に割れたり、欠けたりすることがあります。爪の先端部分のみ割れることもあれば、爪の根元の方まで深く割れてしまうことも。

加齢によるケラチンの不足、マニキュアや除光液の使用、洗い物や料理など水仕事による乾燥、栄養不足、紫外線による日焼けなどが爪が割れる原因です。

爪に縦線が出る(爪甲縦条)

爪に縦線(縦筋)が出るというのもよく見られるトラブルの一つです。爪床(そうしょう:爪甲の下にあり、爪甲はこの上を伸びる)の皮膚の凹凸が縦に平行に走っているのを反映したものです。これは「爪甲縦条」とも呼ばれ、主に加齢が原因で起こる症状です。爪で分かる唯一の老化現象とも言えます。50代を過ぎた頃から、少しずつ症状が出やすくなります。

年齢によるものであるため心配し過ぎる必要はありませんが、症状が進むと爪が縦に割れやすくなるため、ケアをしておくといいでしょう。

爪に横線が出る(爪甲横溝)

爪に横線(横筋)が出ている場合、栄養不足やなんらかの原因で爪の成長が一時的に妨げられている可能性が考えられます。

横線の幅は障害が起こっていた期間、深さは障害の程度の大きさを示しており、悪化すれば爪が横にパックリと割れてしまうことも。原因としては糖尿病、感染症、薬剤の影響、亜鉛欠乏症、溶連菌感染症などが考えられます。爪に横走する白線を認めた場合は、数ヵ月前にかなり重症の病気(爪母の障害)になっていたということが示唆されます。

爪が二枚になる(二枚爪/爪甲層状分裂症)

二枚爪は正式には爪甲層状分裂症といい、乾燥して水分が不足した爪に、爪切りなどの大きな力がかかることで爪が二枚に割れてしまうことを指します。爪の先端部表面が薄く層状にはがれます。薄くはがれた爪の一部は白濁して見えます。原因としては、爪の割れと同様に、爪の水分量の低下や栄養不足が関係します。水分が失われた爪の先に爪切りなどで大きな力が加わると、二枚爪を生じやすくなります。そのため、夏よりも、空気が乾燥する冬に多くみられます。また、鉄欠乏性貧血が原因で起こることもあります。日常的にパソコンのキーボードを叩くなどデスクワークをしている人も、爪にダメージが蓄積され、二枚爪になることがあるようです。

爪が薄い

低色素性貧血(赤血球中にあって酸素を運ぶ役目をしているヘモグロビンの減少)、甲状腺機能亢進、末梢循環障害、しもやけ(凍瘡)やエリテマトーデス(膠原病の一種で爪周囲にも赤みが認められることが多い)など、爪母になんらかの影響が及んで爪が薄くなることがあります。

爪が濁る・肥厚する

爪白癬(爪水虫)になると、爪の色が濁って分厚くなります。カビの一種である白癬菌に感染することで起こり、特に足の爪に多くみられます。爪の先端から白癬菌が楔状に入り込むなどの場合、その部位の爪甲が脆くなり割れることがありますし、肥厚した爪に亀裂が入ることがあります。

割れるなど爪にトラブルが起こる病気:爪が割れている人

割れるなど爪にトラブルが起こる病気:爪が割れる現実・実際

ここからは、割れや欠けなど、爪にトラブルが起こる病気について解説していきます。

爪甲縦裂症

爪甲縦裂症(そうこうじゅうれつしょう)とは、爪が縦に割れる病気のことです。一部のみ割れることもあれば、根元まで割れてしまうこともあります。発症メカニズムは明確には解明されていませんが、①乾燥や除光液の使用などで爪の水分が失われたり、②妊娠や授乳・加齢によって爪の主成分であるケラチンタンパク質が不足したり、③爪への外力(水仕事で使う洗浄力の強い洗剤など)が繰り返し加わること、などにより脆くなり割れやすくなります。後爪郭(爪の根元の爪母の部分を覆っている皮膚)の小さな傷が、爪上皮(甘皮)に異常を生じて、爪甲が縦に割れやすくなっていることもあります。大きく割れると、痛みを伴い、二次感染により炎症・熱感・発赤・腫れなどを生じることもあります。

爪甲横溝

爪甲横溝(そうこうおうこう)とは、爪が横に割れる病気のことです。爪の根元をどこかにぶつけてダメージを受けると、爪の成長に影響が出て爪甲横溝になることがあります。ときに爪が横にパックリと割れる場合もあります。

爪甲剥離症

爪甲剥離症(そうこうはくりしょう)は指先から爪が浮き上がることで白く見える症状のことです。爪への外力やマニキュアなどによる慢性的な爪への刺激も原因であるため、女性に多く見られる症状です。また、カンジダ、接触皮膚炎、尋常性乾癬、貧血、糖尿病、ネフローゼ症候群、甲状腺機能異常、薬の副作用や日光過敏症などが原因となっていることもあります。

貧血

鉄分の不足によって起こる鉄欠乏性貧血では、爪が脆くなり少しの刺激でも割れてしまったり、爪が脆弱化して爪の真ん中がスプーンのように凹むスプーン爪(匙型爪甲)になったりすることがあります。

外反母趾

外反母趾も爪が割れるなどのトラブルが起こる原因の一つで、65歳以上の女性に多く見られます。爪の割れや欠けの他にも、足の痛みや変形がある場合は、外反母趾を疑ってみてもいいかもしれません。

皮膚がん

爪の下(爪床:そうしょう)や根元(爪母:そうぼ)に皮膚がんができると、しこりが形成されて爪が盛り上がったり、ジュクジュクと潰瘍が形成されたり、黒っぽく変色したりするなどの症状がみられます。爪が脆弱化して縦方向に割れやすくなり、痛み、出血、爪が取れることなどもあります。

その他の病気

その他にも、以下のような病気が原因で爪が割れやすくなることがあります。

  • 栄養障害
  • 肺がん
  • 肺気腫
  • 甲状腺機能亢進症
  • 卵巣機能障害
  • 神経疾患
  • 高尿酸血症
  • 肝臓病
  • 先天性心疾患 など

爪が割れる以外にも何か気になる症状を感じている場合には、早めに病院を受診すると安心です。特に、思い当たる誘因(ケガなど)や元からの爪の変形などの異常がないにもかかわらず爪が大きく割れた、割れた部位に強い痛みを伴う、爪以外で体のどこかに症状があるなどの場合は早めの受診が大切です。受診する診療科はまずは皮膚科が良いと思われます。皮膚科専門医は、局所および全身症状を診て、形成外科、内科あるいは整形外科などにコンサルテーションを行うことがあり得ますので指示に従ってください。爪は全身の健康状態を表すバロメーターであり、「たかが爪、されど爪」です。その症状の一つが爪の割れであり、決して安易に見過ごすことのできない症状です。

爪が割れるのを防ぐ対策

爪が割れるのを防ぐ対策

ここからは、爪が割れてしまうのを防ぐための対策をご紹介します。爪が大きく割れてしまうと痛みも出てくるため、そうなる前にケアすることが大切です。

どれも手軽にできる対策ばかりなので、ぜひ実践してみてくださいね。

栄養バランスの取れた食事

爪を健康な状態に保つためには、栄養バランスの取れた食事が大切です。過剰なダイエットなどで栄養全般が不足すると、爪にも十分な栄養がいかなくなり割れやすくなります。爪をつくるタンパク質、ビタミンA、ビタミンB、ビタミンDの摂取を意識しましょう。すでに脆くなった爪を丈夫にすることは困難であっても、これから生えてくる爪の質を改善することが可能となり得ます。タンパク質を取るときは、動物性タンパク質と植物性タンパク質のどちらもバランスよく取るといいですよ。食事と合わせて、質の良い睡眠や規則正しい生活を送ることで丈夫で美しい爪を育てられます。

不適切なネイルケア・過度の外力負荷の中止

頻繁なネイルカラーや除光液・ラッカーリムーバーの使用は、除光液による爪甲の水分含有量の減少や爪に過度な負担をかけてしまい、爪の脆弱化から爪が割れる危険性がありますので控えめにしましょう。爪は日常的な家事やキーボード操作などによって慢性的な外力がかかりやすい部位です。家事や仕事などで使いやすい指は爪を短く切ることで、指の腹側から爪甲に向かって加わる外力を最小限に抑えることができます。

爪の保湿ケアで乾燥予防

爪が乾燥すると、割れや欠けなどのトラブルが起こりやすくなります。空気が乾燥しやすい冬などは、爪に含まれる水分が減少して爪の強度・硬度が低下しがちで、爪が割れやすい条件ともなり得ます。爪用の保湿ケア商品なども販売されているため、それらを使用して保湿するといいでしょう。爪のまわりの皮膚の保湿も忘れずに。

爪は意外と乾燥しているため、オイルなどでしっかり保湿ケアしてあげるのがおすすめ。爪用の補修成分が配合されていたり、爪の保護やコーディング機能を有する爪用保湿クリームも活用しましょう。爪の割れだけではなく、ささくれを予防する効果も期待できます。指先の乾燥が目立つ人は、水仕事のときはゴム手袋を使うなどの工夫をするといいですよ。

爪の切り方や爪を噛む癖に注意する

爪は切るときの衝撃で割れてしまうこともあります。爪が柔らかくなるお風呂上がりのタイミングでの爪切りがおすすめです。

また、切れ味の悪い爪切りは爪に負担がかかります。自宅の爪切りの切れ味が悪い場合は買い替えを検討しましょう。爪を噛む癖も、爪が割れたり、でこぼこになったりする(波板状爪/洗濯板状爪)原因になるため、注意してください。

爪が弱っているときは、爪切りよりもネイルニッパーやヤスリを使って削るといいでしょう。爪の形は、四角の角をヤスリで丸く削った「スクエアオフ」が理想的。爪が長過ぎるのはNGですが、深爪をして短過ぎても爪の変形・痛み(陥入爪など)につながることがあるため、適度な長さを保ちましょう。

爪が割れたときの対処法

爪が割れてしまったときは、これ以上割れが広がらないようにケアをしましょう。割れたままにしてしまうと、服などに引っかかった拍子に割れが広がってしまったり、雑菌が入ったりすることがあります。

伸びた白い爪部分のみが割れた場合は、切れ味のいい爪切りなどを使ってカットします。深爪になりすぎてしまわないよう、注意しながらカットしましょう。マニキュアの下地で使うベースコートやトップコートなどを塗り、割れている部分を塞いで固定・補修するのも良いでしょう。

爪の割れが爪甲(爪のピンク色の部分)まで深くなっている場合は、これ以上ダメージを受けないために、切らずに絆創膏などで固定(テーピング)して保護します。その後、爪が伸びてからカットしましょう。

症状が軽微な場合は、様々な爪のトラブルを解消する施術も提供しているネイルサロンに相談してみるのも一案です。しかしながら、もしも大きく爪が割れてしまった場合や、痛みがあるときは消毒洗浄などの応急処置を行ってから、病院で診てもらうべきです。

なお、割れた爪にマニキュアやネイルアートはNG。爪の割れた部分からマニキュアの液体が皮膚に流れ込んでしまうことがあります。ネイルアートのやり過ぎや除光液の使い過ぎも、爪が割れる原因の一つ。自己判断で、接着剤やUVライトを用いるジェルネイルなどの溶剤を用いるのも、爪に刺激を与えて炎症を惹起する危険性があります。爪が割れているときはまず爪をケアして、トラブルを解消しましょう。

正しいケアで爪が割れるのを予防しよう

爪は、乾燥や加齢により健康な人でも割れてしまうことがあります。割れた爪をそのままにしていると、服などに引っかかってひび割れが広がってしまう可能性もあるため、適切なケアを行い、爪を保護しましょう。

また、爪以外にも気になる症状がある場合は、他の病気の症状で爪に影響が出ている場合もあるので、早めの受診がおすすめ。健康のバロメーターともいわれている爪で自分の体の異変に気づくことができれば、病気の早期発見につながります。

正しいケアで健康的で美しい爪を目指すとともに、異変があった場合は放置せず早めのケアを心掛けましょう。

監修者プロフィール(豊田雅彦さん・皮膚科専門医)

とよだ・まさひこ 医学博士。皮膚科専門医(日本皮膚科学会認定)。アレルギー専門医(日本アレルギー学会認定)。

うるおい皮ふ科クリニック院長。富山医科薬科大学(現在は富山大学)医学部卒業、1994年から2年半、米国ボストン大学医学皮膚科学教室に留学し、皮膚老化や神経などの研究を行う。2002年と2004年の国際皮膚科学会で、それぞれ臨床部門と研究部門の最優秀賞を単独受賞する。現在までに2000以上の医学論文・医学専門書を執筆。

また、国内外で、最も多い年で年250回以上の講演会・学会発表・保健所指導を行う。

2005年、千葉県松戸市に、うるおい皮ふ科クリニック(皮膚科・美容皮膚科・漢方皮膚科・アレルギー科・形成外科)を開業。

※この記事は2021年11月の記事を再編集して掲載しています。


編集部おすすめ爪の補修・保湿ケアアイテム

ここからは、ハルメクWEB編集部おすすめの爪の補修・保湿ケアアイテムをご紹介します。爪が割れてしまったときや、薄く弱くなっているときは、爪をケアして保護してあげましょう。

メンソレータム プレミアムリッチネイル

メンソレータム プレミアムリッチネイル
「メンソレータム プレミアムリッチネイル」2個セット/1892円(税込)

「メンソレータム プレミアムリッチネイル」は、傷んだ爪を集中補修してくれるケアクリーム。爪を集中的に補修し、しっかりコーティングすることで潤いを守ってくれます。クリームタイプなので、爪だけではなく手肌のケアにもばっちり。きれいな指先を目指せるでしょう。

爪が割れたり欠けたりしやすい、乾燥している、二枚爪になってしまうという人におすすめのアイテムです。

メンソレータム ハンドベール リッチネイル爪補強コート

メンソレータム ハンドベール リッチネイル爪補強コート
「メンソレータム ハンドベール リッチネイル爪補強コート」900円(税込)

「メンソレータム ハンドベール リッチネイル爪補強コート」は、無色の液体で爪の表面をコーティングできる爪補強コート。補強ファイバーが密着することで、爪をしっかりと補強してくれます。

補修成分を配合しているため、傷んでしまった部分をサポートする効果も。ツヤなしタイプなので、塗った後は自然な仕上がりになるのもうれしいポイントです。

OPI プロスパ ネイル&キューティクルオイル

OPI プロスパ ネイル&キューティクルオイル
「OPI プロスパ ネイル&キューティクルオイル」3520円(税込)

フェイシャルスキンケアから生まれた、OPI プロスパのネイル&キューティクルオイル。厳選された天然保湿成分(グレープシード、ククイナッツ、サンフラワーオイル)が爪や指先を乾燥から守ります。

乾燥した甘皮のまわりにオイルを塗り、マッサージするように馴染ませて使用しましょう。ハーブのような香りで、リラックスタイムにもおすすめの爪ケアアイテムです。

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