菅沼薫さんに聞く、今の自分に合う美容法

実証!ネイルケアで爪切りを使うと、二枚爪の原因に

公開日:2019.09.18

指先は顔と同じくらい人目に触れる部位。歳を重ねても自信を持って人前に手を出せるよう、しっかりケアしたいものです。そこで今回は、大人の爪のお手入れ第一段として、二枚爪の原因と対処法を菅沼薫さんに教えてもらいます。

爪は髪と同じ!? たんぱく質でできている

顔と同じくらい、年齢を重ねるごとに悩みの増えるパーツが爪ではないでしょうか? 自分の顔は鏡で見ようとしない限り見ることがありませんが、手や指先は見ようと思わなくても目に入るので、気になりますよね。

そこで、今回からは爪の基礎知識と、年齢を重ねた爪のお手入れについてお話ししたいと思います。

爪は硬いせいか、骨の一種でカルシウムを摂ると丈夫になると思っている人もいるようですが、爪は髪と同じで皮膚の付属器。ケラチンというたんぱく質でできています。髪も爪も皮膚の外側にあって、皮膚と体を守る役割をしています。爪がないと指先が保護されないので、指先に力を入れることすらできません。ペンを持つ、ボタンを留めるというようなことのほか、スマホの画面タッチすら痛くてできないでしょう。面積は小さいけれど、私たちが生活するのになくてはならない重要なパーツ、それが爪なのです。
 

枝毛と似ている?二枚爪になる原因

二枚爪のイラスト

ボリュームダウン、ツヤ、白髪、大人の髪悩み対策」で、髪の表面はキューティクルの層が重なり合っていて、その層が剥がれると枝毛や切れ毛になるとお話ししました。

このしくみは爪も似ていて、一枚の板のように見える爪も、3つの層が重なってできています。乾燥や衝撃などでこの密着した層に隙間ができ、上の層が剥がれてしまった状態が、いわゆる二枚爪。

爪の栄養状態が悪かったり、爪切りを使用して無理な力を加えたり、ネイルリムーバー(除光液)の使い過ぎが主な原因になります。また、日常生活での手先を使った作業、例えばパソコンのキーボードを爪先で叩くような些細な衝撃の繰り返しや積み重ねでも、二枚爪になってしまうことがあるのです。二枚爪の厄介なところは、髪やタイツなどに引っかかるなど、生活においてプチトラブルを引き起こしてしまうこと。放置すると、亀裂が深くなってしまうので、早めの対処が肝心です。
 

二枚爪のお手入れ方法

ネイルをする女性

基本的なお手入れの考え方は、枝毛と同じ。剥がれてしまった箇所を切る、またはコーティングし、うるおいと栄養を補給します。

二枚爪の部分が爪の先端であれば、短くして亀裂の部分をなくしてしまいましょう。皮膚に密着した短くできない箇所は、ベースコートなどでコーティングし、亀裂をなだらかにし、これ以上深くならないようにします。爪の先端の縁の部分をコーティングしておくと、ベースコートが衝撃を吸収してくれるので、二枚爪の予防にもなるのでおすすめ。亀裂が深い場合は、ネイルグルーという爪用の接着剤で隙間を埋めてからコーティングするのが理想的です。
 

爪ダメージの原因は爪切り。爪は削る、が基本

爪切りをする女性

二枚爪など、爪の亀裂や剥離の原因として、爪切りによる衝撃が挙げられます。日本では爪を「切る」のが一般的ですが、アメリカでは「File(削る)」ものとして捉えられています。ちなみに、爪を削る紙やすりのことをエメリーボードというのですが、近年はファイルと呼ばれることが多くなりました。これは「File」という英語に、やすりをかける、やすりで削るという意味があるためです。

さて、なぜ爪切りが爪を傷めるのか?

これには、爪の形が関係しています。爪はまっすぐではなく、指の形に沿った丸みのある湾曲した形をしていますよね。この湾曲度合いは爪の先端ほど大きくなります。カーブの強い爪の先端を平らな爪切りで切ると大きな力が無理に加わってしまい、結果として亀裂や剥離が生じてしまう、というわけです。

それを実証したのが下の画像。ライオン家庭科学研究所(当時)に協力を得て、爪切りによる爪の損傷の撮影に成功しました。

爪を切った後のひび割れ
写真-1「爪切りで切ったとき、こんな亀裂が爪にできている」(走査型電子顕微鏡200倍で撮影)
参照:FCG LABO 22号 19870520発行

爪切りで切った爪は切り口が滑らかではなく、尖った角ができてしまいます。その角にものを引っかけたりぶつけたりすると、亀裂や剥離が生じてしまうことも……。爪切りに慣れていると削るのは手間に感じるかもしれませんが、亀裂や剥離で起きる不自由さを考えたら、やはり爪は切るより削ることをおすすめします。

 

爪を切るなら、お風呂上がりに行う

ところで、美容室で髪を切るとき、濡らしてからカットしますよね。これは髪が水分を含むと柔らかくなり、カットによる髪の負担を軽減できるため。爪の場合でも同じことが当てはまります。下の画像の通り、水分を含んだ爪の方が、爪切りによる亀裂などのダメージが軽減されています。

写真4「温水浸漬5分あとに爪切りで切った爪」(走査型電子顕微鏡200倍で撮影) 参照:FCG LABO 22号 19870520発行
写真-4「温水浸漬5分あとに爪切りで切った爪」(走査型電子顕微鏡200倍で撮影)
参照:FCG LABO 22号 19870520発行

「どうしても爪切りがいい」という場合は、お風呂上がりなどの爪が水分を多く含んだ柔らかい状態の時に行い、爪への負担を少なくしましょう。ただし、爪切り後に、角と切り口の断面を爪やすりで整え仕上げるのを習慣にしてください。

次回は、爪やすりの選び方と使い方についてお話しします。

 

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取材・文=田中優子
 

 

■もっと知りたい■

 

菅沼 薫

ビューティ&ライフ サイエンティスト、武庫川女子大学客員教授、sukai美科学研究所代表。日本顔学会会長をはじめ、化粧品成分検定協会理事、日本香粧品学会学術委員などを務める。美容雑誌「VOCE」における化粧品比較実験を長年手掛ける。化粧品と肌のスペシャリストとしてメディアでも活躍中。

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