なぜ?爪が白くなる症状は放っておいても大丈夫?

爪の白い点や線の原因は?爪半月がないのは病気?

豊田雅彦(うるおい皮ふ科クリニック 院長)
監修者
うるおい皮ふ科クリニック 院長
豊田雅彦

公開日:2023.03.04

更新日:2024.02.04

健康のバロメーターとも呼ばれる爪。じっくり見てみてください。爪に白い点や白い線が出たり、全体が白くなったりしていませんか? 原因や、考えられる病気など、爪の症状について詳しく解説します。トラブルを防ぐための予防法も要チェックです!

爪の白い点・白い線、これって病気?

爪の白い点・白い線について

爪は、通常であれば大部分がピンク色をしていますが、たまに白い点が見られることがあります。

このような爪の白い点は、占いでは運気UPや幸運のサインといわれることもありますが、医学的には「爪甲点状白斑」と呼ばれるものです。

ここからは、爪に見られることがある白い点・白い線について詳しく解説します。

爪の白い点・白い線は「爪甲白斑」

爪甲白斑とは、本来ピンク色である爪甲が白く変化してしまった状態を指します。

爪甲点状白斑の正体は「爪の成長異常(不全角化)で爪になりきれなかった組織」で、爪甲の表面に見られる小さな白い斑点です。爪が伸びるとともに移動し、爪を切ると消えていくため、多くの場合、放置しても問題はありません。

爪全体が白くなる、一部に白い線が出る、白い斑点が出るなどさまざまな現れ方をし、爪甲白斑のタイプは主に以下の4つです。

  • 全爪甲白斑……爪甲全体が透明・白色調を呈する
  • 爪甲点状白斑……爪に白い斑点ができる
  • 爪甲横線条白斑……爪に白い横線ができる
  • 爪甲縦線条白斑……爪に白い縦線ができる

爪の白濁・白い点・白い線ができる原因

爪甲白斑、すなわち爪の白濁・白い点・白い線ができる原因としては、以下が考えられます。

  • 爪への外傷(爪を噛む、ドアにぶつけるなど)
  • マニキュアの頻繁な使用、除光液など化学物質に対するアレルギー反応
  • 亜鉛や鉄分、カルシウム、ビタミンなどの栄養不足
  • 過度のストレス
  • 遺伝
  • 真菌感染症、乾癬、皮膚炎など皮膚の病気によるもの
  • その他の病気によるもの(慢性腎臓病、心不全、肝硬変、鉄欠乏性貧血、糖尿病、栄養失調、甲状腺機能亢進症など)

・全爪甲白斑:複数の爪甲全体が白色、あるいは白濁する状態で、爪甲が透明で白っぽい場合は鉄欠乏性貧血、指先の冷え(血流障害)、肝硬変(すりガラス様白色)が疑われ、白濁と爪の変形が特に足趾の爪甲に多いのが爪白癬です。その他、腎疾患、肝疾患などの全身疾患に伴う場合、乾癬や皮膚炎などの皮膚の異常に伴う場合、ミネラルやビタミンの不足、遺伝などが挙げられます。

爪の白濁・白い点・白い線は病気?

・爪甲点状白斑:爪甲点状白斑ができる代表的な原因は、爪自体、あるいは爪母に対する小さな外傷です。爪をぶつけると、その刺激や爪母の傷害が爪の成長を妨げてしまい、白い点や白い線となって現れます。

爪の成長には時間がかかるため、白い点や白い線が爪に現れる頃には、ぶつけたのを忘れてしまっていることが多いようです。

爪の白い斑点(爪甲点状白斑)は病気ではなく、基本的には放置していても体に悪影響はありません。ただし、もしもすべての指の爪に白い斑点ができたり、一つの爪に3つ以上できる、色が濃くなるなどの異変が見られる場合、あるいは爪が分厚くなったり凸凹していたり、爪のまわりの皮膚に炎症(発赤・腫れ・痛みやかゆみ)を伴う場合は、内臓系疾患などなんらかの病気が影響している可能性も考えられます。

爪の傷やマニキュアなどの負担によるものなのか、詳しく診察や検査してみないことにはわからないため、爪甲白斑で異常と思われる心配な状況が生じた場合は、自己判断せずに病院を受診するといいでしょう。

爪の白い線(爪甲線条白斑)には注意が必要

・爪甲縦線条白斑:白い斑点ではなく、白い線(爪甲縦線条白斑)ができた場合、マニキュアなどの使い過ぎや間違ったネイルケア、乾燥や外傷、ストレスや加齢などが原因の可能性もありますが、ヒ素や鉛といった有毒物質による中毒症状として現れている可能性もあります。多くは加齢に伴う「爪甲縦条」が進行した場合の爪甲変化ですので、過度の心配は不要です。しかし、また、腎不全や心臓の病気が原因で白い線が現れることも考えられるため、放置せずに皮膚科を受診しましょう。

・爪甲横線条白斑:爪に横走する淡い白線が一条だけ認められる場合は「ミー線条」と呼ばれ、心筋梗塞、肺炎、ペラグラ(ニコチン酸欠乏症)、砒素中毒など様々な全身疾患で生じます。白線が二条出現したものを「ミュールッケ線条」といい、ネフローゼ症候群(慢性腎疾患の一つで尿にタンパクが多量に排泄され、むくみなどが生じる疾患)に伴って認められます。爪に横走する白線は、数ヵ月前に腎疾患を代表とするかなり重症の病気を罹患していた証となり得ます。

爪の白い部分(爪半月)について

爪の白い部分(爪半月)について

普段、爪切りで切っている爪の硬い部分を「爪甲(そうこう)」といいます。爪甲は爪の根元にある「爪母(そうぼ)」で作られ、爪甲を支えている皮膚の「爪床(そうしょう)」に沿って長く伸びていきます。

「爪半月(そうはんげつ/つめはんげつ)」とは、爪母の付け根部分の乳白色をした部分のことです。

爪甲はピンク色をしていますが、爪半月は乳白色をしています。爪半月が白く見えるのは、爪母で新生した爪甲に水分が多いからです。爪甲を除去すると、爪甲の根元部は白色です。抜いた爪甲を放置しているとその根元の白色部分は水分が蒸発して消えていきます。

爪の白い部分(爪半月)がないのは病気?

「爪の白い部分(爪半月)が大きいほど健康で、少ないほど不健康」といった俗説を聞いたことがある人もいるのではないでしょうか。

爪は健康のバロメーターともいわれているため、これも本当のことのように思えるかもしれませんが、あくまで噂であり、医学的根拠はありません。爪半月は健康には影響しておらず、なくてもまったく問題はないといわれています。つまり、爪半月の出現率と健康状態は無関係という結論が出ています。

爪半月が見える・見えない、大きい・小さいはほとんどが生まれつきです。爪半月は爪母の中で甘皮(爪の根元と皮膚の境目の薄皮部分)に覆われていない部分であるため、見えるか見えないかは甘皮の位置で決まります。

また、爪半月のサイズが大きくなることはありません。ただし、甘皮が剥がれて爪半月が剥き出しになることで、爪の白い部分が増えたように感じることはあるでしょう。

爪が白くなったときに考えられる病気

爪が白くなったときに考えられる病気

ここからは、爪が白くなったときに考えられる病気について解説します。

爪白癬(爪の水虫)

爪白癬(そうはくせん)とは、爪の水虫のことです。カビの一種である白癬菌が爪の中に入り込むことで、爪の色が濁って見えたり、爪が分厚くなって白く見えたりします。特に、足の爪に多く見られます。

爪白癬は完治までに時間がかかり、再発しやすいため注意が必要です。

爪甲剥離症

爪甲剥離症(そうこうはくりしょう)は、爪が先端から爪床(爪甲下の皮膚)からはがれて浮き上がることで白く見えるようになる状態で、二枚爪とも言います。カビの一種であるカンジダの感染、接触皮膚炎、尋常性乾癬などが原因で起こります。また、貧血、糖尿病、ネフローゼ症候群、甲状腺機能異常などによっても爪甲剥離症が見られることや、原因不明のこともあります。爪甲剥離症は、圧倒的に女性に見られる症状です。

スプーン爪(スプーンネイル/匙状爪)

スプーン爪(スプーンネイル/匙状爪)とは、爪甲がスプーンのように反り返った状態になることです。指の腹側から掛かり続ける力を支えきれなくなることで起こります。

鉄欠乏性貧血もスプーン爪の原因の一つです。爪は血液の健康状態に影響されやすく、赤血球やヘモグロビン不足で爪が弱くなり、スプーン爪になりやすくなります。また、これらの不足によって爪が白く見えることがあります。

その他病気

その他にも、鉄欠乏性貧血、腎機能障害(慢性腎不全など)、糖尿病、低アルブミン血症、肝硬変、栄養不良、全身のむくみなどが爪が白くなる症状につながることがあります。

白い爪が病気かどうかを見分けるには?

外傷やマニキュアなどのダメージによる影響で爪が白くなっただけなのか、それとも何か病気が隠れているのかどうかを判断するポイントは、「爪が白くなる他にも症状があるかどうか」です。

具体的には、以下のような点がある場合には病院を受診しましょう。

  • 爪が剥がれそうになっている場合
  • 他になんらかの皮膚症状がある場合
  • 爪の白い線が、時間が経つにつれて爪先に移動する場合
  • 全身倦怠感など体の症状がある場合 など

また、指先の冷えが原因となって爪が白くなっていることもあります。これはレイノー現象と呼ばれ、冷えることで指先の血の巡りが悪くなり、皮膚が白っぽくなることで爪が白く見えます。典型的には白色(蒼白)、紫色、発赤の順に3相性の色調変化を認め、寒冷刺激や精神的緊張などや膠原病と呼ばれる一群の疾患に伴う血流障害により生じる手指や爪の色調変化です。

ただし、しっかりと温めても爪が白いまま変化がないようであれば、病院で見てもらうといいでしょう。

爪にトラブルが起きたときの対処法

爪にトラブルが起きたときの対処法

ここからは、爪にトラブルが起きたときの対処法をご紹介します。

爪の白い点・白い線が出た場合

爪の白い斑点(爪甲点状白斑)は、外傷などにより爪の成長に異常が起こることで生じますが、他に症状が見られなければ過度に心配する必要はないでしょう。

白い斑点を消すために爪を削ろうとすると、爪が薄くなる、もろくなる、変形するなどのトラブルにつながることもあるため、削らないのがおすすめです。

個人差もありますが、爪は1か月に2mmほど伸びます。爪が伸びていくうちに爪の白い斑点も少しずつ先端の方へ移動していき、爪を切れば無くなります。

ただし、爪に白い線(爪甲線条白斑)が出た場合、ヒ素や鉛といった有毒物質の中毒症状、腎不全、心臓の病気などの原因も考えられます。白い線がある場合や、他に気になる症状がある場合は、病院を受診しましょう。

爪の白い部分(爪半月)がない場合

爪半月の大きさには個人差があり、大きさや見えるかどうかは健康に影響しないとされています。そのため、見えないからといって特に対策は必要ありません。

指先を酷使するような仕事の人や、素手で食器を洗う、園芸やガーデニング、農作業、甘皮の処理などをすると、それによって甘皮が剥がれ、爪半月が剥き出しになって大きくなったように感じることもあるようです。

その他の爪の病気の場合

その他の爪の病気がある場合や、なんらかの異常が見られる場合は、早めに皮膚科などを受診し、適切な治療を受けましょう。

爪が白くなるなどのトラブルを防ぐための予防法

爪が白くなるなどのトラブルを防ぐための予防法

ここからは、爪が白くなるなどのトラブルを防ぐための予防法をご紹介します。

外傷に注意する

爪甲白斑は、爪の外傷が主な原因となって起こります。手を使う作業が多い人などはぶつけたり、挟んだり、外傷や衝撃に注意しましょう。爪甲自体よりも、爪母のダメージで重篤化・遷延化する傾向があります。

セルフネイルや除光液などのダメージを減らす

除光液に含まれる化学物質は、爪の負担になります。間違ったネイルケアやセルフネイルでの除光液の使い過ぎは爪の負担になるため、ケアの頻度を減らしたり、爪に優しい製品を使うなどの工夫をするといいでしょう。

爪の保湿ケアを行う

爪は意外と乾燥しているため、保湿ケアを行いましょう。手の爪は毎日の水仕事などの影響で乾燥しやすいため、保湿クリームやネイルオイルなどを使ってケアすると、手荒れも同時にケアできます。すなわち、ハンドクリームを塗る際には、手指だけでなく、爪甲や爪甲周囲も念入りに行いましょう。

ストレスを上手に発散する

ストレスは自律神経のバランスを崩し、血流を悪くしてしまいます。

爪が生まれる爪母には無数の毛細血管が巡っており、血行不良になると爪に十分な栄養が行き渡らなくなってしまうことに。なるべくストレスをためないようにしたり、上手にストレス発散するといいでしょう。

栄養バランスのいい食事を心掛ける

白くなるなど爪のトラブルは、栄養不足や貧血などが影響しているケースもあります。栄養不足や貧血は体調不良にもつながり、疲れやすさ、動悸や息切れとして現れることがあります。食生活が乱れている場合は、栄養バランスのいい食事を心掛けることも大切です。

意外と乾燥しやすい爪はしっかりケアを

爪に現れる白い点は外傷が主な原因であり、放置しても問題がないケースが多いです。

ただし、病気が原因になっている可能性もあるため、他の症状が見られる場合や、たくさんの白い点が現れている場合、色が濃くなるなどの異変があるときには、早めに病院を受診しましょう。

※効果には個人差があります。試してみて異変を感じる場合はおやめください。

監修者プロフィール:豊田雅彦さん

豊田雅彦

とよだ・まさひこ 医学博士。皮膚科専門医(日本皮膚科学会認定)。アレルギー専門医(日本アレルギー学会認定)。

うるおい皮ふ科クリニック院長。富山医科薬科大学(現在は富山大学)医学部卒業、1994年から2年半、米国ボストン大学医学皮膚科学教室に留学し、皮膚老化や神経などの研究を行う。2002年と2004年の国際皮膚科学会で、それぞれ臨床部門と研究部門の最優秀賞を単独受賞する。現在までに2000以上の医学論文・医学専門書を執筆。

また、国内外で、最も多い年で年250回以上の講演会・学会発表・保健所指導を行う。
2005年、千葉県松戸市に、うるおい皮ふ科クリニック(皮膚科・美容皮膚科・漢方皮膚科・アレルギー科・形成外科)を開業。

※この記事は2023年3月の記事を再編集して掲載しています。

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