落語自由自在(60)

午後のこみち~大ネタ強化デー~

公開日:2022.08.05

更新日:2022.08.01

柳亭こみち師匠の独演会が観たくて、スタジオフォーに行きました。会場は、都電荒川線の庚申塚駅から、程近い所にあります。ここを訪れるのは3回目、こじんまりした良い会場です。

7月下席は鈴本です

こみち師匠は、配信で何度も観ておりますが、特に心を動かされたのは国立演芸場での独演会【こみち堂】で「七段目」を観た時でした。絶対行きたい、生の高座を聞きたいという思いがつのり、今日を迎えました。

場内は、平日の午後にも関わらず、常連の男性客ばかりでした。

7月下席は鈴本です

いよいよこみち師匠の登場です。画面で観ていた以上にかわいい方で、全身からオーラが溢れ出ています。

7月下席は上野の鈴本演芸場で、私が主任です。ギター漫談のペペ桜井先生から、一緒にやりませんかと誘われました。私の師匠に話すと何でも反対されますが、ペペさんは86歳ですから、お元気なうちに一緒にやりたいのですと伝えたら、お許しが出ました。

ここで盛大な拍手が湧きます。

皆さん楽しみにしていてねと言って、一席目の「徳ちゃん」に入ります。

「徳ちゃん」

徳ちゃんとは、売れない噺家の名前ですが、徳ちゃんよりも、焼き芋を両手に持って、かじりながら出て来る女性が印象な噺です。実際にそのシーンを目の前で観ると、そのド迫力に圧倒されました。笑わないお客がいる時の、これは武器ですね。

「小間物屋政談」

品物を背負って売り歩く小間物屋の小四郎が、盗賊に襲われた問屋の主人と、箱根山中で出会ったことから噺は始まります。

関西に商売に行く途中でしたので、着替え用に持っていた着物を着てもらい、西と東に別れて間もなく、小間物問屋の主人は亡くなってしまいます。たまたま二人は背格好も同じで、似ていたため、着ていた着物から小四郎が亡くなったものと間違えられて、運命が変わってしまうというお噺です。

こみちさんは、小四郎の女房の気持ちを、全面に出して丁寧に描きます。そして「もう背負うには及ばん」のおなじみのサゲまで、テンポ良く一気に畳み込みました。

お仲入り前、中島みゆきの「悪女」を熱唱。サービス精神旺盛です。

「品川心中・序」

お染めと私を重ねないでくださいと断ってから、噺を始めます。

かつては店のナンバーワンだったお染でしたが、お金の工面が出来ないため、心中をしようと決めます。相手を物色。貸本屋の金蔵に、白羽の矢をたてたことから始まる騒動です。

熱演する師匠のお染は、あまりにもハマリ役で、序だけでなく全編聞きたかったです。

大ネタ強化デーと銘打っただけに、笑わせながらも、じっくりと聞かせる上質の高座でした。

終演後、笑顔で見送ってくださったこみち師匠は、最後の最後までパワフルでした。

「品川心中・序」

 

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さいとうひろこ

趣味は落語鑑賞・読書・刺しゅう・気功・ロングブレス・テレビ体操。健康は食事からがモットーで、AGEフードコーディネーターと薬膳コーディネーターの資格を取得。人生健康サロンとヘルスアカデミーのメンバーとなり現在も学んでいます。人生100年時代を健康に過ごす方法と読書や落語の楽しみ方をご案内します。

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