おもしろハッピー落語会
2022.09.072022年02月07日
落語自由自在(54)
落語『富久&富Q祭り』
『富久(とみきゅう)&富Q祭り』の第一夜は、三遊亭兼好師匠の「富久」、第二夜は三遊亭白鳥師匠の「富Q」です。第22回 代官山落語オンライン夜咄、どんな噺が繰り広げられるやら、楽しみです。
第一夜 三遊亭兼好師匠『富久』
まずは、古典落語を独自の解釈で語る兼好師匠です。
年の暮れに、幇間(たいこもち)の久蔵が、酒の上で旦那をしくじり、途方に暮れていると、友人に富札(とみふだ)を買うように勧められます。神棚の大神宮様に、手を合わせ「当たりますように」と拝んで、お神酒を飲み、大神宮様と一つになりたいと言ってそのまま寝てしまいます。
兼好師匠はここの描写が実に丁寧で、徐々に酔っていく様子が見事です。夜中に旦那の家の近くで火事があり、心配した久蔵が駆けつけ、出入りを許されます。幸い旦那の家は焼けず、その晩はお酒とおでんをごちそうになります。
酔って寝込んでいると、今度は久蔵の家が、火事で焼けてしまいます。何もかも失い、お金が欲しいと嘆いていると、買った富札が大当たり、千両だと知り大喜びします。ところが富札を火事で無くしていますので、換金できず、再び絶望してしまいます。
さてこの先、大神宮様のご加護はあるのか、という噺です。
第二夜 三遊亭白鳥師匠『富Q』
白鳥師匠は、池袋演芸場12月の下席(21日~30日)で「富Q祭り」を5年連続開催しております。いつも満席で、補助席どころか立ち見も出る程大人気です。10日間全部「富Q」を語るのですが、毎回細かな部分が違い、その日の観客に合わせて、演じるそうです。
こちらの「富Q」は、売れない落語家の青春物語となっており、池袋にあるびっくりガード付近の、安アパートに住む金銀亭Q蔵が主人公です。
ある晩、池袋演芸場付近が火事と知り、心配で脱兎のごとく駆けつけるQ蔵、幸い演芸場は焼けずにすみますが、今度はQ蔵のアパートが火事になり、焼け出されしまいます。
お金が欲しいと願っていると、以前アルバイト先の宝くじ売り場で、無理やり買わされた1枚の宝くじを思い出します。何とこれが大当たり、ところが肝心の宝くじが焼けてしまい、2億円がもらえません。すっかり気落ちした久蔵は、死を決意しますが、アパートの隣人に声をかけられます。
波乱万丈の青春、これを白鳥師匠は無観客で語ります。神高座とは、まさにこの高座のこと。他のどこでも語られなかった素晴らしい「富Q」となりました。
年末の噺というと「文七元結」「掛取り」「芝浜」等があげられますが、私はこの「富久」と「富Q」こそが、年末を代表する噺だと思いました。ぜひ、お聞きになってみてください。
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