落語自由自在(54)

落語『富久&富Q祭り』

公開日:2022.02.07

更新日:2022.01.31

『富久(とみきゅう)&富Q祭り』の第一夜は、三遊亭兼好師匠の「富久」、第二夜は三遊亭白鳥師匠の「富Q」です。第22回 代官山落語オンライン夜咄、どんな噺が繰り広げられるやら、楽しみです。

第一夜 三遊亭兼好師匠『富久』

まずは、古典落語を独自の解釈で語る兼好師匠です。

年の暮れに、幇間(たいこもち)の久蔵が、酒の上で旦那をしくじり、途方に暮れていると、友人に富札(とみふだ)を買うように勧められます。神棚の大神宮様に、手を合わせ「当たりますように」と拝んで、お神酒を飲み、大神宮様と一つになりたいと言ってそのまま寝てしまいます。

兼好師匠はここの描写が実に丁寧で、徐々に酔っていく様子が見事です。夜中に旦那の家の近くで火事があり、心配した久蔵が駆けつけ、出入りを許されます。幸い旦那の家は焼けず、その晩はお酒とおでんをごちそうになります。

酔って寝込んでいると、今度は久蔵の家が、火事で焼けてしまいます。何もかも失い、お金が欲しいと嘆いていると、買った富札が大当たり、千両だと知り大喜びします。ところが富札を火事で無くしていますので、換金できず、再び絶望してしまいます。

さてこの先、大神宮様のご加護はあるのか、という噺です。

第二夜 三遊亭白鳥師匠『富Q』

第二夜 三遊亭白鳥師匠『富Q』

白鳥師匠は、池袋演芸場12月の下席(21日~30日)で「富Q祭り」を5年連続開催しております。いつも満席で、補助席どころか立ち見も出る程大人気です。10日間全部「富Q」を語るのですが、毎回細かな部分が違い、その日の観客に合わせて、演じるそうです。

こちらの「富Q」は、売れない落語家の青春物語となっており、池袋にあるびっくりガード付近の、安アパートに住む金銀亭Q蔵が主人公です。

第二夜 三遊亭白鳥師匠『富Q』
白鳥師匠自身の体験談で、当時の住まいを、なんと春風亭昇太師匠が撮影していて、
その映像が映し出されました

ある晩、池袋演芸場付近が火事と知り、心配で脱兎のごとく駆けつけるQ蔵、幸い演芸場は焼けずにすみますが、今度はQ蔵のアパートが火事になり、焼け出されしまいます。

お金が欲しいと願っていると、以前アルバイト先の宝くじ売り場で、無理やり買わされた1枚の宝くじを思い出します。何とこれが大当たり、ところが肝心の宝くじが焼けてしまい、2億円がもらえません。すっかり気落ちした久蔵は、死を決意しますが、アパートの隣人に声をかけられます。

波乱万丈の青春、これを白鳥師匠は無観客で語ります。神高座とは、まさにこの高座のこと。他のどこでも語られなかった素晴らしい「富Q」となりました。

年末の噺というと「文七元結」「掛取り」「芝浜」等があげられますが、私はこの「富久」と「富Q」こそが、年末を代表する噺だと思いました。ぜひ、お聞きになってみてください。

 

■もっと知りたい■

さいとうひろこ

趣味は落語鑑賞・読書・刺しゅう・気功・ロングブレス・テレビ体操。健康は食事からがモットーで、AGEフードコーディネーターと薬膳コーディネーターの資格を取得。人生健康サロンとヘルスアカデミーのメンバーとなり現在も学んでいます。人生100年時代を健康に過ごす方法と読書や落語の楽しみ方をご案内します。

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