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医師監修│関節リウマチや変形性関節症に要注意!
更年期の関節痛の原因は?対処法や隠れた病気も解説
横倉クリニック
横倉恒雄
公開日:2022.06.29
更新日:2023.11.20
関節が鳴る、手指がこわばる、腫れる、しびれるなどの症状はありませんか? 更年期に起こる症状の一つ「関節痛」かもしれません。ホルモン補充療法など関節痛の治療法をご紹介します。症状が似ている、関節リウマチや変形性関節症との違いも確認しましょう。
監修者プロフィール:横倉恒雄さん(横倉クリニック)
よこくら・つねお 医学博士。医師。横倉クリニック・健康外来サロン(港区芝)院長。東京都済生会中央病院に日本初の「健康外来」を開設。故・日野原重明先生に師事。婦人科、心療内科、内科などが専門。病名がないものの不調を訴える患者さんにも常に寄り添った診療を心がけている。著書『病気が治る脳の健康法』『脳疲労に克つ』他。日本産婦人科学会認定医 /日本医師会健康スポーツ医/日本女性医学学会 /更年期と加齢のヘルスケア学会ほか。
更年期に起こる症状の一つ「関節痛」
女性は、更年期を迎えると女性ホルモンである「エストロゲン」の分泌量が低下することで、さまざまな症状を感じるようになることがあります。
関節痛は、更年期に起こりやすい症状のうちの一つです。更年期の関節痛の症状としては、以下のようなものがあります。
- 関節が鳴る
- 手指、肩、ひざなどが痛む、こわばる、腫れる、しびれる
- 階段を上り下りするのがつらい
- かかとが痛くて歩きにくい
- ひじが痛くて重い荷物が持てない
- ヒールのある靴を履くと強く足が痛む
- 皮膚を蟻(アリ)が這うような感じがする(蟻走感)など
症状の現れ方や程度には個人差があるものの、これらの症状が見られる場合、更年期の影響が原因となっているかもしれません。
更年期に関節痛が起こる原因
更年期とは、閉経前後の40代半ば~50代半ばの10年間のことを指します。更年期には、卵巣機能が低下することで、これまで分泌されていた女性ホルモン「エストロゲン」の分泌量の激減が起こります。
更年期は、これまでずっと分泌され続けていたエストロゲンがいきなり激減することで、体がその変化に追いつかなくなり、身体的な症状や精神的な症状など、さまざまな不調が起こりやすくなる時期です。
また、関節の骨と骨が接する部分は、コラーゲンや水分でできた「軟骨」によって衝撃から守られています。エストロゲンは軟骨を構成するコラーゲンの生成にも大きく関わっているため、エストロゲンが激減すると関節の軟骨の不足につながり、手足の関節痛や、こわばりなどといった症状として現れるのです。
更年期の関節痛の検査方法
検査では、まずは症状を確認し、関節痛の他にも更年期の症状がないかどうかをチェックします。
更年期に起こりやすい代表的な症状としては「ホットフラッシュ(のぼせ、ほてり)」「発汗」「頭痛」「不眠」「イライラ」「抑うつ」「食欲不振」「腰痛」などさまざまです。
その後、骨に異常がないかレントゲンで骨の状態をチェックし、症状に合わせて血液検査も行います。必要があれば、関節エコーによって炎症が起きているかどうかを調べます。
更年期の関節痛の治療法
ここからは、更年期の関節痛の治療法をご紹介します。
生活習慣の改善
症状によっては薬を使わずに、運動習慣をつくる、バランスのいい食生活にする、睡眠のリズムを整えるなど、生活習慣を整えることで治療することもあります。
生活習慣の改善は取り入れやすい治療法であるため、「重くはないものの、気になる症状がある」場合は病院で医師に相談して、アドバイスをもらうといいでしょう。
ホルモン補充療法(HRT)
更年期による関節痛がつらい場合、最も効果が期待できるのがホルモン補充療法(HRT)です。症状を改善するための必要最低限の女性ホルモンを補うことで、治療します。
ホルモン補充療法で使用する薬には飲み薬、貼り薬、塗り薬の種類があり、その人に合ったものが選ばれます。
ホルモン補充療法は関節痛を改善する他にも、ホットフラッシュなど自律神経系の症状の改善や脂質異常症、閉経後骨粗鬆症の予防、子宮体がん、大腸がん、肺がんのリスクを減らすことにもつながります。また、肌のハリやうるおいを保つはたらきもあります。
漢方薬
ホルモン補充療法が難しい場合や、副作用が心配な場合は、漢方薬を飲んで治療を行う場合もあります。関節痛には、鎮痛作用や血流の改善作用がある生薬を含む漢方薬から選びます。
また、血流改善はイライラや疲労感の軽減にもつながります。
更年期の関節痛に用いる漢方薬なら次のものがおすすめできます。
- 当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん):冷えやむくみがある方に。体を温め、血流を促してめまいや冷えによる痛みなども改善します。
- 防已黄耆湯(ぼういおうぎとう):水太りタイプで疲労感や、むくみ、関節痛のある方に。水の代謝を改善して、むくみや関節痛を改善します。
- 桂枝加苓朮附湯(けいしかりょうじゅつぶとう):冷えがあって関節が痛む方に。体を温める附子が入っている漢方薬です。
お近くに漢方に詳しい医師や薬剤師がいない場合や、体質に合わないものを選んで副作用が出たらどうしよう、など不安がある方は、スマホで無料相談のうえ、全国対応でご自宅に配送されるサービスを使用してはいかがでしょうか。
サプリメント(エクオール)
ホルモン補充療法は、乳がんや卵巣がんの既往がある人は行えない治療法です。そこで、現在では「エクオール」と呼ばれる、大豆イソフラボンから腸内細菌によってつくられる成分が注目されています。
大豆イソフラボンはエストロゲンに似ているといわれていますが、エクオールは大豆イソフラボンよりもさらにエストロゲンに近い構造を持っています。エクオールはエストロゲンに作用するものの、乳がんや卵巣がんを引き起こすリスクがないとされています。
エクオールは大豆製品を摂取すると体内で産生されますが、日本人の約50%はいくら大豆製品を摂取してもエクオールを産生できないといわれています。自分がエクオールを産生できる体質であるかどうかは、尿検査によって調べることが可能です。
なお、エクオールは手足の指の変形が進行してしまった人に対しては、効果が少ないとされています。そのため、エクオールのサプリメントを飲む場合は、関節が変形してしまう前に飲み始める必要があります。
更年期に関節痛が起きたら病院に行くべき?
関節が痛むときに気になるのが、他の病気の可能性です。指の関節が痛む以外に症状がない場合は、時間が経つと痛みが治まることもあります。
しかし、関節痛は更年期の症状ではなく、別の病気が原因になっている可能性も考えられます。
「指の関節の痛み以外にも、体の不調を感じている」「手足をうまく動かせない」「腫れや痛みを何度も繰り返す」などの場合は、他の病気の可能性があるため、早めに病院を受診し、詳しく検査しましょう。
更年期障害による関節痛に似た症状の病気
関節痛が起こる原因は、更年期だけではありません。そのため、更年期によるものかどうか、チェックする必要があります。
ここからは、更年期障害による関節痛に似た症状の病気をご紹介します。
関節リウマチ
関節リウマチとは、免疫の異常が関係する自己免疫疾患です。関節に炎症が起きることで、激しい痛みや腫れが起こります。この炎症を滑膜炎といい、炎症が続くと関節内の滑膜が腫れ、やがて靭帯や軟骨部分を破壊します。進行すると、骨まで壊してしまうこともあります。
関節リウマチは、関節を動かさなくても痛みが起こることが、他の関節の病気と異なる点です。
更年期に関節痛が起こった場合、「女性ホルモンの影響によるもの」なのか「関節リウマチ」なのかを判断することが重要です。
関節リウマチは症状が現れる年齢が30代〜50代であり、更年期の関節痛と重なります。症状も「朝のこわばり」「関節の痛み」「倦怠感、食欲不振」など、更年期の症状とよく似ているため、しっかりと専門家に検査してもらう必要があるでしょう。
もしも40歳を過ぎて「全身の関節が痛む、体中が痛い」などの症状があった場合は、まずはリウマチ科や内分泌内科、整形外科などに行って、関節リウマチかどうかの検査を受けてみましょう。
整形外科では原因がはっきりしない場合は、婦人科などで女性ホルモンのチェックをして、更年期の影響によるものか、調べてみましょう。
変形性関節症
変形性関節症とは、軟骨がすり減ったことで関節の骨などが摩擦し、炎症が起きたり水がたまったりする症状のことです。また、骨に骨棘(こつきょく)と呼ばれる棘のような突起ができて関節が変形することもあります。
変形性関節症は、股関節やひざ、背骨などに起こりやすいですが、手や首、肩などにも起こることがあります。
その他、女性ホルモンが関係する手指の病気
関節の腫れや痛みなど、手指の病気は、女性ホルモンが影響しているものが多くあります。例えば、以下のような病気です。
更年期を迎え、エストロゲンが激減することで腱や腱鞘が腫れやすくなり、腱鞘炎になります。腱鞘炎になると、ドケルバン病やばね指、手根管症候群を引き起こしやすくなります。
これを治療しないまま放置してしまうと、手指の第二関節が慢性的に強く引っ張られ続けることになり、ブシャール結節になってしまうことも。この他にも、母指CM関節症やへバーデン結節につながる可能性があります。
更年期による手指の関節の症状は、利き手や職業などに関係なく起こることが特徴です。この状態が10年など長く続くと、関節が変形することもあります。
しかし、中には関節痛や関節の変形が起こらない人もいます。更年期以降はすべての女性にエストロゲンの激減が起こるのに、なぜ関節に現れる症状に個人差があるのかという点については、体質的なものではないかと考えられています。
なお、エストロゲン受容体の機能や数は遺伝しており、関節の変形が起こった人は、母親にも関節の変形があったケースが多く見られます。
痛みが続く場合などは、早めに病院で診察を受け、適切な治療を受けることが大切です。
更年期の関節痛の対処法
ここからは、更年期に起こる関節痛の対処法をご紹介します。
関節の曲げ伸ばし
更年期の関節痛では、朝に手がこわばることがあります。手がこわばると、うまく手に力が入らず、コップなどを落としてしまうことも。
このようなこわばりや握力が出ない症状がある場合は、手を握ったり広げたり、グーとパーをゆっくり繰り返してみましょう。こうして関節の曲げ伸ばしを行うことで、手のこわばりが改善することがあります。
手を握ったり広げたりする前に、手を温めておくと動きがスムーズになりますよ。
関節を温める
関節は、冷えると痛みが強くなります。そのため、関節を温めて痛みを緩和しましょう。寒い時期は手袋などを着用すると、指先を温かくできます。
お風呂の中でグーパーをすると温度効果と水圧効果があり、より効果的です。
定期的な運動習慣をつくる
治療によって更年期の関節痛の痛みが改善してきたら、定期的な運動習慣をつくり、筋肉量をアップしましょう。筋肉がつくと、関節の筋肉による支えを維持できます。
無理をすると体の負担になるので、かかりつけ医の指示に従い、少しずつ運動を取り入れていくのがおすすめです。
バランスのいい食事を心掛ける
筋肉のもとになるタンパク質もしっかり取るようにしましょう。また、血流を促進する効果のあるビタミンEも積極的に取りたい栄養素。ビタミンEは魚介類やナッツ類、植物油などで摂取するのがおすすめです。
更年期障害・更年期症状の緩和には食事も大切なので、食生活の乱れを感じている人は、バランスのいい食事を心掛けましょう。
体重コントロール
更年期になると、ホルモンバランスの乱れや代謝の低下によって、太りやすい体になるといわれています。大幅に体重が増えた人や、太り気味の人は、関節に負担をかけないためにも、体重コントロールを行いましょう。
更年期の関節痛、気になる場合は早めの検査を
更年期はエストロゲンが減少する影響で、手足の痛み、ひじの痛み、ひざの痛みなど、関節痛が起こることがあります。
更年期の関節痛に似た病気としては、関節リウマチや変形性関節症などがあります。
指の関節痛のみであれば、時間の経過によって痛みが治まることもありますが、痛みが続く場合や他の不調がある場合は、早めに病院を受診することが大切です。
※この記事は2022年6月の記事を再編集して掲載しています。
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