更年期以降に気を付けたい病気・5

更年期の自律神経の乱れ、原因・治療法を医師が解説!

横倉恒雄さん(横倉クリニック)
監修者
横倉クリニック
横倉恒雄

公開日:2018.07.02

更新日:2023.11.28

あなたの一番つらい「更年期」の症状はなんですか? 女性ホルモンの減少により自律神経のバランスが乱れやすく、自律神経失調症状がでる人も少なくありません。漢方・プラセンタ・ホルモン補充療法(HRT)などによる治療を解説します。

監修者プロフィール:横倉恒雄さん(横倉クリニック)

横倉恒雄さん(横倉クリニック)

よこくら・つねお 医学博士。医師。横倉クリニック・健康外来サロン(港区芝)院長。東京都済生会中央病院に日本初の「健康外来」を開設。故・日野原重明先生に師事。婦人科、心療内科、内科などが専門。病名がないものの不調を訴える患者さんにも常に寄り添った診療を心がけている。著書『病気が治る脳の健康法』『脳疲労に克つ』他。日本産婦人科学会認定医 /日本医師会健康スポーツ医/日本女性医学学会 /更年期と加齢のヘルスケア学会ほか。

2つの種類がある自律神経、どんな働きをしている? 

そもそも自律神経はどんな働きをしている?

人のからだは、自分の意思で動かせる部分と意思に関係なく機能している部分があります。呼吸をしたり心臓を拍動させたり、血圧を調整したり胃腸を動かしたりしているのは、自分の意思とは関係なく、生命を維持するために行われています。

このように、生命活動に直結する部分をコントロールしているのが自律神経です。自律神経が24時間休みなく、からだのさまざまな機能を管理してくれるおかげで、私たちは生命を維持できているのです。

自律神経には「交感神経」と「副交感神経」の二つの種類があります。交感神経は主に活発に活動するときに優位に働き、副交感神経は体内の活動や休息のときに優位に働くという役割分担になっています。

交感神経は、仕事をしたり運動したりするときに血圧を上げ、心拍や呼吸を速め、筋肉を緊張させて活動に備えるようにからだを整えます。一方、副交感神経が優位に働くと、筋肉の緊張がゆるみ、心拍や呼吸もおだやかになります。

さらに、消化を促し、排泄もスムーズにします。血管を拡張させて血圧を下げ、リラックスモードにするのも副交感神経の役目です。

自律神経のバランスが乱れると心身に影響が及ぶ

自律神経失調症状では、交感神経と副交感神経がコントロール不良となり、心身にさまざまな不調があらわれます。

更年期になると自律神経失調症状になる人が増えてくるのは、世代的に家族や社会的なストレスを感じることが多く、そのストレスにより交感神経が緊張状態になるとともに、女性ホルモンの分泌が減少する影響で、自律神経のバランスが乱れてしまうからです。

その証拠に、急なほてりや発汗が起こるホットフラッシュをはじめ、だるさや倦怠感、冷え、不眠、イライラやうつなどの更年期障害の代表的な症状は、いずれも自律神経の乱れと密接な関係があります。

更年期になり女性ホルモンの分泌が減ると、脳から視床下部に「もっと女性ホルモンの分泌を促せ」という指令が頻繁に来るのですが、視床下部がいくら指令を出しても、卵巣には女性ホルモンを多く分泌する力は残っていません。

自律神経のバランスが乱れると心身に影響が及ぶ

それでも分泌がないと脳から視床下部にどんどん指令が届き、やがて視床下部は大混乱に陥ります。自律神経は視床下部の近くにあるため、混乱の影響を受けて働きが乱れてしまうのです。

その結果、更年期障害の症状があらわれるのですが、これはそもそも自律神経の乱れが原因なので、自律神経失調症と似たような症状があらわれるのも当然というわけです。

更年期の自律神経失調症は一番つらい症状を中心に治療を

それでは、更年期に自律神経が乱れると、どのような症状があらわれるのでしょうか。先にご紹介した通り、更年期の自律神経の乱れによって心身両面にさまざまな不調があらわれます。

たとえば、動悸や息苦しさ、頭痛、耳鳴りやめまい、だるさや倦怠感、口の渇き、のどのつかえ、多汗、皮膚のかゆみ、肩こりや筋肉痛、便秘や下痢、冷え、気分の落ち込み、不安、イライラなどです。

これらの症状がみられたら、まず心理的・社会的ストレスを避けるように心がけると同時に、病院を受診することをおすすめします。

症状が多岐にわたるため、何科を受診すればよいのかわからず悩む人も多いようですが、最もつらい症状を中心に診療科を選ぶとよいでしょう。

うつや不安、不眠といった症状が強いなら、メンタルクリニックや精神科、不眠外来など。めまいや耳鳴りなら耳鼻科やめまい外来。便秘や下痢がひどいときは消化器科の専門医もよいでしょう。

また、かかりつけの内科などで対応できる場合もあります。更年期の不調は漢方療法プラセンタ療法ホルモン補充療法などで軽減することも多いので、かかりつけの婦人科があれば一括で相談することができ、より安心です。

更年期の自律神経の乱れには漢方薬もおすすめ

漢方薬は日本産婦人科学会でも更年期の薬物治療として推奨されており、自律神経の乱れに対する治療にも用いられています。

漢方薬は全体的な心とからだのバランスの乱れを回復させる働きをもち、多様な症状を同時に改善します。自然由来の生薬成分が穏やかに働くので、一般的に西洋薬よりも副作用が少ないとされているのもメリットといえるでしょう。

漢方薬は心とからだのバランスを整え、さまざまな不調を根本的な解決へと導くものです。多様な症状を訴える更年期女性には、心のバランスを整える漢方薬が用いられます。

  • 加味逍遙散(かみしょうようさん)
    ホットフラッシュや肩こりなどを伴い、不安やイライラなどの精神神経症状がある方に用いられます。
     
  • 柴胡加竜骨牡蠣湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)
    比較的体力があり、不安や不眠、動悸がある方に用いられます。
     
  • 抑肝散加陳皮半夏(よくかんさんかちんぴはんげ)
    イライラや不眠があり、神経が高ぶって怒りっぽい方に用いられます。

漢方薬を選ぶときの注意点

漢方薬を選ぶときに重要なのは、その人の状態や体質に合っているか、ということです。うまく合っていないと、効果を感じられないだけでなく、場合によっては副作用が生じることもあります。

どの漢方薬が自分に合うのかを見極めるためには、プロの力を借りるのがおすすめです。「あんしん漢方」などのオンライン漢方サービスに、一度相談してみるのもいいでしょう。

漢方に詳しい薬剤師が一人ひとりに効く漢方薬を見極めて、お手頃価格で自宅まで郵送してくれますよ。

※この記事は2018年7月の記事を再編集して掲載しています。

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