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- 陰部のかゆみ、尿やおりものの臭いの原因は膣の更年期
陰部のかゆみ、おりもの、におい、膣の乾燥、繰り返す膀胱炎などの女性器トラブルは、膣の更年期「GSM」かもしれません。また、尿漏れパットの使用することによって引き起こされることもある、細菌性の膣炎や膀胱炎についても解説します。
膣の更年期の症状「GSM」とは?
女性は更年期を迎えると、卵巣からの女性ホルモン分泌が少なくなり、膣の粘膜が薄くなります。
湿り気や弾力性も失われ、膣が本来持つ自浄作用が衰えます。そして外陰部や尿道を含めデリケート部分に異常が発生しやすい状態になります。こうした膣の更年期の症状は「GSM(Genitourinary Syndrome of Menopause)」と呼ばれ、今、注目されています。
「GSMは2014年に米国から輸入された概念で、日本でも『閉経関連尿路生殖器症候群』という名称で普及し始めています。閉経後の女性の50%に見られる問題で、通常閉経後4~5年してから、症状が生じます。
GSMの症状例
- 陰部のかゆみ
- おりもの
- におい
- 膣の乾燥
- 細菌性膣炎の再発
- 膀胱炎の再発
- セックス痛
- 頻尿
- 尿漏れ
「上のような症状がある場合は、GSMの可能性があります」と話すのは、女性医療クリニックLUNAグループ 理事長で、泌尿器科医の関口由紀(せきぐち・ゆき)さんです。
更年期障害の典型的な症状として、ホットフラッシュや抑うつ、不眠などが知られていますが、それは一時的なもの。これに対して、GSMは長期にわたって悪化し、生活の質に悪影響をじわじわ与えてしまうのだそう。
「中高年であっても夫婦関係にセックスが欠かせない欧米では、膣の更年期は重大です。文化が違う日本でも、パートナーとよりよい関係を築いたり、自身の健康を維持する観点から、自身の膣がGSMになっていないかどうかを把握しておいた方がよいでしょう」(関口さん)
GSMの治療では、膣に潤滑剤や保湿剤を挿入して膣壁を滑らかにするほか、かゆみなどを引き起こす「萎縮性膣炎」を起こしている場合は、女性ホルモンの経口剤、貼付剤、局所投与剤などで膣の弾力性を高め、自浄作用を回復させます。
尿が近くてずっとおなかが痛い場合は、間質性膀胱炎かも?
亀田総合病院ウロギネコロジーセンター長で、泌尿器科医の野村昌良(のむら・まさよし)さんによると、亀田総合病院を受診する中高年世代に目立つのは、細菌性の膣炎や膀胱炎などの感染症です。
「尿もれパッドや生理用ナプキンをつけている人は細菌が発生しやすくなっており、そこから陰部が細菌に感染するケースが多くのです」(野村さん)。この場合は、抗生剤を飲んで治療します。
また、細菌性ではない「間質性膀胱炎」もあります。尿が近く、下腹部の痛みや違和感が長く続きます。抗生剤では治らず、水で膀胱を広げる水圧拡張手術(医療保険の対象)で治療します。
間質性膀胱炎の中には膀胱に潰瘍ができる「潰瘍性(ハンナ型)間質性膀胱炎」と呼ばれる類型があり、2015年に国が難病に指定。潰瘍を電気で焼く手術は医療保険の対象になっています。
若い頃の弾力、締まりのある膣を取り戻すレーザー治療も
フラクショナル炭酸ガスレーザー治療器「モナリザタッチ®」。施術は1か月ごとに3回実施。フラクショナル炭酸ガスレーザーを膣壁と外陰部の皮膚に照射し真皮層に熱による刺激を与えることで、細胞の再生を促しコラーゲンを生成、活性化をする事で膣の弾力性を強化し、腟粘膜下のたるみを改善させます。施術時間は約25分程度です。
ここ10年ほどで、中高年女性の性への価値観は変わってきています。医療現場では、若い頃の弾力性や締まりのある膣を取り戻す「膣のアンチエイジング」が進んでいます。膣壁にレーザーや高周波、超音波をあて、膣のコラーゲンを増やして骨盤底筋も活性化させるので、尿もれ軽減にも効果があるとされます。多くは5万~20万円程度かかる自費診療ですが、60代でも施術が可能です。
欧米では健康や若さの維持、病気予防の観点から、セックスの効果が研究されています。米ミシガン州立大学の大規模調査では、セックスで満足度を得ている中高年女性は高血圧の発症が少ないという結果が明らかになりました。実際のところ、どうなのでしょうか。
関口さんは「日本でこうした研究はまだありませんが、セックスによって副腎からの性ホルモン分泌が増えて、皮膚や見た目が若返るというのは本当です」と話します。
お話を伺った先生
女性医療クリニックLUNAグループ 理事長
関口由紀さん
せきぐち・ゆき 女性泌尿器科医。横浜市立大学大学院医学部泌尿器科学修了。横浜・大阪で、婦人科・女性内科・女性泌尿器科・乳腺科・皮膚科等を総合的にみる「女性医療クリニック・LUNAグループ」を展開。医学博士、横浜市立大学客員教授。
亀田総合病院ウロギネコロジー センター長
野村昌良さん
のむら・まさよし 専門はウロギネコロジー(尿失禁、骨盤臓器脱の手術)。産業医科大学卒業。産業医科大学泌尿器科助教などを経て、2014年から同職。欧米で骨盤臓器脱腹腔鏡手術の研修を受け、技術を研鑽。女性骨盤底医学会幹事。
取材・文=清水麻子 ※この記事は、雑誌「ハルメク」の記事を再編集しています。
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