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- おとなの学び舎~鎌倉で近代文学&一花一葉
鎌倉のアトリエで、谷崎潤一郎の作品を先生と共に読み、その世界観を詳しく解説していただきました。その後、その作品から自由にイメージをふくらませて、生け花を体験しました。
鎌倉へ
文学と生け花をコラボさせた面白そうな講座をみつけたので、行ってみることにしました。場所は鎌倉です。鎌倉と聞いただけで、その雰囲気に憧れます。
この体験は、文筆家・稲垣麻由美さんの「文学作品から感じる美しさを共有したい。鎌倉の街に漂う文学の香りを感じてもらいたい」(講座の紹介文より)という想いから生まれたそうです。
江ノ電・長谷駅からほど近い所に、講座の開催場所の《Atelier&Gallery 一凛》があります。行ってみると、静かな住宅地の一角にあるおしゃれな空間でした。
文学講座~谷崎潤一郎『刺青』
最初は文学講座です。作品は谷崎潤一郎の『刺青(しせい)』。作品の一部のコピーが、参加者3人に配られました。
谷崎潤一郎は、明治末期から昭和中期まで執筆活動を続けた小説家です。私は本を読んだことはなく『春琴抄』や『細雪』の映画を観たことがある程度でした。でも、参加者の中には、何冊も小説を読んでおられる方がいらっしゃいました。
この『刺青』という小説のあらすじは、刺青、つまり入れ墨の彫り師の清吉が、どうしてもある娘に刺青をしたいと思い、連れて来たうえに麻酔で眠らせ、彼女の肌に巨大な女郎蜘蛛の刺青を彫るというものです。
作者独特のフェテイシズムや、性的倒錯などが感じられます。
「さす針、ぬく針のたびごとに深い吐息をついて、自分の心が刺されるように感じた」という描写を読むと、その恐ろしい情景が浮かび、背筋が寒くなる思いがしました。
小説の最後に、麻酔から覚めた娘は魔性の女に変身し、清吉に向かって「お前さんは真っ先に私の肥料になったんだねぇ」と言って、諸肌(もろはだ)を脱いだその背中を朝日に輝かせました。
男と女の情念、サドとマゾが交錯する不思議な世界に一気に引きずり込まれました。
そして、ありありとその情景を想像させる谷崎潤一郎の文体に圧倒されました。
生け花体験
谷崎文学の興奮も冷めやらぬまま、次は生け花体験です。
講師はフラワーアーティストの熊谷珠樹さんです。「削ぎ落された余白と、一輪の花を愛でる究極の美を表現する《一花一葉》を教えていただきました。
私は生け花をちゃんと習ったことがなく、どうしていいかわからずにいると「感じたままに自由に生けてください」と熊谷さんに言われ、気が楽になりました。
ちょうど9月9日の「重陽(ちょうよう)の節句」が近かったので、きれいな菊の花が用意されていました。参加者の中には、先ほどの小説の女郎蜘蛛のイメージで生けている人もいました。
私も見よう見真似で何とか生けました。「バランスがいいですね」と熊谷さんに言っていただき、うれしくなりました。
最後に、鎌倉のおいしい和菓子をいただきました。
鎌倉でのさまざまな体験で、触れたことがなかった谷崎文学に感銘を受け、生け花では花とじっくり向き合うことができ、本当に興味深く、貴重な体験でした。
この講座(8500円/花材・花器、お茶・和菓子代含む)は、毎月異なる文学作品が紹介されるとのことなので、ぜひまた参加したいと思います。
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