プロテインを上手に活用してタンパク質不足を補おう!

高齢者にプロテインは必要?注意点&摂取量目安も解説

林安津美
監修者
たいや内科クリニック
林安津美

公開日:2024.02.22

高齢者がプロテインを取る際の注意点って?近年、高齢者のタンパク質不足が問題となっています。プロテインは手軽にタンパク質を摂取できる栄養補助食品ですが、利用する際は注意点を守ることが大切です。選び方や摂取量目安、おすすめの取り方もご紹介!

高齢者にプロテインは必要?

高齢者にプロテインは必要?

プロテインというと、これまではアスリートや若い人がトレーニングをした後に飲むイメージがありましたが、最近ではドラッグストアやコンビニなどでも販売され、急速に一般化しています。

プロテインとは、直訳すると「タンパク質」のことです。

何か特別な栄養素のことではなく、肉や魚、卵などから普通に摂取できますが、プロテインとして売られているものにはタンパク質が豊富に含まれているため、65歳以上の高齢者でも健康を維持する目的で活用するのがおすすめです。

現在、高齢者の多くがタンパク質不足だといわれています。特に運動量の多い人は、エネルギーだけでなくタンパク質も圧倒的に不足しているため、プロテインを活用して補うようにしましょう。

また、最近では高齢者でも働いている人が多く、生活習慣もさまざまです。食事に気を使う余裕のない場合のタンパク質補給にも向いているといえます。

もちろん、50代のハルメク世代にもプロテインは必要です。

年齢に関係なく、タンパク質の摂取量が不足しているといわれている現代。特に50歳前後からは消化酵素の活性が急激に低下するため、若い頃よりも積極的にタンパク質を摂取しなければ、筋肉量がどんどん減少してしまいます。

高齢期のフレイルサルコペニアのリスクを高めないためにも、50代からは栄養の取り方を考え直しましょう。

高齢者がプロテインを摂取する際の注意点

高齢者がプロテインを摂取する際の注意点

プロテインはアスリートや若い人だけでなく、健康な体をキープしたい高齢者にもおすすめですが、注意して取らないと逆に健康を害してしまう可能性もあります。

ここでは、高齢者がプロテインを摂取する際の注意点をご紹介します。

食事として摂取しない

プロテインはあくまでも栄養補助食品なので、食事としての摂取はおすすめできません。

タンパク質は毎日の食事で肉や魚、卵、豆類などから摂取することを基本として、食事量が少ないときや忙しいときの補助としてプロテインを活用しましょう。

食べ物を咀嚼することは、脳や体に刺激を与えるだけでなく、血行を促進したり唾液を出して口の中をきれいにしたりする効果も期待できます。

また、さまざまな食品を用いた栄養バランスの取れた食事は認知症の発症を予防するため、プロテインのみで食事を済ませるのは控えましょう。

食事でタンパク質を摂取できているときは飲まない

食事だけでタンパク質を十分摂取できている場合は、プロテインを飲む必要はありません。

プロテインの主原料であるタンパク質は、1gあたり4kcalです。食事をしっかり食べた上にプロテインまで飲むとカロリーオーバーになり、エネルギーとして使われなかった余分なタンパク質が体脂肪として蓄えられてしまう可能性があるため、取り過ぎには十分注意しましょう。

こまめに少量ずつ摂取する

プロテインを初めて取り入れるときは、こまめに少量ずつ摂取することが重要です。

1回に大量のプロテインを摂取すると、吸収しきれずにせっかく摂取したタンパク質が無駄になってしまいます。それに加えて腸内環境が悪化する恐れもあるため、1回の摂取量は20〜30g程度にしておきましょう。

また、これまでプロテインを飲んだことがない人がプロテインを突然摂取すると、内臓に負担がかかってしまいます。消化不良や便秘などの原因となることもあるため注意が必要です。

体に合わないと感じたときは、摂取量を減らしたりプロテインの種類を変えたりなどして対処しましょう。

なお、プロテインには乳製品や大豆などのアレルギー物質や添加物、香料が含まれているため、アレルギーを持っている人は摂取前に成分表示をよく確認してください。

医師に相談してから摂取する

プロテインは消化される際、腎臓や肝臓などの臓器に負担がかかってしまう恐れがあります。

タンパク質が体内で分解されると窒素となり、腎臓や肝臓の働きによって尿として体外へと排出されるのですが、タンパク質を過剰摂取すると大腸でアンモニアなどの有害物質に分解されてしまいます。

アンモニアを無毒化し、尿として排出するためにより多く働かなければならず、腎臓や肝臓に大きな負担がかかってしまうため注意しましょう。

特に高齢者は腎臓や肝臓の機能が低下している人も多く、医師からタンパク質の摂取量を制限されていることも多いことから、プロテインの摂取にはより一層注意しなければいけません。

とはいえ、タンパク質の摂取量を制限されている場合でも、適正量のタンパク質を取ることは必要です。

プロテインは摂取するタンパク質の量をコントロールしやすいため、食事量が少なくタンパク質が不足していると感じるときは、医師に相談の上でプロテインを活用するとよいでしょう。

高齢者に適したプロテインの選び方と摂取量目安

高齢者に適したプロテインの選び方と摂取量目安

高齢の家族や自身の将来のためにプロテインを取り入れようと思っている人の中には、たくさんの商品からどれを選び、どのくらいの量を摂取すればよいのか迷ってしまう人もいるのではないでしょうか。

ここでは、高齢者に適したプロテインの選び方と摂取量目安をご紹介します。

高齢者に適したプロテインの選び方

高齢者に適したプロテインを選ぶときは、まずはプロテインの種類を確認しましょう。

プロテインには「動物性」と「植物性」の2種類があります。

動物性プロテインは、肉や魚介類などの動物に含まれるタンパク質のことです。代表的なものには、牛乳に含まれる「ホエイプロテイン」と「カゼインプロテイン」があります。

ホエイプロテインは、牛乳から乳脂肪分とカゼインを抜いた乳製由来のプロテインで、ミネラルや水溶性ビタミンが豊富で体への吸収率が早いのが特徴です。

カゼインが含まれないので、牛乳アレルギーでも摂取できますが、乳糖不耐症の人はお腹の調子が悪くなる可能性があるため注意しなければいけません。

カゼインプロテインは、牛乳から乳脂肪分と乳清を抜いたカゼイン由来のプロテインで、筋力や健康状態の維持が期待できるのが特徴です。

ただし、不溶性で体への吸収スピードが遅いため、すぐにタンパク質を補給したいときには向いていません。

また、牛乳アレルギーの原因にもなるので、牛乳アレルギーをもっている人は避けるようにしましょう。

植物性プロテインは、小麦や大豆、野菜などに含まれるタンパク質で、代表的なものは「ソイプロテイン」です。体にゆっくりと吸収されていくことから、腹持ちがよくダイエット中にも向いているといえます。

原料は大豆であるため、牛乳でお腹を下しやすい人にもおすすめですが、大豆アレルギーの人は避けるようにしましょう。

次に含まれているタンパク質量に注目します。

プロテインは、商品によって5gや20gなどタンパク質量が異なります。選ぶ際は、できるだけ多くタンパク質が含まれるものにしましょう。

他には、糖質や脂質量にも注意が必要です。糖質や脂質量が多いと太ってしまうため、タンパク質量の多さだけでなく、糖質や脂質量が低く抑えられているかも確認してください。

プロテインの摂取量目安

高齢者がプロテインを利用する際は、1日のタンパク質摂取の目標量を目安に摂取しましょう。

厚生労働省が発表した2020年版の「日本人の食事摂取基準」では、65歳以上の男性で77〜138g、女性は58〜105gをタンパク質摂取の目標量(上限)としています。

身体活動レベルによっても異なりますが、フレイルを予防するためには、自分の体重と同じ数字以上のタンパク質を摂取することが望ましいとされています。例えば体重が50kgの人は一日50g、55kgの人は55gが目安です。

また、厚生労働省が推奨する一日のタンパク質摂取量は、65歳以上の男性で60g、女性は50gとなっています。

しかし、食事のみで一日50g以上のタンパク質を摂取するのは意外と大変です。

普段の食事でどのくらいのタンパク質を摂取できているかを確認し、目安量からその量を差し引いた分だけプロテインを摂取しましょう。

体重が減少気味の場合は、目標量を少し上回るくらいを目安にすることをおすすめします。

プロテインが苦手な人におすすめの取り方

プロテインが苦手な人におすすめの取り方

プロテインは独特のにおいや舌触りが苦手な人も多いですが、飲み方を工夫すると初めての人でも取りやすくなります。

ここでは、高齢者におすすめのプロテインの取り方をご紹介します。

牛乳やジュースなどに溶かして飲む

味や舌触りに抵抗がない場合は、水に溶かして飲んでもよいですが、牛乳やジュース、コーヒーなどに溶かして飲むと飽きずに飲めます。

もともとコーヒー味やココア味がついているプロテインの場合は、特に牛乳との相性がよいのが特徴です。牛乳に含まれているタンパク質やカルシウムなども同時に摂取できます。

寒い日は温めた牛乳と混ぜるのもおすすめです。ただし、ホエイプロテインは約80度で変質してしまうため、温める際は60度程度を目安にしてください。

毎日同じ味のプロテインを飲むのがつらく感じる場合は、似た風味のジュースやコーヒーなどで割ると味に変化が出ます。

イチゴやピーチなどのフルーツ風味やバニラ味のプロテインは、果汁100%のジュースとの相性が比較的よいのが特徴です。

特にオレンジやグレープフルーツなどの柑橘系のジュースは、プロテイン独特の味を抑えて飲みやすくなります。

コーヒー味やカフェオレ味のプロテインは、無糖コーヒーと合わせると苦味が加わるため、甘味が苦手な人はぜひ試してみてください。

ヨーグルトに混ぜる

むせ込みやすい人やプロテインを飲み物として飲むのが苦手な人は、ヨーグルトに混ぜてもよいでしょう。

プロテインはもともと甘味がついているものも多いので、無糖ヨーグルトと合わせるとデザートのように食べられます。

ゼリータイプやバータイプを活用する

粉末タイプのプロテインがどうしても苦手な人や仕事などで忙しい人は、ゼリータイプやバータイプを活用するのも一つの方法です。

粉末を混ぜる手間もなく手軽に摂取できるうえ、形もコンパクトで持ち運びもしやすいため、小腹が空いたときに手軽に食べられます。

おやつ感覚で食べるなら、タンパク質入りのようかんなどもおすすめです。

効率的なタンパク質摂取にプロテインを利用しよう!

プロテインは、不足しがちなタンパク質を効率的に摂取できる栄養補助食品です。

肉や魚を食べる気になれなかったり食事量が少なくなったりすることも多く、タンパク質が不足しがちな高齢者はもちろん、体にさまざまな変化が起こるハルメク世代にも向いています。

一日のタンパク質摂取の目標量を毎日取るように心がけ、健康的な日々を過ごしましょう。

ただし、プロテインに頼り過ぎは禁物です。

タンパク質をはじめとする栄養素は、基本的に食事から取り、補助としてプロテインを活用するようにしてください。

※効果には個人差があります。試してみて異変を感じる場合はおやめください。

 

監修者プロフィール:林安津美さん

林安津美さん

大学卒業後JAあいち厚生連に入職し37年間病院の管理栄養士として勤務、その間豊田厚生病院・安城更生病院の技師長として17年間在籍。2022年5月よりたいや内科クリニックへ入職。病態栄養専門管理栄養士・日本糖尿病療養指導士・腎臓病療養指導士・がん病態栄養専門管理栄養士・和漢薬膳師等の資格を生かし患者さんの思いを聴き・応え、患者目線でテーラーメイドの医療をお届けできるように努めています。

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