「ソーイング・ビー」とは

「今また静かな革命が起きています」と番組の冒頭で紹介されるように、イギリスでは手芸人気が高まっているそうです。

全国から集められた“裁縫自慢”が、ソーイングルームに集められ、毎回、3つの課題に挑みます（型紙を使った基本的な裁縫、既製服のリメイク、モデルに着せる服）。審査員が課題作品に順位をつけ、各週で脱落者を決めていくという流れ。1シーズンで8着～14着程度を縫います。

「ブリティッシュ ベイクオフ」と「ソーイング・ビー」

先日、Amazonプライムビデオで「ブリティッシュ ベイクオフ・ジャパン」が始まるというCMが流れました（パンや焼き菓子作りの腕を競う番組）。

しかし私は、この話題をきっかけに、NHKのEテレで放映し、数回観たことのある「ソーイング・ビー」を思い出してしまいました。「ブリティッシュ ベイクオフ」と「ソーイング・ビー」は姉妹番組です。

料理やお菓子作りではなく、裁縫が趣味というのは、少し特別な感じがあります。「早く焼きたくてたまらない！」と「早く縫いたくてたまらない！」では、前者の方が共感できる人が多そうです。このマニアぶりが、面白いのではないでしょうか。

趣味の裁縫にはどうしても「良妻賢母」のイメージがつきまといます。それはイギリスも同じのようです。男女に関する固定観念を持つことがいけないとされている昨今。

ですが顔面ピアスでUKロックが好きそうな中年男性、マークが作った柄と無地の配分が美しいワンピースには、本人と作品とのギャップを楽しんでしまいました。それは故ダイアナ元妃（いろいろある前の）が着たら似合いそう、というエレガンス、かつキュートな作品。

出演者はさまざまな肩書きの人が集まっており、彼らと裁縫との関わりは番組の中で紹介されます。

裁縫家は格闘家

布とはやっかいなものです。私は裁縫を習ったことがありますが、布は柔らかく、型紙もへなへな。すべてが頼りないところで、やっていかなければならない難しさを感じました。

縫いやすいがアイロンがかかりにくい生地。またその逆もあります。番組最年長のアンが「布には心がある」と言っていましたが、その通り！

それぞれ性格があり、その性格に沿った作業をしないとたちまち機嫌をそこねます。美しく繊細な布は、つれたりシワができたりするので厄介です。多少の失敗はカバーしてくれる懐の深い生地は頼れる存在。が、どうしても厄介なヤツに惹かれてしまいひどい目にあうのは、一度は通る道かもしれません。

常に布の性格を考え、手持ちの技術で戦うチャレンジャー。プロでも扱いが難しい布、パターンが次々と課題になり、安定して好成績を残すのは難しく、波瀾万丈です。

そして、型紙をなくす、裏表を間違えて縫うなどの災難が次々と彼らを襲います。

最終課題では7時間ぶっとおしで作業するため、終わりを告げるMCの声で倒れ込むものもいます。逆境時における判断力、タフな精神力を持つものが有利といえましょう。

野心はありすぎても無さすぎてもだめ

審査員のパトリック・グラントは、服の造詣に深いばかりでなく、適切なアドバイスをするところも印象に残ります。

常に丁寧で完成度の高い作品を仕上げるアンには、「挑戦が足りない、魅力がない」とハッパをかけます。一方、いろいろ盛り込んだ服に挑む若手には、「野心が過ぎる、身の丈にあってない」と視聴者の気持ちを代弁。素晴らしい作品が出たときは皆で喜び、脱落者に対しては涙するチャレンジャーたち。

優勝者が決まったときは、なぜだか一緒に泣いている自分がいます。メンバーの平均年齢は高めですが、再びの青春。うらやましい限りです。

■作品詳細

• ソーイング・ビー（The Great British Sewing Bee）
• BBC Two 放送　ラブ・プロダクション製作
• 2013年から始まり2021年にはシーズン7が放送
• Amazonプライムビデオ、huluはシーズン4まで視聴可能。NHK Eテレの放映は終了
• 司会：クローディア・ウィンクルマン  審査員：パトリック・グラント、メイ・マーティン（シーズン3まで）シーズン4からはエズメ・ヤング

 

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