蛭子能収さん・認知症がもたらした生活と夫婦の変化
2024.06.142022年05月16日
ぼちぼち付き合わな、続かへん
認知症の父との嚙み合わない会話
認知症の人といると、「何度も同じことを聞かれて大変でしょう?」と言われますが、それ以外にも、とんちんかんなことは、毎日起こります。はたから見てると笑い話にもなる、父との噛み合わない会話をご紹介したいと思います。
他人のものを、自分のものと言い張る!
ある日、主人が野球の練習で使う手袋が、車の助手席のポケットに入っていました。その手袋を見た父。
「これ、わしのやんな」と言って、持ち帰ろうとしました。
「違うで、その手袋は、H(私の主人の名前)のやで」
「いや、わしのや。わしが、今日、車に乗るとき、ここに入れた」
「嘘、いいな~、それは、私が、今日、車に乗るときから、ずっとあったで」
「いや、わしのや」
なぜ、他人の手袋を自分のもの、と言い張るのか。
どうやら認知症になると、他人のものも、全部自分のものと思うようです。
買ったことは、すぐに忘れる
父と買い物に出かけたときのこと。
パン売り場で立ち止まり、今日のおやつを吟味していました。
やがて、ワゴンの中にある菓子パンの中から「今日はこれにする」と一つ選んで、買い物かごへ。
パン売り場の先には和菓子コーナーがあり、父はそこでも立ち止まり、何やらまたおやつを選んでいる様子。
「どら焼き、買っていい?」と聞くので、「さっき、(おやつは)パン食べるって言ったやん」と私が言うと、「これ、どら焼きやな?」と商品を指さします。
「たしかに、それはどら焼きや。でも、さっきパンを食べるって、これ選んだやろ」と、パンを見せると、やっと納得。
おやつを選ぶときは、毎回こんな感じです。自分がおやつを選んだことはすぐに忘れてしまい、あげくの果てには「何も買ってくれへん」と言う始末。
そのたびに、父におやつを見せて納得させています。
いつもしていることを忘れる
父の体調がいまいちの時の会話は、こんな感じです。
実家に着くなり、
「車で来たん?」(いつも車で来てるやん)
「どこ行くの?」(自分がこれから「眼科行く!」って言ったやん)
自分が言ったことや、いつもの行動パターンを忘れています。
わたしの体調がいいときは、こういうやりとりも苦にならないのですが、しんどい時はめんどくさいなぁ、と思ってしまいます。
ときには、なげやりな態度になることも。
そういう時は、実家からの帰り道に運転しながら「あんな態度をとって悪かったな」と反省。
認知症の本には「認知症の人が言うことを否定してはいけない」と書いてありますが、正直、毎回否定せずに明るく対応することは無理です。
父も私もお互い機嫌の悪いときはある。ぼちぼちじゃないと続かないよな、というのが介護している側の本音です。
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