落語自由自在40

代官山落語年末スペシャル

公開日:2021.02.07

女性二人の落語会が配信されると知り、早速チケットを申し込みました。真打のこみち師匠と、もうすぐ真打に昇進する粋歌(すいか)さんです。さてどんな会になるのでしょうか。

代官山落語年末スペシャル
代官山落語年末スペシャル

初めての女性噺家二人会

初めての女性噺家二人会

東京代官山にあるイベントスペース「晴れたら空に豆まいて」より生配信された「代官山落語年末スペシャル」を見ました。三遊亭粋歌さんと柳亭こみち師匠の二人会、女性二人の会は初めてですので、どんな会になるのかとても楽しみでした。

プロデューサーであり司会者でもある広瀬和生さんとのオープニングトークでは、落語家と家庭の両立に、日夜がんばっているお二人の話で盛り上がりました。何しろ先人は男性ばかりで、噺家と家事育児をこなしたお手本にすべき落語家がいないので大変なようです。

粋歌さんは3月に真打昇進
三遊亭粋歌さんは2005年8月、落語協会初の女性真打三遊亭歌る多(かるた)師匠に入門します。2006年に前座となり、前座名は歌すみで、2009年6月二ツ目に昇進、粋歌となります。

2021年3月より真打に昇進、弁財亭和泉(べんざいていいずみ)と改名する予定です。この名前は、ご自身で考えられたそうです。2016年に第二回渋谷らくご創作大賞を受賞しました。粋歌さんの夫君は、落語家柳家小八さんで、夫婦で落語家は史上初です。入門前は、食品系の企業で人事を担当、そこでの経験が新作落語を作る際に生かされています。

「女の鞄」

女の鞄はなぜ重いのかという、いわば「あるあるネタ」です。鞄の大きさはその人のストレスに匹敵すると、まず提言します。

言われてみれば、そうかもしれません。鞄の中身を取り出し、これは要らないと指摘されると、無いと困るのだといちいち力説、特に本二冊には笑いました。

大きな鞄から、ハードカバーが一冊出てきて、サブバックから文庫本が出て、通勤の行きと帰り用だというのです。そういう人はいそうだとうなずきながら、気が付くとすっかり噺に引き込まれて笑っていました。

実は2017年10月に有楽町よみうりホールでの「よって・たかって秋らくご」で粋歌さんを聞いたことがあり、そのときの演目は「とんがりコーンそのまま食べるか? 指にはめてから食べるか?」でした。着眼点がすごいなと思ったものです。もうすぐ真打になりますので、益々の活躍が期待されます。

唄って踊れる噺家を目指すこみち師匠

柳亭こみちさんは、早稲田大学卒業後出版社に勤務、2003年に七代目柳亭燕路師匠に入門します。2006年11月二ツ目に昇進、2017年真打昇進、日本舞踊吾妻流名取ですので、唄って踊れて、古典落語がしっかりできる噺家を目指しているそうです。こみち師匠の夫君は、漫才の宮田陽・昇の昇さん、2児の母でもあり、史上初のママさん真打として話題になりました。

「寝床 おかみさん編」
「寝床」は私が好きな噺の一つで、すでに落語自由自在でも取り上げていますが、主人公がおかみさんというのは初めてです。女性ならではの視点で、古典落語を改作し、さてどのように仕上げるのか楽しみです。

もともとは義太夫好きの大店の旦那が、義太夫を聞かせたくて、聞きたくない人々とのせめぎ合いを、面白おかしく描くのですが、今回はおかみさんが義太夫好きなのです。

お化粧に凝ったり、かんざしを選んだりと、旦那にはない部分が多々出てきます。殺人義太夫といって、店子や店の奉公人たちは逃げ回ります。会には誰も来ないと知ると、おかみさんは里に帰ると宣言。店はおかみさんで持っているのですから、実家に帰られては大変と、ここは女中頭のお清が一計を案じます。

やがておかみさんの機嫌が直り、会は開かれるのですが……。

サゲは聞き慣れたものとは違っていたましが、何の違和感もなくスーッと入ってきました。「寝床おかみさん編」は、こみち師匠ならではの可笑しさがあり、師匠の人気の訳がわかりました。

女性噺家を応援しましょう!

元来、女性には落語は向かないといわれていました。というか、女性噺家は長い歴史の中でいませんでした。それが今や、東西合わせて50人を超えているとのことです。そのまま古典落語をやると、男性が主人公なので、どうしても無理があります。今後は、粋歌さんの様に新作をやる方と、こみち師匠の様に古典を女性版に改作される方とに分かれると思います。先人がいないだけに、女性噺家の道は険しいと思いますが、模索しながらも道を探す女性噺家さんを、心から応援したいと思いました。

 

■もっと知りたい■

さいとうひろこ

趣味は落語鑑賞・読書・刺しゅう・気功・ロングブレス・テレビ体操。健康は食事からがモットーで、AGEフードコーディネーターと薬膳コーディネーターの資格を取得。人生健康サロンとヘルスアカデミーのメンバーとなり現在も学んでいます。人生100年時代を健康に過ごす方法と読書や落語の楽しみ方をご案内します。

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